◆今年のムエタイ殿堂王座挑戦!
二大殿堂王座は4名が挑戦。2018年2月18日、後楽園ホールでのREBELS興行で、ルンピニースタジアム・ライト級王座に挑んだ梅野源治(PHOENIX/29歳)は4ラウンドKO負けでラジャダムナンスタジアムに続く制覇は成らず。6月15日、現地でルンピニー・フライ級王座に挑んだ大崎一貴(OISHI/22歳)は判定負けで奪取成らず。6月27日、現地でラジャダムナン・スーパーウェルター級王座に挑んだ緑川創(藤本/31歳)は判定負けで奪取成らず。12月9日、横浜大さん橋ホールでのBOM興行で、ラジャダムナン・ミニフライ級王座に挑んだ世界2団体同時制覇中の吉成名高(エイワスポーツ/17歳)は判定勝利で王座奪取に成功。同スタジアム外国人10人目(日本人7人目)の快挙。
吉成名高は2017年4月のWMC世界ピン級(-45.359kg/後に返上)を奪取、2018年4月にWBCムエタイ世界ミニフライ級王座(-47.627kg)を奪取に続く9月にIBFムエタイ世界ミニフライ級王座奪取の世界3団体を制覇した中で、伝統のラジャダムナンスタジアム王座を奪取したことは、すでに獲った世界王座の評価も上げることになったでしょう。
更に外国人にとって前人未到の二大殿堂制覇、ルンピニースタジアム王座も近くに狙っているという、この勢いでは達成の可能性も高いでしょう。
その一方、現在も二大殿堂王座を獲ることは凄く難しいものの、昔から比べて、そこまでの道程が比較的近道になって来ているのが現在の二大殿堂です。昔はランキング入りさえ難しく、ランクインしてもなかなか挑戦のチャンスが回って来なかった挑戦権争いの道でした。そこに至るまでにピークを過ぎてしまう選手はタイ選手でも多く居たものでした。
2011年以降の二大殿堂外国人チャンピオンはこれで9人に上ります(1978年以降2010年までは4人)。しかし、幼い頃からムエタイ競技に勤しむ環境が整ってきたアマチュア経験値で、プロ転向後の出世に大きく影響していく選手も多く、吉成名高の快挙も期待大きいものでした。
反して本場タイ国は、経済の発展でハングリーなボクサーが激減した影響で、レベル低下の影響も見られ、「昔のような伝説のチャンピオンがいなくなった」という声も多いところです。日本や他国が50年掛けて挑戦してきた打倒ムエタイの、個人レベルや競技レベルの戦いは、ムエタイの歴史が変化していく最中かもしれません。
◆交流戦の充実!
団体交流やフリーのプロモーションの他興行交流は以前からありますが、かつての袂から決裂した者が率いる団体との交流が実現したのが、NKBグループの日本キックボクシング連盟が、新日本キックボクシング協会の交流戦と、かつて同じNKBグループだったニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)との交流戦が実現したことは注目を浴びる存在になりました。
またルンピニージャパンを率いるセンチャイプロモーションとジャパンキックイノベーションの交流も発表されました。これらの交流に至った経緯には何らかの策略があるもの。それがどう現れるか、2019年の交流戦に注目であります。
◆高橋三兄弟の飛躍!
6月16日、高橋三男の聖人(真門)が安田浩昭(SQUARE-UP)を倒し、NKBフェザー級王座を獲得し、三兄弟同時NKB王座制覇を達成。以前の狭い団体体制で、ここだけで終われば世間の評価は低いまま。
しかし2014年以降のNKBは小野瀬邦英体制から変化をもたらした交流戦開始で、徐々に実力が測れる対戦が増え、NKB加盟ジム選手の活躍が活性化し、高橋三兄弟に於いては良い時代に突入し、他団体トップクラスとの対戦が増えました。
高橋長男・一眞は2016年に3連敗し、日本トップクラスの厳しさを味わった中、2017年6月、NKBライト級王座獲得。初防衛の激戦を経て今年2月12日、すでに「KNOCK OUT」で実績を残す町田光(橋本)に判定勝利し、大きな存在感を示しました。8月19日、森井洋介を倒したヨードレックペット・オー・ピティサック(タイ)戦は勇敢な攻めでの判定負けもレベルアップに繋がり、12月8日の棚橋賢二郎(拳心館)戦では圧倒のKO勝利で2度目の防衛。
次男・亮は小笠原瑛作(クロスポイント)と1敗1分とはなるも、宮元啓介(橋本)、瀧澤博人(ビクトリー)に判定勝利し、日本トップクラスの証明を果たしました。
三男・聖人は昨年倒された、ひろあきに雪辱した後、駿太(谷山)に判定で敗れるも12月16日にはワンデートーナメント戦の一部ながら元・WBA世界スーパーフライ級チャンピオンのテーパリット・ゴーキャットジム(タイ)と対戦し判定勝利。NKB高橋三兄弟の株を上げた1年でした。
◆「高橋」はもう一人、勝次の飛躍とその他の選手!
2017年の「KNOCK OUT」で森井洋介(GOLDEN GLOBE)にKOで破れ、トーナメント制覇は成らなかった勝次(=高橋勝治/藤本)は、打ち合う連戦のダメージを抜いた今年後半、ホームリングとなる新日本キックボクシング興行で4連勝(3KO)。真空飛びヒザ蹴りの必殺技を磨いた成長を見せ、「KNOCK OUT」での雪辱、老舗のWKBA世界王座、更にはムエタイ最高峰を目指すなど、来年の飛躍を誓っています。
同じく新日本キックで活躍する石原將伍(ビクトリー)も2017年10月、日本フェザー級チャンピオンとなってから常に強いタイ一流選手との対戦に臨み、2勝(2KO)1敗1分ながらも存在感を示し、新たなエース格に上り詰めた選手達の飛躍が注目される2019年です。
タイに拠点を移した志朗(=松本志朗/キックリボリューション)も飛躍を続ける一人で、層の厚いタイで、負ければ干される運命と隣り合わせの厳しい生き残りの中、戦い続けています。
2019年1月6日にもルンピニースタジアムでのテレビマッチに出場予定で、ローグン・ダープランサーラカームと対戦予定。
ローグンは2017年度、BBTV(タイ7チャンネル)トーナメント覇者で、その年の年間KO賞も受賞。強打を武器にしている現役BBTVランカーです。
試合は、日本時間の20時20分~22時10分を予定。志朗の出場は第2試合目となり、日本時間の20時40分頃になると思われます。
◎日本からはインターネットで視聴が可能。
http://www.amarintv.com/live-tv/
https://www.adintrend.com/hd/m/ch26
◎ローグン・ダープランサーラカームのハイキックによる過去の勝利映像
https://youtu.be/Vj0IKWVuQwo
◆シリモンコン・ルークシリパットさん急逝!
時代が流れるムエタイとキックボクシングの歴史の中、伝説の英雄、シリモンコンさんが8月18日、肺水腫により逝去されました。
1976年3月に現地で藤原敏男氏と激戦を戦い抜いたことも歴史の1ページとなって語られる現在です。獲得したタイトルは1970年3月にルンピニースタジアム・フェザー級王座。1974年にルンピニースタジアム・ライト級王座 。1973年にアマチュアボクシング キングスカップ金メダル。同年9月18日、タイ国王(ラマ9世)から直々にタイ国最優秀選手賞のトロフィーを受賞と、偉大な功績はタイ国でも評価が高い選手でした。
こういう伝説に残るチャンピオンが存在し難い現在、シリモンコン氏の優しい人柄や功績がタイでも多くのファンに語り続けられています。
独断と偏見で我がままな、昭和のキックボクシングから繋がる団体中心に、2019年もキック業界を見つめたいと思います。
2019年新春最初の興行は1月6日に後楽園ホールに於いて17時より、新日本キックボクシング協会・治政館ジム興行「WINNERS 2019.1st」が行なわれます。石原將伍(ビクトリー)がメインイベントに出場。2019年は何が起こるか新展開を見届けたいところです。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」