この1年半で、今村卓也はムエタイ二大殿堂のラジャダムナンスタジアム王座奪取し、2度目の防衛戦で明け渡すも、今度はルンピニー王座挑戦のチャンスを得て、12月2日(土・現地/日本との時差2時間)、現地でルンピニースタジアム・ミドル級王座に挑みました。
5月25日のラジャダムナン王座陥落後は、数戦を経て、10月22日にディファ有明での蹴拳プロモーション興行に於いて、ルンピニージャパン・ミドル級王座決定戦を、ジフン・エナジー・リー(韓国)に判定勝ちして日本王座に就いています。
このルンピニージャパンタイトルは2015年8月7日に新設の発表があってから1年掛かりで動き出し、徐々に日本王座が埋まって来ている状況。本場ルンピニースタジアムタイトルへの近道とされるルンピニージャパン王座を経て、今回、今村卓也の挑戦が決まりました。
本場ルンピニー王座に就いた日本人は未だ居らず、またムエタイの二大殿堂ルンピニー王座とラジャダムナン王座の両方に就いた外国人(タイ人以外)は過去一人も居ない中での新たな挑戦でした。
◆タイ国ルンピニースタジアム・ミドル級タイトルマッチ(160LBS) 5回戦
チャンピオン.ノッパガーオ・シリラックムエタイ(タイ/72.57kg)
VS
挑戦者. 今村卓也(=T-98/クロスポイント吉祥寺/72.57kg)
勝者:ノッパガーオ・シリラックムエタイ / 判定
今村卓也は重いパンチとローキックで慎重に攻めていきます。顔面にヒットする右ストレート、それ以上に応戦するノッパガーオの蹴りとパンチも強いものがありました。
今村卓也のヒジ打ちによるノッパガーオの左眉のカットは、勝利へ期待が持てるものでしたが、ノッパガーオの的確に当ててくる強い蹴りで試合は混戦模様へ。組んでのヒザ蹴り、離れいてもヒザ蹴りも上手いノッパガーオ、今村卓也が優るローキックとパンチでは好感度低いものの、「日本だったらタクヤが勝っていただろう」と言う声もタイ側から聞かれた試合後のリングサイドでした。
再び挑戦へ向けた再起ロードは始まるのか、ラジャダムナン王座陥落後も過密に戦ってきた今年の今村卓也でしたが、しばらく休んでからの再起がいいかもしれません。
当日は4つのタイトルマッチの予定があったようですが、今村卓也のひとつ前の試合では、スーパーミドル級王座が新設された試合が行なわれています。
◆ルンピニースタジアム・スーパーミドル級(168LBS)王座決定戦 5回戦
4位.コンピカート・ソー・タワンルン(タイ/76.2kg)
VS
10位.ウィアンニー・マックススポーツジム(フランス/76.2kg)
勝者:コンピカート・ソー・タワンルン(初代チャンピオン) / TKO 2R
6月20日(火)にラーフィー・シンパートーン(フランス)がポンシリー・PKセンチャイから判定勝利し、ルンピニースタジアム・ウェルター級新チャンピオンに就き、同スタジアムでの外国人3人目(フランス人3人目でもあり)チャンピオンとなっています。
この日(12月2日)のウィアンニーはTKOで敗れ、王座奪取成らず(4人目成らず)でした。
二大殿堂も任意団体で、高いレベルの試合を群集に魅せてきた長い歴史と伝統とその権威は高いものの、時代の流れとともに過去になかった規制の緩みが出てきているのも事実で、軽量王国のタイで、ルンピニースタジアムはスーパーミドル級も新設されるという今までに無い重量級まで拡大化された現状。更には、今村卓也もルンピニースタジアムランキングには入っていないが、傘下のルンピニージャパンタイトルを獲ったことで、王座挑戦のチャンスが得られたと現地でも報道されています。最高峰への道が楽になったことが今後、業界にどう影響してくるでしょうか。
また同スタジアムは2014年2月にバンコク中心部のラーマ4世通りから、やや郊外北部のラーマイントラ通りへ移転してからは交通の便が悪くなり、ギャンブラーですらあまり行かなくなったと言う声も聞かれる中、今後集客率や試合レベルはどうなっていくのかという権威の低下が心配される部分もあります。
その反面、2018年は一波乱ありそうな本場ムエタイの動きに、興味あるファンや関係者は注目となるでしょう。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」