巻頭は「安倍外交の『国益毀損』」(横田一)である。国益というと、国の利害あるいは国家としての損益と解釈しがちだが、国民経済という観点から発されるのが正しい。たとい一時的な他国への譲歩や妥協で、見た目には「国益」を損していると見えても、他国との国際協調によって自国の国民経済が安定・発展すれば、それは「国益」に反しているとはいえない。
これとまったく逆の意味で、安倍政権の対韓外交は、おおきく国益を損なうものと言うしかないのだ。今回、山本太郎の試算では6兆円の経済的な損失(輸出総額)が生じたという。とりわけその目的が、参院選時の政治的パフォーマンスとして、あるいは感情的に行われたものならば、まさに政治の私物化がもたらす、最悪の「国益毀損」である。
安倍外交による損失は経済だけではない。「日本の暴走が韓国GSOMIA破棄を招いた」(高嶋信欣)は、外交的な損失にもかかわらず、ひたすら反韓キャンペーンに走る安倍政権の姿を喝破する。その姿は「感情的民主主義」であると。
◆やはり小泉進次郎がキーマン
今号も政界再編の分析が誌面をうめる。
「与野党それぞれの『地殻変動』進次郎“ポスト安倍”へ、立憲・国民合流の“その先は”」(朝霞唯夫)。
「首相『アンダーコントロール』デマに加担 進次郎・滝クリ結婚マスコミ報道の異常」(浅野健一)。
このうち、浅野氏は滝川クリステルの所属事務所フォニックスに対して、質問状を送っている。小泉進次郎にも取材を申し入れたという。こういう行動力こそ、浅野氏ならではのものだ。その内容は、私的な結婚を官邸に出向いて報告した件である。事前に菅氏をつうじて連絡が行っていたのか? 安倍総理が原発事故を「アンダーコントロール」状態で東京に影響がないと公言したことについて。この件での沈黙には連帯責任が生じる。フランス警察が竹田恆和JOC会長が捜査し辞任した件、である。8月25日現在、両氏からの返答はない。
「『N国』とは何なのか『ワン・イッシュー政党』の素顔」(藤倉善郎)は、同党のネトウヨ的な素顔を暴いている。同党の「私人逮捕」の実態がすさまじい。
インタビューでは、渡辺てる子(れいわ新撰組新人立候補者・シングルマザーで元派遣労働者)を小林蓮実がレポート。このシリーズで、れいわの素顔も明らかになる。つづきが楽しみだ。
◆ジャニーズ圧力問題と吉本“反社”問題
「ジャニーズ『圧力問題』で滝沢秀明に“追い風”」は芸能取材班によるもの。ジャニーズ事務所の子会社の社長である滝沢氏に、相対的にいい環境が生まれているとのこと。吉本騒動も元の鞘に収まりそうな昨今、滝沢氏のうごきに注目だ。
その吉本騒動だが「吉本興業“反社”問題で得をしたのは誰か」(片岡亮)は、問題の本質を「反社」との付き合いとしつつも、吉本興業の6000人いるというタレントの無契約問題に誌面を割いている。フリーランスの弱い立場とともに、スポットライトを当てるべき問題だろう。
◆「元『S』(スパイ)が語る警察『偽造調書作成』の手口」の圧巻!
「元『S』(スパイ)が語る警察『偽造調書作成』の手口」(林克明)が圧巻だ。公安警察が左翼組織にS(情報協力者)工作をするのは、よく知られている。ここで紹介されているのは、生活安全課(覚せい剤や風俗産業などを管轄)の刑事によるS工作だ。おどろくべきことに、覚せい剤の取り締まりで囮捜査を行うことだ。ようするに、犯罪を教唆しているのと同じなのだ。
◆東海第二原発『いばらぎ原発県民投票』で暴かれる原発の玉砕主義
「東海第二原発を問う『いばらぎ原発県民投票』」(島村玄)では、原発の玉砕主義が暴かれている。危険性を無視した稼働延長、採算無視の再稼働である。3月に「県民投票の会」が発足し、14万筆の署名を目標に活動をつづけているという。
◆「遺骨がカネになる? 『残骨灰』をめぐる論点」
「遺骨がカネになる? 『残骨灰』をめぐる論点」(杉田研人)は、ちょっショッキングだ。違背に混ざっている金や銀、パラジウムなどを採取するのが目的で、業者が争奪しているというのだ。死んでもカネの対象にされるとは、人間の業には深いものがある。
◆「公判廷の『手錠・腰縄』は違法である」
司法では朗報だ。「日本司法の人権無視に画期的判決 公判廷の『手錠・腰縄』は違法である」(足立昌勝)。ご存知ない方のために言っておくと、裁判の時は手錠も腰縄も解かれるが、入退廷時に傍聴席から手錠・腰縄を隠してくれないことが争点だったのだ。判決が出るまで、被告といえども推定無罪である。
◆“国旗・国歌”で洗脳する文科省・新たなる臣民教育
「文科省により雁字搦め“国旗・国歌”の洗脳教育」(永野厚男)は、日の丸・君が代教育の現場強要を批判する。前号につづいて、各教科書会社の教科書を悲観検討する。駆け足になったが、議論を呼ぶ内容の記事満載の「紙の爆弾」ぜひお読みください。
▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。