「嘘つきは泥棒の始まり」。言い古された故事であるが、今日的には「高級官僚は泥棒の始まり」と言い換えないといけないようだ。厚労省による「毎月勤労統計調査」が2004年から不適切に実施されていたことが判明。同調査は雇用保険などの支給額に直結することから、不正に低い額しか受け取ることのできなかったひとびとが数えきれないほど存在することが判明した。

あれは何年前だったろうか。年金記録5000万件の紛失事件が旧社会保険庁によって引き起こされていたことが分かり、看板が社会保険機構にかけ変わったけれども、いまだに「消えた年金記録」(2007年2月16日以降)の全貌は明らかになっていない。


◎[参考動画]安倍 消えた年金が再燃「ギブアップすることは絶対あってはならない」(2020 summer 2015/06/17公開)

◆「私や妻が関係していたということになれば、私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」

そういえば、つい最近も「私や妻が関係していたということになれば、私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と盗人猛々しく、言い放った安倍晋三が陰に陽に関与した森友学園問題では、やはり公文書の改竄が行われていたが、責任者(本当は犯人と呼びたい)佐川宣寿国税庁長官は「懲戒免職」ではなく「退職」で逃げ切り、高額の退職金を手に入れている。この事件では近畿財務局のまじめな職員が自死するという悲劇を生んでいるが、権力者にとっては末端兵隊の命や内心などは、関心の範疇にはないのである。


◎[参考動画]総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい(kokikokiya 2017/05/05公開)

◆安倍がどのような交渉をしようとも「北方領土」は返還されない

かつて、「2島返還」と言ったら「とんでもない!」と大方の自民党議員は大反発していたくせに、「平和条約」(?)締結を目指す安倍は「4島返還は現実的ではない。2島返還で交渉する」とのたまっている。本通信で過去何度か、この件については触れたが再度断言する。安倍がどのような交渉をしようとも「北方領土」は返還されない。唯一の禁じ手はアンダーテーブルでの金での交渉だろうが、これまで既に莫大な経済協力をロシアとの間に結んできた安倍としては、いくら、機密費を持ち出したところで「島を買い返す」余裕はないだろう。

中国の経済成長率が前年比6.6%だったと報じられた。これもおそらく相当水増しされた数字だろう。「世界の工場」だった中国の時代はとうに終わり、中国の経済成長は急激な下降側面に入っている。インフレと農村を核とする地方との貧困格差は、やがて大きな混乱局面を迎えることが必至だろう。


◎[参考動画]父の墓前で誓い 安倍総理が日ロ関係進展を強調(ANNnewsCH 2019/01/06公開)

◆小泉純一郎と竹中平蔵の「新自由主義」から生まれた「毎月勤労統計調査」の歪み

というわけで、お偉い官僚は嘘をつくことが習慣化しているようだ。役人の仕事は法律に従い、しこしこと書類づくりに励むことだと思っていたが、2004年から「毎月勤労統計調査」は、急に不適切な調査方法に変わっている。さて、2004年とはどんな年だった、どんな時代だったろうか。そののちに安倍晋三という大災害を生み出すことになる、「新自由主義」の旗頭、小泉純一郎が、竹中平蔵とともに、めったやたらと「規制緩和」の名のもとに大資本の自由度を無原則に広げていた時代じゃないか!


◎[参考動画]竹中元大臣「責任ある試算を」郵政民営化見直しで(ANNnewsCH 2009/10/25公開)

おそらくは、あの頃から(もっと昔からもあったろうが)、公文書の改竄や、調査の手抜きなどが、横行しだしていたのではないか。「新自由主義」の要請にこたえるためには、現実を曲げないことにはつじつまがあわないのだから。

けれども「新自由主義」が横行しだした1990年代から、この国はどのような状態を辿ってきたのだろうか。消費税が導入される。3%から5%さらに8%から今年はついに10%へ上がる。消費税は「社会保障目的税」と言われているが、消費税がなかった時代に比して社会保障が10倍充実した実感はどこにもない。

かつては特定業種に限定されていた、派遣労働が、「雇用の多様化」の美名のもと、これまた2004年に、港湾運送、建設、警備、医療以外の全職域に解禁される。派遣労働者の激増により、同一労働同一賃金の原則は完全に崩壊し、今や非正規雇用の労働者が約4割に達している(その上前を「パソナ」の竹中平蔵がはねているのだ)。

つまり官僚が書類を偽造することによって、「新自由主義」という資本主義末期の社会矛盾を、なんとかごまかせないかと、悪あがきする。しかし、そんなものは絆創膏程度の役にも立たないから、良くも悪くも「官僚主義」の崩壊を誘因する。かくして、いにしえの多くの賢人が予想した通り、資本主義も官僚主義も終焉を迎えるのだ。


◎[参考動画]【麻生太郎閣下】分かりやすい官僚操縦法(2011年2月19日福岡市にて)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)