前蹴りでラックチャイの突進を止めた重森陽太

軽いパンチだが、ラックチャイと相打ちとなった瞬間の重森陽太

勝次が返上した日本ライト級王座は髙橋亨汰が獲得。

◎MAGNUM.50 / 7月7日(日)後楽園ホール17:00~20:45 
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会、WKBA

◆WKBA世界ライト級王座決定戦 5回戦

重森陽太(前・日本フェザー-級C/伊原稲城/60.8kg)
   VS
ラックチャイ・ジャルンクルンムエタイ(タイ/60.55kg)
(ラックチャイはアマチュアムエタイ60kg級チャンピオン経験有り)
勝者:重森陽太 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:少白竜50-46. 桜井50-46. 宮沢50-46

右ローキックで攻める重森陽太

重森は突き刺すような鋭い前蹴りでラックチャイの突進を阻み、自分の距離を掴んでパンチや蹴り、ヒジ打ちを叩き込んでいく。

重森は中盤以降も前蹴りを多用し、ラックチャイのバランス崩させる展開が続くが、接近すれば組みに来るラックチャイ、この体勢になると本領発揮のバランスの良さが表れるが、重森も不利な体勢にはならず、ヒザ蹴りも蹴り負けない。

最終ラウンド、倒すに至らない展開と前進衰えないラックチャイのタフさが印象付いてしまうが、それでもポイントは大差で圧倒した展開の勝利となった。

日本バンタム級とフェザー級の2階級制覇を果たしている重森は世界と合わせて三つめのベルト獲得となった。

3度のダウンを奪ってKO勝利の江幡睦

◆54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/54.0kg)
   VS
トーン・ハーブタイジョンジム(元・スラタニー県フライ級C/タイ/54.0kg)
勝者:江幡睦 / KO 1R 2:41 / 3ノックダウン / 主審:仲俊光

毎度のスピードある蹴りで、様子見ながら一気に倒しに掛かるような睦の勢いの中、ローキックからパンチの連打でロープ際に詰めたところで左ミドルキックをボディーにヒットさせるとトーンは蹲ってしまいノックダウンとなるが、トーンはまだ心は折れていない様子で立ち上がる。

組み合えば崩しに掛かる上手さを見せるトーンだが、睦の勢いは増していき、コーナーに詰めてのパンチ連打、離れても蹴りの上下の使い分けで、続けて左ミドルキックをボディーヒットさせ計3度目のノックダウンを奪い、ノックアウトに繋げた。
マイクを持つと、10月20日、後楽園ホールに於いて、ラジャダムナンスタジアムの王座挑戦が決定したことをファンに報告した。

コーナーに追い込み、右ストレートを打ち込む体勢の江幡睦

髙橋亨汰の左ストレートで内田雅之がダウン

◆日本ライト級王座決定戦 5回戦

1位.内田雅之(藤本/61.1kg)vs3位.髙橋亨汰(伊原/61.23kg)
勝者:髙橋亨汰 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:椎名47-49. 桜井47-49.仲48-49

序盤は探り合いながら互いに主導権を奪いに打って出る攻防。

第2ラウンドには、高橋がヒジ打ちで内田の右眉辺りを小さいがカットさせ、更に左ストレートで内田をグラッとバランス崩させると、高橋が積極性を増し、再び左ストレートで、内田からノックダウンを奪う。

ダメージは軽そうで体勢を立て直し、第3ラウンドは内田のヒジ打ちが強くヒットし、高橋の額を深くカット、ここから流れを変えたい内田はペースを上げていくが、高橋はハイキックで内田の顔面を襲いリードを譲らない踏ん張り。

終盤、激しくなる攻防の中、内田の強引な蹴りとパンチ、ヒジ打ちを狙って出て行く。高橋も内田の顔面へ前蹴りをヒットさせ内田の突進を止める勢いがあった。ダウンの差を縮めるには至らなかった内田は惜しい敗戦。高橋は新しい時代を担うチャンピオン誕生となった。

髙橋亨汰の左ハイキックを受けながらバックハンドブローを繰り出す内田雅之

額を切られながらの攻防、髙橋亨汰の前蹴りが内田のアゴを捕える

念願の王座獲得で号泣する髙橋亨汰。お母さんの祝福を受けて更に号泣

伊原稲城ジム栗芝貴会長と並ぶ重森陽太

◆72.6kg契約 3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/72.5kg)vs小原俊之(キングムエ/72.1kg)
勝者:斗吾 / 判定3-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-27. 少白竜30-27. 仲30-26

蹴り合いの様子見からコーナーで組み合うと小原が強引なヒジ打ちの連打で斗吾の右頬をカットさせ、これで怒り心頭となった斗吾がパンチで圧倒し、右ストレートでノックダウンを奪う。

小原の踏ん張りで斗吾も打ち合いに応じ、ノックアウトには繋げられなかったが、連打で追い詰めた斗吾が大差を付けた判定勝利。

◆67.0kg契約 5回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原/66.7kg)
   VS
助川秀之(Turning Point/66.8kg)
勝者:リカルド・ブラボ / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:宮沢50-46. 少白竜50-46. 仲50-47

序盤から重いパンチと蹴りの交錯が続く両者。ブラボのパンチがヒットすると、リズムに乗って連打で追い詰める。

第4ラウンドにはノックダウンを奪う寸前までいくが、倒すには至らない。助川は劣勢になりながらも耐え切り、ブラボが大差判定勝利。

メインクラス最終2試合のリングアナウンサーを務めた生島翔さんの代打、お父さんの生島ヒロシさん

◆70.0kg契約 5回戦

喜多村誠(前・日本ミドル級C/伊原新潟/69.9kg)
   VS
ペッダム・ペットプームムエタイ(タイ/68.4kg)

勝者:喜多村誠 / 負傷判定2-0 / テクニカルデジション 1R 1:00 / 主審:宮沢誠
副審:椎名10-10. 桜井10-9. 少白竜10-9

ミドルキックの蹴り合いから縺れ合って倒れた両者だったが、喜多村が後ろ向きからペッダムのアゴ辺りに圧し掛かかってしまい、ペッダムはもがき苦しみ立ち上がれず、ここでレフェリーは試合終了を宣告。

裁定はルールの在り方とレフェリーの判断によって結果は分かれるところ、ここでは偶然のアクシデントと判断され負傷判定が行なわれ、わずか1分の試合ながら、2-0で喜多村誠が勝利。

◆51.5kg契約3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原/51.5kg)
   VS
WBC・M日本フライ級チャンピオン.仲山大雅(RIOT/51.5kg)
勝者:仲山大雅 / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-29. 宮沢29-30. 少白竜28-29

先手を打つ仲山のタイミングいいパンチと蹴りがヒットする。仲山の上手さが目立つが、ラウンドが進むと泰史は仲山の動きが読めるようになったか、泰史のパンチのヒットも増えてくる。しかし巻き返すには至らず、仲山の柔軟な技が目立った印象が残る。

◆63.0kg契約3回戦

日本ライト級2位.渡邉涼介(伊原新潟/62.95kg)vsイ・クロウ(Kick In The Door/62.75kg)
勝者:イ・クロウ / TKO 2R 2:29 / 主審:桜井一秀
渡邉の顔面負傷によるドクターチェック中の陣営によるタオル投入による棄権

◆62.0kg契約3回戦

日本ライト級4位.ジョニー・オリベイラ(ブラジル/トーエル/61.35kg)
   VS
ルンピニージャパン・スーパーフェザー級1位.角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/61.65kg)
勝者:角谷祐介 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:宮沢29-30. 桜井29-30. 仲29-30

◆フェザー級3回戦

平塚一郎(トーエル/57.15kg)vs仁琉丸(ウルブズスクワッド/56.5kg)
勝者:平塚一郎 / 判定2-0 (29-29. 30-29. 30-29)

《取材戦記》

喜多村誠vsペッダム戦は、あの事態で終了ならば、プロボクシングなら試合の前半に起きたもので負傷引分け、ムエタイなら負傷裁定は無いので、ペッダムの試合続行不能による喜多村のTKO勝利となる。また、試合は成立しているので無効試合(災害や暴動などの収拾付かない事態)とはならない。昔だったら、アクシデントで負傷したものは、立ち上がれない時点でノックダウン扱いとなり、カウント数えられたものである。いずれにしても喜多村の負けにならない限り、異議申し立てる声を上げる者はいないだろう。

追い続けたラジャダムナンスタジアム王座の挑戦が決まったことを報告する江幡睦

重森陽太が語った、WKBAをメジャーにしたい想い。「このベルトが誰もが目指すベルトとなるように、ドンドン試合して、このベルトの価値を分かり易く証明していきたい」と語る。

それは以前から江幡睦も塁も同じ想いを持っていた。古く遡れば1993年に日本ライト級チャンピオン(MA日本キック時代)だった飛鳥信也(目黒)氏がWKBA世界戦に挑む時、提唱した日本統一論でもあった。このベルトを目指して皆が挑戦して来れば、必然的にここが頂点となる。

しかし現在もこの理想には近づいていない。それは統一を目指しながら実現できない国内王座が増え過ぎたことや、いずれのチャンピオンも、防衛戦の相手や場所・日時を決められる訳ではないことに繋がる。それでも新しい時代に新しいスターの重森陽太の目指す新たな挑戦に期待したい。

江幡睦が10月20日に後楽園ホールに於いてタイ国ラジャダムナンスタジアム・バンタム級王座へ4年ぶり4度目の挑戦が決定。現チャンピオン、サオトー・シットシェフブンタムがそれまで王座を維持していれば、このサオトーが来日することになる。江幡ツインズと同じく、サオトーも双子の兄弟が居て、サオエーク・シットシェフブンタムが居るようです。

這い上がる力、奪いに行く力が試される時、それが江幡ツインズであり、新日本キックの今である。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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