1月12日滋賀医大小線源治療患者会による「岡本圭生医師の治療継続と待機患者から治療の機会を奪うな」を訴える集会とデモ行進がJR草津駅周辺で行われた。12時30分、駅東口広場で集会がはじまった。
司会の宮野さんが、集会とデモ行進の趣旨を説明した。
「私たちは滋賀医科大学附属病院で、前立腺がんの小線源治療を受けた患者と、未だ治療の予定すら立っていない患者とその家族です。滋賀医科大学附属病院には高リスクの前立腺がんでも 95%以上完治させることができる、岡本圭生医師がおられます。岡本医師に命を救ってほしいと願う患者が今日もこのデモ行進に東北は山形、北陸は石川、中国は山口、四国は高知、全国各地から参加しています。ところが滋賀医大附属病院は今年の 6月で岡本医師の治療を止め、12月には病院から追い出そうとしています。
みなさん! この「命に直結する問題」に是非、注目してください。私たちは救われる命が、見捨てられるこの現実を 断じて許しません。 市民の皆さん。どうかご支援のほどよろしくお願い申し上げます」
そのあと、岡本医師の治療を希望しながら、大学側によりその機会が奪われるかもしれない2名の待機患者さんが訴えを行った。
その後デモ行進に移った。草津市は人口約13万人の地方都市であるが、草津駅周辺には商店街やショッピングモールが集中する。デモ行進は2列縦隊で目測200mほどの長さに及ぶ。
組織動員もない中、しかも自分の要求や利益を求めるのではなく、既に治療を終えた患者さんたちが中心となり、「救える命を救え」との主張で集会、デモが行なわれたことが、この国の歴史上あったであろうか。
「滋賀医科大学附属病院は岡本医師の治療を継続せよ!」
「待機患者から治療の機会を奪うな!」
「滋賀医科大学附属病院は良心を取り戻せ!」
「滋賀医科大学附属病院の理不尽な対応は許さないぞ!」
「滋賀医科大学附属病院は岡本医師の受診受付を拒否するな!」
「待機患者の治療を受ける権利を奪うな!」
「待機患者に岡本医師の手術をうけさせろ!」
「がん患者の生きる権利を奪うな!」
デモが終盤に入ると、コールの内容もさらに、強い意志を感じさせるものに変わる。
「滋賀医科大学附属病院は待機患者を見捨てるな!」
「滋賀医科大学附属病院は岡本医師の治療を継続せよ!」
「命を軽視する病院は許さないぞ!」
「われわれは闘うぞ!」
「勝利するまで闘うぞ!」
「われわれは待機患者を見捨てないぞ!」
約1時間半に及びデモ行進は草津駅西口で終了した。
その後南草津駅前の市民プラザに場所を移して、患者会が開催された。患者会の立ち上げに尽力し、現在はご自身も肺がんと闘病中の患者会アドバイザーである、山口正紀さんからの挨拶があった。
「きょうは寒い中に皆さん本当にお疲れさまでした。私は沿道から取材していて『こんなデモは初めてだな』と思いました。運動に慣れた方のデモはたくさん取材してきましたが、きょうのように一つ一つのシュプレヒコールが『心の叫び』としか言いようがない訴えを1時間半近くにわたって皆さんが続けられた姿を、ずっとそばで拝見していて、私自身も肺がんを宣告されて治療していますが大変勇気を与えられ、感銘しました」と感想を語った。続いて本事件の本質と経緯に、さらに今後の課題や展望について分かり易く解説を行った。
その後この日のデモについての反省点や課題、さらには患者会の活動全体への活発な議論が交わされた。
約2時間にわたる会合の最後に司会の小山さんが「それでは最後にシュプレヒコールで締めくくりましょう」と発言したので驚いた。というのは、終了間際にわたしは参加者に全員に「きょう初めてデモ行進に参加した人挙手してください」と尋ねたところ、数えきれない手が上がり数えきれなかったので、質問を変えた。「これまでデモ行進に参加した経験のある人は挙手してください」と聞いたところ挙手した人は10名であった(集会参加者の10分の1に満たない)からだ。
患者会によると、この日のデモ参加予定人数は130名であったそうだが、最終的に参加した人数は181名だった。患者会にとってデモ行進は初体験であったが、参加者の上げ続けたシュプレヒコールは、反響に反響を重ね、噂が噂をよび、距離的にも遠くない滋賀医大附属病院へも伝わることだろう。
最後に記しておかなければならない。この日のデモは事前に滋賀県政記者クラブに詳細を伝達していたにもかかわらず、マスコミの取材は、某全国紙1紙を除き皆無であった。
「命の問題」よりも、時間を割かなければならない問題が滋賀県のマスメディア関係者には山積しているようである。どこかが、完全に歪んではいないか。
◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR
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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。