◆センター仮庁舎の雨漏りが、どうにも止まらない!

JR新今宮駅前に建つ「西成あいりん総合センター」(以下、センター)は、建て替え工事に伴い、隣接する南海電鉄の高架下に仮庁舎が作られた。その仮庁舎で思わぬ事態が起きている。3月11日の開業からわずか2ケ月で、天井などから雨漏りが始まったのだ。

センター仮庁舎、開業2ケ月で雨漏りが

雨漏りで天井板がはがれた?

5月21日、前日に降った大雨のせいで出来た天井板の大シミを労働者が見つけた。朝には、床に水溜まりもできていたという。シミの付いた天井板は、その日に取り替えられた。

そして同じ場所の天井板が、7月16日、ついにはがれた。夕方には早々と補修作業が行われたが、急いでいたのか、4メートル以上の高所作業なのに、安全帯も付けていなかった。雨漏りはその後も、どうにも止まらない状態だ。

この件については、8月2日第4回口頭弁論が行われた「センター仮移転にかかわる公金支出損害賠償裁判」でも、弁護団が証拠写真を提出し、今後審議する予定だ。

本来この裁判は、仮庁舎の建設費用に費やされた税金の使われ方に不正がないかどうかを争うものだ。南海電鉄の高架下には、センターにあった「あいりん職安」と「西成労働福祉センター」が別々に仮庁舎を建てたが、本来同規模に作られるはずの両施設について、あいりん職安が解体しやすいプレハブ構造であるのに対し、センターは地下6mに鉄骨を打ち込んだ強固な土台に重量鉄骨を使った構造物であり、その違いは一目瞭然だ。

1平米の単価も、センター仮庁舎の方が約1万円も高い。裁判で「それが何故か?」を審理している最中に起きた今回の雨漏り問題。新たに判ったのは、税金7億5000万円を注ぎ込んだ割には、非常にずさんな手抜き工事が行われていた実態だ。

◆「大地震で倒壊」より先に「雨漏りで天井が崩落」?

裁判所に提出された、南海電鉄高架下のボロボロの柱

センターに「耐震性の問題」があるとされ、建て替えを決めたのは、2014年秋から始まった「まちづくり検討会議」後、非公開の密室で行われている「労働施設検討会議」の中でのことだ。

2006年耐震改修法の改正以降、国と府、市は減築法による耐震改修でセンターを使い続けようと議論を続けていた。

にも関わらず「ええい、建て替えてしまえ」と乱暴に建て替えを決めたのは、当時の市長、橋下徹氏だ。センターは縮小するが、機能は残すと、言っていたのに。仮移転先の候補には、三角公園横のシェルター跡地や、あいりん職安分庁舎跡地があったのに、よりによって創業から80年以上経ち、老朽化が懸念される南海電鉄高架下が選ばれたのである。

高架下の工事は、2017年4月10日から始まったが、5月10日から、連日工事現場わきで抗議と監視活動を続けてきた稲垣浩さん(釜ヶ崎地域合同労組)にお話を伺った。

── 仮庁舎が南海電鉄高架下に決まったとき、「あそこで大丈夫か」という話はありましたか?

稲垣 いいえ。決まった時、ガード下に労働者を押し込めようとする目論みに反対したのは、委員の中で私だけでした。

── 工事が始まって以降、ずっと座り込んで工事を見てきましたが、耐震工事や屋根の防水工事はやっていましたか?

稲垣 老朽化した柱や梁(はり)にはコンクリートが脱落し欠けた部分や、大きな穴があいてる箇所がいくつか見えました。梁のひび割れが、南海本線と高野線を横断している箇所もありました。穴のあいている箇所はモルタルで穴埋めしていました。雨による水漏れの疑いのあるひび割れのあるとこれは、ブリキの水受けを作っていました。耐震工事をしていたようには見えませんでした。

── この間の雨漏りは何が原因と考えられますか?

稲垣 雨漏りの原因は、南海電鉄高架下の梁や床の耐震工事や補強工事をしっかりやっていないことと、私たちの税金7億5000万円を使って建てられた仮庁舎の建物の屋根の防水工事も手抜きしているのではないか、この2点が原因と考えています。

◆なぜ仮移転先に、老朽化した南海電鉄高架下が選ばれたのか?

南海電鉄・難波駅の高架下に出来た「なんばEKIKAN」

それにしてもここまで老朽化した南海電鉄高架下を仮庁舎先にわざわざ選んだ理由は何であろうか?

森友学園のように、利権が絡んでいるからではないのか。

例えばセンター仮庁舎を、使用後解体せずに、同じく南海電鉄難波駅の高架下の「なんばEKIKAN」のような商業施設として再利用するとなれば、儲かるのは南海電鉄だ。

現在大阪市長である松井一郎氏は、かつて住之江競艇場の電気保守管理や物品販売などを独占してきた電気工事会社「株式会社大通」の元代表取締役だったが(現在は実弟が代表)、松井氏がしこたま儲けてきた住之江競艇場を経営する「住之江興行株式会社」も、南海電鉄グループの傘下にある。

これ1つ見ても市長の松井氏らが、いかに南海電鉄とwin-winの関係であることかは明らかだ。

◆困った人、弱った人が最後にたどり着く町が釜ケ崎じゃないのか?

暑いお昼に、冷やした飲み物、冷えピタ、塩アメを持って、野宿する人たちをまわる

真夏を思わず暑さとなった5月25日、センター北側で野宿していた労働者が、熱中症と思われる症状で見つかり、その後搬送先の病院で死亡が確認された。

目の前のセンターさえ開いていたら、冷たい水を飲んだり、ひんやりするコンクリの床に横たわったり、シャワー室で身体を冷やしたりして、助かっていたかもしれない。そう思うと、無念でならない。

このセンター建て替え=センターつぶしに反対する闘いは、4月1日から自主管理が続いていたが、4月24、25日、センターから暴力的に排除され、荷物を勝手に出されて以降も、北側の団結テントを拠点にねばり強く続いている。国や府に対して何度も何度も「センターを開けろ!」「荷物を返せ!」と抗議し、話し合いを要求し続けている。

毎日、冷たいお茶、冷えピタ、塩アメをセンター周囲で野宿する40~50人に配りながら、体調や安否を聞いて回る活動、月曜日の「寄り合い」、トイレ掃除などをみんなで行っている。

◆大阪維新の「都構想」にリンクする「西成特区構想」に反対していこう!

西成の「センター建て替え」=センターつぶしは、大阪維新の都構想にリンクする「西成特区構想」を実現させるためのものだ。JR新今宮駅前の一等地を、なるべく広い更地にし(耐震性に問題のない第2住宅を解体、移転するのもそのためだ)、新たな施設の建設を企むが、「青写真」には、センターとあいりん職安の事務所機能のスペースしかなく、労働者がゆっくり休んだり、仲間と談笑したり、困ったとき頼りになるシャワー室、足洗い場、洗濯場などの機能はない。

「まちづくり検討会議」には「労働センターが駅前にドンとあるときれいにならない」と発言した委員もいる。「野宿者汚い! あっちいけ!」とでもいうのか! これこそが、弱い者虐めの大好きな大阪維新と手を組んで進められる「まちづくり検討会議」の実態だ! 釜ヶ崎のセンター潰しに反対し、大阪維新の「西成特区構想」に反対し、弱い者虐めの「維新政治」を終わらせよう!

野宿者が亡くなった場所には花や煙草が置かれた

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

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