ライターが、取材して文章だけ書けばいい、という時代は終わった。
インタビュー相手と交渉し、カメラマンに連絡し、インタビューの場所を確保するという、以前なら編集者がしていた仕事もしなければならない。
だがこれはまだ、恵まれた仕事だ。写真も自分で撮らなければならないことも多いのだから。
しかも、インタビューそのものが、会いたかった人に会える、やりがいのあるものだ。
意外と苦労するのが、インタビューの場所探しだ。
山手線沿いのエリアなら、ホテルや喫茶店の会議室、貸会議室に特化した場所もあり、困りはしない。
場所は、そんなところから少し離れた、自由が丘であった。
ネットで探してみると、利用できそうなスポットは二つあった。
一つは、純然たる貸会議室。もう一つは、ギャラリーやリビングを貸すという、レンタルスペースであった。
写真を見る限り、後者のほうがインテリアもよく、撮影するにも最適だ。しかも料金は、前者の半額ほど。時間帯によって微妙に異なるが、1時間2000円ほどだ。
電話番号はなくて、メアドしか載っていなかったが、地図もあったので、特に不安に思わずに、メールで予約の申し込みをした。
翌日に来た返事は、以下のようだった。
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文字化けしているのだ。
FAXで送ってくれるように、返事をする。
半日ほど経った頃、「念のためにパソコンから送ります」というタイトルでメールが来る。
そこには、こんなことが書いてある。
〈初めてのご利用の場合、できましたらお顔合わせを兼ねて事前にサロンにお越し頂き直接ご利用方法をお伝えさせて頂いております。お顔合わせも予約制にて承っております。
ご都合のいい日時を2、3お知らせ頂けると幸いです〉
え!? 心臓を針で刺されたような衝撃が走る。
2時間借りたから、料金は4000円ほどだ。4000円のために、事前の打ち合わせ!?
紅白歌合戦にも出て日本レコード大賞も獲っている大物アーチストとのアポイントだって、メールと電話で取れているのに……。
しかしもう、申し込んでしまったものはしかたがない。
当日に早く行くか、もしくは前日、と前者を選択してくれるように祈りながら、メールを書いて送る。
この日は金曜日であった。土日は久しぶりに、心と体を休めたかった。
年末年始もゴールデンウィークも関係なく、走り続けてきたのだ。そのくらい、許されるだろう。
金曜日にも土曜日にもレンタルスペースからのメールはなく、こちらから、使用目的などを書き足して、顔合わせの希望日時を書いてメールする。
相手からメールが来たのは、日曜日だった。
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また文字化けしている!
すぐにその旨をメールするが、なかなか返事が来ない。
何が書いてあるのか分からないのは、怖い。
以前、一旦予約した会議室から、インタビュー目的では使えない、と訳の分からない理由で断られたことがある。
もしかしらこれも、断りのメールかもしれない。
安いものは、結局高くつく、という祖母の口癖を忘れていたのが悪かった。
もう一つの候補であった貸会議室に場所を変えて、こちらは断ってしまおうか。
そうすると、インタビュー相手とカメラマンに、改めて連絡しなければならない。
そのくらいの手間はいいのだが、場所を変更すると、変更前の場所に行ってしまうなどのアクシデントが当日に発生する可能性も出てくる。
頭を悩ませながら、ネットで「文字化け」について調べてみる。
スマホからパソコンにメールすると、文字化けをすることがあるようだ。
相手が親しい人なら「もう一度送って」と言えるが、目上の人の場合などそうはいかない、その場合は、解読ソフトを使いましょう、などというアドバイスもある。
レンタルスペースが目上の人だとは、とても思えないが、泣く泣く、いくつかの解読ソフトを試みると、3つめで7割方が解読できた。
顔合わせは当日早めに来てくれればいいという、ありがたい内容。
ただその具体的な時間が読み取れない。
「こちらのメーラーが古いため、申し訳ない」と、ひたすら低姿勢で、時間を教えてくれるようにと、メールを送る。
開始時間の30分前に来てくれればいい、と連絡が来たのは日曜の夕方。
この土日も、慌ただしく過ぎていった。
当日の顔合わせは、料金の受け渡しなどで、5分もかからなかった。
(FY)