リンチ直後の被害者大学院生M君

松岡 ご苦労様です。われわれが「カウンター大学院生リンチ事件」と呼び、巷間では「しばき隊リンチ事件」と呼ばれる、大学院生M君に対するリンチ事件で、ようやく確定判決で認められた賠償金が、金良平氏の代理人に就任した神原元弁護士からM君の代理人大川弁護士に振り込まれました。当初の代理人は別の弁護士でしたが、今年になり、なぜか代理人が交替しましたけど、まずはこの事件の一つの区切りといえるでしょうから、きょうは皆さんの意見や感想も聞かせてください。

A  ともかく、お疲れさまでした、が正直なところですわ。判決内容はともかく賠償金が支払われへんのちゃうか、って本気で心配しよりましたよってに。

B  難しいですよね。これで法的には一応終わったわけですよね? 私は本質的なところでは何も終わってはいないと思っていますが……。

C  M君の事件はね。でも鹿砦社は対李信恵第2訴訟(李信恵氏が原告となった進行中の裁判、第1訴訟は鹿砦社が原告、李信恵氏が被告で既に鹿砦社の勝訴が確定。第2訴訟は第1訴訟の反訴として提起されたが、取り下げ、あらためて別訴として提訴された)と、対藤井正美訴訟を抱えているから、終わりとはいえないよ。

D  長かったですよね。誰が管理してるのか知らないけど「支援会」の活動には頭が下がりました。

松岡 支援会は私が責任を持つ形で、少人数で運営しています。口座は既に閉鎖しましたので、遠からず会計報告ができるでしょう。

B  結局「支援会」のメンバーは最後まで僕らにも秘密でしたね。

松岡 秘密主義じゃないですよ。最低限の人数で動かしただけです。お金が絡む問題でもあり、口座は大川弁護士に管理していただいていたことをTwitterでも公表していました。いまだに会計報告をしないで少なからずの方々から首を傾げられている、どこぞの支援会と違い、私たちは1円のお金も飲食には使っていませんし、厳密に管理してきました。また、鹿砦社はM君裁判とは別に、李信恵氏や藤井正美らと訴訟を行っていますが、こちらにはもちろんですが、1円も使っていません。鹿砦社関係は鹿砦社の資金から裁判費用を出しています。

リンチ直後に出された金良平(エル金)[画像左]と李普鉉(凡)氏[画像右]による「謝罪文」(いずれも1ページ目のみ。全文は『カウンターと暴力の病理』に掲載)

C  これまで5冊だったっけ? この事件に関して出した本。最後にまとめみたいなことは必要だと思うな。

松岡 そうですね。今は緊急出版をいくつか抱えてきましたので後手になりましたが、早い時期に取り掛かりたいところです。

A  何年になるんやろ? まだ最初の頃、僕30歳やったもん。

B  もうすぐ4年やね。Aは突撃で下手ばかり打ってた(笑)。

A  そんなん、いきなり「国会議員Aのコメントとって来い!」言われても、東京の地理も知らん大阪人にできるもんちゃいますよ。

C  30歳超えてなにを甘っちょろいこと言ってるんだ!って怒ったよな、俺。

B  新聞や出版の経験があるのにね。たしかにAの詰めはいまだに甘いわ。

A  ……。

D  結局、僕らが問いたかったことが世の中に訴求したかどうか、その点は気になりますね。

C  最後はいつもそこで頭悩ますよね。でも、事実関係は確実でどこのマスコミも切り込まないアングルを維持したから、それは重要なことだったと思うね。おそらく、われわれがやらなかったら闇に葬られていたんじゃないかな。だってそうだろう、われわれが知ったのは事件から1年余り経っていたからね。

大学院生リンチ加害者と隠蔽に加担する懲りない面々(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

B  そうですよね。不思議なのは後追いがまったくなかったことですね。世間で「リベラル」と言われている人で応援してくれた人といえば……?

A  元読売新聞記者の山口正紀さんくらい違います? あとは黒藪哲哉さんくらいやろか? 先頃亡くなった、『週刊金曜日』発行人だった北村肇さんら、ほんの一握りの方々ですよね。山口さんにしろ黒藪さんにしろ、当初はご存知なく、関心持たれたのは、われわれが資料を添えて説明してからですよね。『週刊金曜日』内部ではささやかれていて、北村さんは少しご存知のようでしたが、事件が起きた大阪と、遠く離れている東京では、事件に対するスタンスも温度差があって、われわれが事件を知って深刻になったのとはまた違う感じだったようです。

D  逆に想定外の「義絶」が相次ぎました。

C  そうそう。田所さんの「辛淑玉への決別」(田所敏夫「辛淑玉さんへの決別状」)にはじまり、社長の鈴木邦男への義絶(松岡利康「【公開書簡】鈴木邦男さんへの手紙」)へと。

A  社長の鈴木さんとの仲違いは、業界では話題になりました。

C  ちゃんと言葉をつかえ!「仲違い」じゃない!「義絶」だ、A!

A  あっ、すいません。

B  相変わらず詰め甘いな。

D  「踏み絵を踏ますな」という人もいたけど、そうじゃなかったですよね。「これ見てどうも思いませんか?」が僕らの原点。

松岡 最初に事件直後のM君の写真を見た時、単純に「これは酷い」と思いました。これが私の出発点でした。すぐに田所さんに連絡し、「これは黙っていたらアカン」と一致しました。まさか、こんなにたくさんのライターさんにお世話になって、5冊も出版することになろうとは思いませんでした。

B  社長を動かしてる動機ってなんなんでしょうか?

松岡 今も言ったように「これは酷いな」という単純なことですよ。もう少し込み入った事情もないわけではありませんが、そのあたりに興味のある人は『一九六九年 混沌と狂騒の時代』を読んでください。

A  読みました。ベトナム戦争で死んだアメリカ兵の死体洗いの話、びっくりでしたわ。

松岡 Aさんは私の原稿も読んでくれましたか?

A  はぁ。読んだんですけど、ちょっと難しくて……。

C  しっかりしろよ!

松岡 私は学生運動や社会運動内部で繰り返されてきた暴力の問題、いわゆる内ゲバやね。それを長年考えてきていて、かつて作家の高橋和巳先生らが警鐘を鳴らしたのに軽視され、多くの犠牲者を出しました。「まだこんなことやってるんだ!」という義憤もあったね。いわゆる内ゲバでは、私の行った大学では2人亡くなっていますし、亡くなりはしませんでしたが、あるノーベル賞作家の甥っ子の先輩が、一時意識不明になったり。なによりも私も「ゲバ民」と言われた共産党の集団に襲撃され病院送りになったことなどが悪夢のように甦ってきたりしてね。『一九六九年 混沌と狂騒の時代』の後のほうに掲載している長文の拙稿(草稿)は、そうしたことについて、私なりに考え、書き連ねたわけです。

B  ともかく最後にまとめの、もう一本出すということですね。

D  新たな取材予定があるんだったら、社長早めにお願いします。

松岡 それは秘密です。

一同  えっ! まだあるんですか!

松岡 当たり前じゃないか。冒頭に述べたように、賠償金が払われ訴訟実務としては終結しただけで、本質的な問題は、まだ何も終わっていないんでね。特に、普段は元気がいいのに、この事件について質問したり取材すると、沈黙したり逃げたり開き直ったり隠蔽に加担したり豹変したり……「人間としてどうなの?」と言わざるをえない、いわゆる「知識人」の狡さに対しては徹底的に追及、弾劾しなくてはなりません。私のことを「棺桶に片足突っ込んだ爺さん」と侮辱した徒輩がいましたが、「棺桶に片足突っ込んだ爺さん」にも意地がありまっせ!

D  社長、若手使ってくださいね。俺もうフットワーク効かないし。

松岡 心配しないでください。無理は言いますから(笑)。この件だけでなく数々の直撃取材を成功させたHT君のような根性が欲しいよね。

B  これだから鹿砦社は……。

C  そうそう、忘れないように。M君から取材班にも「くれぐれもよろしく」ってメッセージありましたよね。

C  M君もこれを区切りに新しい未来を切り開いてほしいね。

B  きっといいことありますよ。

松岡 そう思います。自分で言うのも僭越ですが、何度も地獄に落とされたながらも浮上した私のように、人生、悪いことばかりではなく、きっと良いことがあるよ。M君も、国立大学の博士課程まで進んだ秀才だし、研究課題も、日本では珍しい分野なので、彼が必要とされることがきっと来ると私は信じています。アントニオ猪木じゃないけど、「苦しみの中から立ち上がれ!」と言いたいね。皆さん、あと少しよろしくお願いします。

A  社長、次あるんだったら、ちょっと前借りできまへんやろか?

松岡 それではAさんにはもうお願いしません。

A  キツー。

B  Aよ、HT君のように前借りできるくらいに仕事しろよ。

A  あっ忘れとった。こんなんあるんですけど。

C  お前なんで今まで出さなかったんだ! これ超ド級の資料じゃないか!

B  おいおい! また大騒ぎだぞ!

松岡 これはびっくりしました。使えますね。

(鹿砦社特別取材班)

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