エアコンをつけるのに、ブレーカーから直接引いたコンセントを新設しなければならない、とビックカメラでは言われた。それでは、せっかくの白い壁に電線を這わせることになる。
メーカーに問い合わせて、その機種であればそのままのコンセントで大丈夫だと言われたのだが。
ヨドバシカメラ、ケーズデンキなどに問い合わせても、ビックカメラと同じ答だった。
メーカーがいいと言っているのに、なぜダメなのだろうか。
建築の専門家にも聞いてみたが、過電流が流れたとしても、ブレーカーが落ちるだけだ。火災に繋がるなどの恐れはない。そのためにブレーカーがあるのだから。
ブレーカーが落ちて困るのは、作業中のパソコンのデータがとんでしまうことくらいだろう。実際にそのようなことからクレームがあり、専用コンセントが絶対に必要とする申し合わせを、業者間で行っているのかも知れない。
だが、エアコンをつけようとしているのは、寝室だ。寝ている時にパソコンの作業はしない。自分としては、全く困ることはない。
そのように自分の状況を勘案し、自己責任で、専用コンセントはいらない、と言っているのに応じてくれないのは、日本的な横並び理不尽とでもいうものか。
個人商店の電気屋に当たってみることにする。量販店より多少高くなるが、それもしかたがないだろう。普段歩いていても全く意識していなかったが、街の電気屋は残っている。
最初に行った電気屋は、「ああ、この機種なら、専用コンセントでなくとも大丈夫ですよ」と軽く答えてくれた。
だがすぐ後に、「こちらの機種のほうがお勧めですよ」とパンフレットを出す。
高性能で高価格、しかも専用コンセントが必要な機種だ。
まったく、こちらの要望を受けとめていない。
「それでは、だいたい分かりましたので」と帰ろうとすると、「ハハハハハ」と高笑いを上げる。
どうして生き残っているのか。謎の電気屋だ。
めげずに、もう一軒の電気屋に行く。
「ああ、この機種なら、専用コンセントでなくとも大丈夫ですね。専用コンセントが必要な機種は、コンセントの形状から違っていて、普通のコンセントには挿せないんです。まあ、それでも専用コンセントの設置をお勧めしていますが」
試しに設置してみて、もし頻繁にブレーカーが落ちるようなら、改めて専用コンセントを設置すればいい、ということに落ち着き、作業着を着た店員に後光が差した。
驚いたのは、エアコンの値段は、量販店とさほど変わらなかったことだ。量販店が設置料込みのところ、その料金は別になっているくらいの違いしかない。
窓の外は植木を並べる程度の狭い花台で、室外機が置けるかどうか危ぶまれたが、創意工夫で乗り切ってくれた。
困った時は、街の電気屋さんに頼むしかない。
あなたの街に、良質な電気屋さんがあったら、仲良くしておくに越したことはないだろう。
(深笛義也)