おそらく嫌な顔をされるであろうことは、覚悟の上だ。「なんでようやく新しい動きが始まったのに、そんなに斜めから見るの?」と思われる読者も多かろう。ご存じの通り、先の参議院選挙で、山本太郎氏率いる政党(その名前があまりにも不快なので敢えて記さない)が2議席を獲得し、政党要件を得た。政党要件を得ると様々な利点が生まれるが、その中に、議員がいれば「政党交付金」が手に入るというものがある。さて、悪法・悪制度の極みといってよい「政党助成金」を山本氏率いる政党は受け取るであろうか。受け取らなければ私の評価は若干だが上げることにあろう。
◎[参考動画]2019年4月28日京都・四条河原町
今回の現象を、《日本政治に左派ポピュリズム政党が誕生した。7月21日の参院選は日本においても、欧州で吹き荒れるポピュリズムの風が吹くという結果になった。》https://news.yahoo.co.jp/pickup/6330911と評している方に象徴的なように、あたかも「左派」の躍進のようにとらえておられる方が少なくない。
しかしそれは大いに間違っている。第一、当の山本太郎氏は「僕は保守ですから」(田中龍作ジャーナル)と明言しているし、わたしにとっては絶対に書きたくないその党名は、天皇制への無批判な肯定と、倒幕から戦後の歴史を肯定的にとらえる人が用いる単語の結合だ。以前もこの通信に書いたが、山本氏の主張の大方にわたしは異論ない。だが一升瓶で日本酒を5本飲んで、投票所に行っても「あの党名」だけは、絶対に書けない。
そしてもちろんすべてを見たわけではないけれども、ネットの動画サイトを見る限り、同党の候補者だった蓮池透さんが、東電や原発批判を展開はしていたが、ついぞ山本太郎氏から「原発批判」は聞かれなかった。聴衆が手にしている「政権をとったらすぐにやること」とかなんとか書かれたチラシには、確かに、最後のほうに原発廃止が書かれているが、遊説会場でそれについての決意が語られたことは、ほとんどなかったのではないか。
◎[参考動画]2019年7月18日福島駅頭演説後の質疑応答
いわばその反証ではないが、応援演説にあのインチキ脳学者、茂木健一郎まで担ぎ出したのには驚いた。茂木健一郎が3・11前に原発の広告に出ていたことを、陣営は知らなかったのだろうか(それならそれで不勉強すぎるし、知っていて出したのであれば不謹慎すぎる)。
前回の参院選では、福島の被災者や避難者が中心で、有名どころはせいぜい雨宮処凛くらいだった応援に、森達也、SUGIZO、松田美由紀、内田樹、岩井俊二、想田和弘、島田雅彦、佐藤 圭、山口二郎、DELI、伊勢崎賢治などが応援に足を運んだり、ツイッターで応援メッセージを送っている。今回も選対部長は斎藤まさし氏だったのだろうか。相変わらずセンス悪いなーとしか言いようがない。
イベントの司会は木内みどりが多かった。この人、官邸前抗議が盛んだったころ、高級外車に夫婦で乗り込んでしきりに手を振ってたなぁ。そしてこの応援陣の顔ぶれこそが「どこが左翼ポピュリズムなんだ」と言わせるに不足ないメンバーなのだ。伊勢崎なんか戦争がしたくてうずうずしている「紛争屋」じゃないか。東京新聞記者で、しばき隊の佐藤圭の名前も、がっかりさせてくれるに充分な存在だ。
◎[参考動画]2019年7月20日新宿駅西口
重度障害者を二人国会に送ったことは、評価されてよかろう。しかし山本太郎氏が今回の選挙公約の理論的支柱とした「日本の通貨で擦っている限り、国債はいくら発行しても大丈夫」とするMMT(現代貨幣理論)は、本当に機能するだろうか。どうやって国と地方合わせて2000兆円の債務を減らすのだろう。わたしはMMTを詳しく勉強していないが、通貨を発行すればするほど、貨幣価値が落ちてインフレを招くのが経済学の基礎ではなかったか。
最大の懸念は「いざとなったらいつでも大政翼賛会」に化けることが確実な、内田樹、岩井俊二、想田和弘、島田雅彦、佐藤 圭、山口二郎、DELI、伊勢崎賢治などの「中途半端」な付和雷同を積極的に応援者として利用していることだ。もし仮にあのように「醜悪」な党名にしなかったら、これほど広範でたちの悪い連中は集まらなかっただろうし、これほどの得票もなかっただろう。
見ているがいい。これから、一見庶民の味方の振りをしながら、この醜悪な名前の政党は新たなファシズムの核をなしてゆくだろう。
◎[参考動画]2019年7月21日 開票本部生中継
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。