2018年11月27日付けで下記の文章が、大阪弁護士会所属の弁護士に伝達された。
そのことを知った鹿砦社ならびに取材班は大いに疑問を感じたので、鹿砦社代表・松岡利康の名前で、12月6日、以下の「お尋ね」を大阪弁護士会・竹岡登美男会長宛てに送った。
2018年12月6日
大阪弁護士会
会長 竹岡登美男 様
―沖縄・部落・在日コリアンへの差別の実態を踏まえて―》
についてのお尋ね
株式会社鹿砦社(ろくさいしゃ)
代表取締役 松岡利康
電話0798(49)5302
謹啓 師走に入り何かと慌ただしくなってまいりましたが、貴会ますますご隆盛のことと心よりお慶び申し上げます。
さて、貴会所属弁護士より標記のような勉強会(資料添付)が予定されていると聞きました。
パネリストとして参加予定の方の中に、李信恵氏のお名前があります。小社は、李信恵氏にSNS上で執拗に誹謗中傷を受け発信が止まらなかったため、やむなく李信恵氏を被告として名誉毀損等による損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所(以下大阪地裁と略記します)に提訴し、争っている最中です(大阪地裁第13民事部 平成29年ワ第9470)。今月12日には原告代表者である私の尋問が行われ(李信恵氏は尋問を拒否しました)、この係争自体は、これで結審を迎え年度内の判決になるものと想像いたします。
他方李信恵氏側は、本年3月頃、上記訴訟がほぼ結審直前になり「反訴したい」旨の意向を突如表明しましたが、裁判所は同一訴訟内での反訴は認めず、別訴を小社を被告として起こしてきており、こちらも大阪地裁で係争中です(大阪地裁第24民事部 平成30年ワ第4499号)。
つまり、李信恵氏は、被告、原告(提訴の順番からこのように記します)として、現在大阪地裁において、2件の訴訟を係争中の身であり、その争いの内容は「名誉毀損」です。特に後者訴訟にあっては、損害賠償と共に出版物の販売差し止めを求めており、憲法21条に謳われる「表現の自由」「言論・出版の自由」の見地から極めて重大です。
参考までに李信恵氏が関わったとされる大学院生リンチ事件(常識的に見て、リンチの現場に居て関わっていないとは言えないでしょう)についての出版物2点を同封させていただきますので、ぜひご一覧(特にリンチ直後の大学院生の顔写真を)、またリンチの最中の音声データ(CD)をご視聴になり、ご検討ください。くだんの勉強会のご案内に「人権」という言葉がありましたが、リンチ被害者の「人権」はどうなるのでしょうか? 会長のご意見をぜひお聞かせください。いや、一人の人間として──。
「人権」を大事にされる貴会、特に呼びかけ人に名がある会長におかれましては、李信恵氏がこのような状態であることをご存知でパネリストと決定なさったのでしょうか(あるいはご存知なかったのでしょうか)。ぜひお聞かせください。貴会の最高責任者である「会長」として──。
足元大阪地裁で大阪弁護士会所属の弁護士も代理人に就任し(李信恵氏側の代理人は京都弁護士会、神奈川弁護士会所属)、係争中の民事訴訟が進行している中、大阪弁護士会が、係争中の片一方の当事者を、係争の内容と関係のある「表現」や「差別」や「人権」についての勉強会のパネリストに選ばれることは、李信恵氏から「クソ鹿砦社」「鹿砦社はクソ」などと再三再四誹謗中傷を受けた小社としては、公平な人選であるとは考えられません。
もちろん、係争中であろうと、発言や発信は認められるべき基本的な権利であると小社も認識いたしますが、今回はまさに「表現」についての訴訟が、他ならぬ大阪地裁で係争中に、大阪弁護士会が主催して、係争の片一方の当事者を招くという、例外的なケースであると考えます。小社の代理人弁護士はじめ複数の弁護士や元裁判官の方々にお聞きしても首を傾げられましたので、私が申し上げていることは、決して特異な意見ではないと思いますがいかがでしょうか?
大阪弁護士会が、李信恵氏の過去の訴訟について、評価の認識をされていることは分からないではありませんが、リンチや暴力事件に関与したという疑いや問題を現在李信恵氏は問われています。その訴訟が進行中に(それも2件も)大阪弁護士が(それも会長名で)李信恵氏を「差別や「人権」や「表現」が話題となる勉強会のバネラーにお招きになる行為は、原告である(別訴では被告)小社のみならず第三者が常識的、客観的に見ても「大阪弁護士会は李信恵氏を支持している」と映ります。
上記申し上げた件をご賢察頂き12月14日(金)までに書面にてご回答いただきますようお願い申し上げます。
まずは要件にて失礼いたします。
「お尋ね」では14日までに文書での回答を依頼していた。回答期限直前になり大阪弁護士会からは「もう少し回答を待ってくれ」という趣旨の手紙が届いたので、様子を見ていたところ、以下の回答が大阪弁護士会会長の竹岡富美男氏から届いた。
この回答の中で、大阪弁護士会会長竹岡氏は、決定的な矛盾を露呈している。
「李信恵氏については、在日コリアンへの差別問題に関する幅広い知見と多くの経験を有する方として、パネリストにお招きしたところですが、当会は同氏が関与されるすべての訴訟を関知しているわけではありませんし、それぞれの訴訟における同氏の主張を支持、または不支持するものでもありません。」
まず、「李信恵氏については、在日コリアンへの差別問題に関する幅広い知見」を持っているかどうかはともかく「多くの経験を有する方」とある。「多くの経験」とは、何を指すのか。まったく不明確である。相応の年齢の人であれば李信恵氏でなくとも、それなりに「多くの経験」をしているであろう。ここではどのような分野で「多くの経験」があるのかが語られなければ、何の意味もなさない。このようにあいまいで、裁判であれば「却下」されることが確実な文言を竹岡氏は、自身が受任した事件で準備書面などに用いるのであろうか。
さらに、なぜ李信恵氏のプロフィールで、「元在特会会長及び保守速報に対する民事訴訟を提起して第一審・第二審で勝訴」と紹介しているくせに、「当会は同氏が関与されるすべての訴訟を関知しているわけではありませんし、それぞれの訴訟における同氏の主張を支持、または不支持するものでもありません」と逃げるのか。われわれは大阪弁護士会会長が李信恵氏の「M君リンチ事件」関与や、鹿砦社を誹謗中傷した事件を知らなかった可能性もあると考えたので、12月6日付けの「お尋ね」を送り、その中で事件番号まで示し、李信恵氏が現在被告・原告となっている事実を伝達した(CD付きの書籍を含めこれまで発刊した出版物のうち2冊を同封した)のだ。
であるから「当会は同氏が関与されるすべての訴訟を関知しているわけではありません」にしても、李信恵氏が「M君リンチ事件」に関与している事実と、鹿砦社との係争について大阪弁護士会が「関知」していないとの言い訳は成立しない。また、言うまでもなく弁護士は法律の専門家であるから、裁判記録の調べ方を知らないはずはない。ここまで動かぬ事実を示しているのに、「それぞれの訴訟における同氏の主張を支持、または不支持するものでもありません」などと開き直るのか。
繰り返すが「元在特会会長及び保守速報に対する民事訴訟を提起して第一審・第二審で勝訴」との人物紹介は、事実の紹介にとどまらず大阪弁護士会が数ある李信恵氏関連の訴訟の中でも、あえて抽出して人物紹介に用いているのである。この事実も竹岡氏の言を借りれば「同氏の主張を支持、または不支持するものでもありません」の対象のはずであり、そうであれば、大阪弁護士会は李信恵氏勝訴にも「必ずしも同意するものではない」との解釈も成立する。それでいいのか? そうであればその前段で述べられている「李信恵氏については、在日コリアンへの差別問題に関する幅広い知見と多くの経験を有する方」との人物評は論理的に揺らぐはずだ。
つまり、この回答にならない回答は“鹿砦社からの質問をまともに取り合っていない”と理解するほかない。消息筋の情報によれば「M君リンチ事件」は「報告事件」(最高裁が暗黙裡に裁判の方向付けを行い、書記官などが最高裁に訴訟の過程を報告する)である、との噂も聞く。「報告事件」であるかどうかはともかく、一審判決、控訴審判決とも市民感覚からは大きく乖離する内容であった。裏で“何らかの力が働いている”──取材班だけではなく、複数の法律専門家やジャーナリストらも同様の見解を明らかにした。
そして今回、本来は国家権力から独立しているはずである大阪弁護士会の人選とそれについての言い訳である。“苦しい言い訳”の見本のような低レベルな理由であるが、見方を変えれば“そうまでして”李信恵氏を使わせる“力”が、ここでも働いていると感じざるを得ない。
“一体あなたたちは、何をしたいのだ!?”──正直な感想である。司法試験を通り、裁判官、検事、弁護士になった人びとを市民は普通“人より頭が良く、人物も立派な人”と見る。ところが残念ながらここ数年われわれは、従来の常識をことごとく“裏切られる”経験を重ねてきた。いや、裁判所の前では、司法に救済を求めようとしても、血の通った人間としての判断を示さず裏切られた市民のうなだれた姿を見ることが少なくない。松岡が「お尋ね」で言っているように「一人の人間として」の回答を望んだが、届いたのは事務処理的な文面だった。もう驚きはしないが、大阪弁護士会長のあまりにも低レベルで、内容を伴わない回答に、こう進言したい。
「法曹人である前に、最低レベルの常識を備えた社会人たれ」と。