熊本で行われたフェスティバル『琉球の風2013』に参加してから、下地勇というアーチストにはまっている。沖縄の宮古島のことば、宮古口(ミャークフツ)で、彼は歌う。
『島唄よ、風になれ! 「琉球の風」と東濱弘憲』でインタビューに応えてくれた宇崎竜童は、下地勇の歌は、最初聴くと、シャンソンみたいに聞こえる、と言っていた。
ヒット曲『おばぁ』を聴くと、確かにシャンソンみたいだ。
『おばぁ』の歌詞の一部を文字にすると、「ヴ’ ヴぁが つ^ふい^ い^ずぬ まあすにぬ いつ^ばん む’ まむぬてぃ」となる。
標準語にはない、Vの音があるのだ。「つ^」などと表記されている文字は、zzzzやssssの発音を伴う。
宮古口で、神や蟹は仮名で書くと「かん」だが、神はkam?で、蟹はkanだ。
標準語にはない発音が宮古口には多く、その連なりはフランス語の音によく似ている。
なにしろ、「畑」は「パリ」というのだ。
世界には現在、5000から6000の言語がある。そのうち半数以上が今世紀中に滅びると言われている。宮古口も、その1つだ。宮古島でも、若者はあまり喋っていないという。
下地勇は歌を通じて宮古口を伝承しているわけだが、言葉の特性を活かして、ブルースやレゲエを歌い、それが実にかっこいい。魂を揺さぶる歌だ。
下地勇は、石垣島出身の新良幸人と、SAKISHIMA meetingというユニットを組んでいる。
同じく石垣島出身のBEGINの島袋優とは、シモブクレコードというユニットを組んで、「Looking South West」というアルバムを出している。島袋優がBEGINの中でとは異なる味わいを醸し出していて、実に魅力的だ。
沖縄では人気抜群の下地勇だが、中央ではまだ、あまり知られていない。
実に、もったいない話だ。
ぜひとも、下地勇を探して、聴いてみてほしい。
(FY)