◆自由に休めるセンターに約100人が集まる!

「前はシェルターも使ったけどね、ここ(センター)にきてからは好きな時間に休むことができるから、暖かい昼間に寝ることが多いですわ」。センターで自主管理が始まって以降、テントの近くに布団を敷いて寝泊まりする男性、70代半ばか。最初に会ったとき、下着の上に直接カッパのズボンを履いていたため、 支援物資の中から、小柄な彼にあわせたズボンを渡した。「ありがとね。大事に使わせてもらいますわ」と丁寧にたたんで枕元に置く。きちんと揃えられたズックの横。

4月1日から自主管理が始まったセンター内では、現在約100人もの人たちが寝泊まりしている。テントには全国から救援物資が届けられ、ドイツなど海外からの連帯メッセージも届いている。また直接現場に訪れる人も後を絶たない。東京から車で毛布を運んできた仲間は、渋谷での野宿者排除を許さない闘いの報告を行ってくれた。外から釜ヶ崎やセンターに来るきっかけになればと、これからも様々な催しが予定されている。自主管理が続く釜ケ崎の現地から報告する。

◆「100円の値打ちもない!」と言われたセンター仮庁舎の実態

仕事がないことを示す「かまやん」ばかりが映っている仮庁舎の求人募集の液晶パネル

南海電鉄高架下で業務を開始し、約1ケ月が経過したセンター仮庁舎に対しては、「使い勝手が悪すぎる」との声をあちこちで聞く。大阪府は仮庁舎での求人業務について、

〈1〉これまで業者が車両に提示していた「求人プラカード」を廃止する
〈2〉駐車スペースは1業者について1台とする
〈3〉各業者の求人は(仮庁舎内の)液晶パネルで表示してセンター職員が案内する、との政策を打ち出した。

これまで朝のセンターでは相対(あいたい)方式(求人プラカードを見た労働者がカードを提示する車両にいる手配師に直接声をかけ、話し、仕事に就く)をとっていた。

しかし、仮庁舎ではこのカードの提示をやめ、代わりにセンター職員が表に車を停めた業者に募集内容を聞きにいき、それを中の液晶パネルで表示、応募してきた労働者をセンター職員が当該業者の車両に案内するという、なんともまどろっこしい方法に変えた。こんなやり方が、慌ただしい朝の寄り場で通用するのか?

しかも実際の仮庁舎では液晶パネルに、仕事がないことを示す「かまやん」が映っていることが多いという。じつは4月1日以降もシャッターが開いているセンター側に車両を停め、これまで通り「求人プラカード」を提示し、募集する業者が多い。例えば「一般土工、8時~17時、時間外労働あり、賃金10000、宿舎費総額3200」のカードには朝食などの写真付き。このわかりやすい求人プラカードをなくして、液晶パネルで……と考えた「識者」は、早朝の現場を見たことがあるのか。

求人プラカードを見た労働者がカードを提示する車両にいる手配師に直接声をかけ、話し、仕事に就く従来の「相対(あいたい)方式」

◆労働者の「寄り場」をなくすこと、それがセンター建て替えの狙い!

こうした仮庁舎の実態を見るにつけ、建て替えられる新センターがどうなるのか、不安は増すばかりだ。1970年「日雇い労働者の就労斡旋と福祉の向上」を目的に設置されたセンターが、今後どうなろうとしているのか、釜ヶ崎地域合同労組委員長・稲垣氏に話を伺った。

── 昨日(18日)の朝、センターのトイレ掃除をしていましたね?あれだけ広いと時間かかるんじゃないですか?

稲垣 そうやね、2人で20~30分位かかったかな。トイレ掃除は毎日交代でやってます。自主管理なので自分たちで清潔にしないとね。

── ごみ問題はどうなりましたか?

稲垣 先日、釜ヶ崎公民権運動の大谷さんと、国(大阪府の労働局)に申し入れに行ってきました。電灯をつけるように、ごみの収集をするようにと要望書を提出してきました。

── 自主管理を続けるにあたって、取り決めなどありますか?

稲垣 今のところセンターは期限なく開放されているが、いつまた国や大阪府、警察がシャッターを閉めにくるかわからない。その時はまたみんなの力で跳ね返そうと話しています。またそれまでにくれぐれもセンター内にあるものには手をつけない、壊さない、持ち出さないことを守って下さいと。センター内のキーワードは「自由」だけど、やりっぱなしはダメ、そしてみなで仲良くやっていきましょうと話し合っています。

── さてセンターの仮庁舎が業務を始めて約1ケ月経ちました。いろいろ不備な点が出ているようですが?

稲垣 不備なんてもんじゃないですよ。仮庁舎の南側出口に段差があって、先日そこで足を滑らせ転倒し、右足のサラ(膝蓋骨)が割れて大怪我して入院中の方がいます。「高齢者特掃輪番労働者」の方で、労災を受けることになりましたが。

── 求人活動はどうなっているのでしょうか?

稲垣 釜ヶ崎ではずっと労働者と業者が直接交渉するという「相対(あいたい)方式」でやってきました。もちろんこれにも問題がある。ちゃんとした企業ならいいが、釜ヶ崎は手配師や人夫出しやから。相対方式が全面的にいいとは思ってないが、仮庁舎では求人プラカードがないから、余計わかりにくくなった。これからヤミ手配が確実に増えると思いますよ。

── そうした仮庁舎の実態を見ると、センターの本移転(建て替え)は何を目的としたものと考えられますか?

稲垣 はっきりしているのは、新しく建てられるセンターは、労働者を寄せ付けないものになるはず。そうやって労働者の「寄り場」をなくすことがセンター建て替えの狙いだと思う。

── 労働者がバラバラにされるということですか?

稲垣 そう、バラバラに孤立させられる。労働者自体を見えなくさせる、また矛盾や問題点も見えなくさせる、そういうことだと思います。

── 携帯電話で呼ばれて現場に行く、派遣労働者と同じ、労働者同士が団結しにくくなるでしょうね。

稲垣 それが狙いでしょうね。しかもさっき言ったようにヤミ手配が増えたりするから、労働環境はさらに悪化するやろね。

「100円の値打ちもない」。先日仮庁舎から出てきた労働者が吐き捨てるようにそうつぶやいていたという。

◆使い勝手の悪いセンター仮庁舎に府民の税金が7億5000万円!
  4月22日(月)「センターつぶすな!」第3回住民訴訟へ!

このように労働者にとってじつに使い勝手の悪いセンターの仮庁舎だが、そこには府民の税金(公金)が7億5000万円も投入されている。しかも同じ仮庁舎である「あいりん職安」の建設費用と比較して坪単価が1万円以上も高い点、仮庁舎終了時に土地を返却する際の「現状回復義務」を定めていない点など、極めて不明瞭・不可解な点が多い。確認しておくが、公金を使う際には必要最小限でなくてはならないという原則が前提としてあるにも関わらずに、だ。

第1回口頭弁論で稲垣氏の意見陳述書に添付された、老朽化した南海電鉄高架下の写真がある。これらぼろぼろになったスラブ、ハリ、柱などは、センター仮庁舎の建設費用で補修されたうえ、重量鉄骨で何十年も使用可能な建造物になった。しかも「現状回復」せずに南海電鉄に返却するということは、公金で補強された施設を南海電鉄が転用し、さらに儲けるということだ。前述したように、労働者に犠牲を強いるセンター仮庁舎が、その後南海電鉄を儲けさせことに使われるなんて、しかもそれに府民の税金(公金)が投入されるなんて、絶対に許されない。大阪維新の都構想につながる西成特区構想を末端から突き崩そう!

大阪維新に反対するみなさんもぜひ、センターに来たらええねん!

◎大阪地裁1007号法廷で、4月22日(月)午前11時から(当日はセンターから9時半、バスが出ます)
 
◎支援物資は、〒557-0004 大阪府大阪市西成区萩之茶屋1丁目3-44 あいりん労働福祉センター1Fテント小屋宛

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

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