◆中小企業支援・生活給付金は6.3兆円と予算総額108兆円の0.58%に過ぎない!
「戦後最大の経済危機」に対して「かつてない、世界的にも最大級の経済対策をとりまとめ」と豪語、いや「やっているフリ」をくり返す安倍政権の、新型コロナウイルス不況への経済対策の全貌が明らかになりつつある。やはり「やっているフリ」のようだ。
◎[参考動画]現金給付が柱 過去最大108兆円の緊急経済対策(ANNnewsCH 2020/04/08)
もともと通常予算(昨年末に決定)であるのに加えて、総額108兆円の内訳は税金(固定資産税や社会保険料)の支払い猶予分の26兆円のほか、新型コロナ対策では、収束後の観光振興などの一般財政なのである。
そもそも、真水の支援金はどのくらいなのだろう。いわゆる直接給付である。個人事業主に最大100万円、中小企業(資本金10億円以下)に最大200万円(決算書で5%以上の減収)の支援金が2兆3176億円。そして、当初は一律10万円とされていた個人給付は、住民税免除の低所得世帯にかぎり30万円。予算総額で、わずか4兆206億円となりそうだ(児童一人にたいして1万円をふくむ)。安倍の言う108兆円の経済支援は、まったくの嘘だったのである。国民を直接支援するのは、下限で4兆円、上限で6.3兆円なのだ。
その世帯給付金も1月以前の月収比の半減が条件であって、生活保護世帯よりも低収入でなければ支給されない。具体的に住民税免除世帯の数字を挙げておこう。収入が低ければ住民税が免除される、従来からの仕組みである。
月収8万円以下の単身者、21万余円で4人家族がふつうに生活できるとは思えないが、今回の世帯給付はわずか30万円なのである。これではそもそも、生活保護世帯に向けた支援ではないか。しかも2月~6月のいずれかで、それまでの月収から50%に減っていなければ要件を充たさないというのだ。
◆現実性のない1000万世帯給付
菅義偉官房長官は「5000世帯のうち、1000世帯を想定している」というが、絶対にありえない想定だ。不定期のアルバイト(フリーター)で、たとえば筆者の友人にもいるが、料理店の皿洗い(時給1000円)で月収16万円(8時間労働×20日)のケースのみ、これに該当するかもしれない。そんな世帯が1000万世帯もあるとは到底思えない。しかも自己申告制なのである。不正受給がないように申請を審議する、そんな煩雑な作業がこの外出禁止要請のなかで行なえるというのだろうか。給付は具体的にいつなのか。けっきょく、われわれ納税者が手にできるのは、安倍総理の肝いりの2枚の布製マスクということになりそうだ。
すくなくとも我が家では、4月末納付の固定資産税の支払い延期を決めた。外出禁止(要請)で仕事が動かない日々、この欄の読者諸賢におかれても、税金の不払いを検討されたい。法律用語でいえば、“同時不履行の抗弁権”(相手が支払うべき義務を履行しない=給付金を寄こさない。なので、その原資たる税金の支払いを拒否する)である。
◆内部留保460兆円を抱える大企業に、不況対策支援?
そのいっぽうで、政府は新型コロナの影響を受けた大企業に対し、日本政策投資銀行の「特定投資業務」を活用する形で1000億円程度の出資する案を検討しているというのだ。
思い起こしてほしい。わが国の大企業は安倍政権の法人減税や円安政策によって、460兆円もの内部留保(過去最高)を抱えているのだ。月収8万円の単身者(フリーター)が日々の生活に苦しみ、月収21万円余の4人家族がおそらく教育において子供の貧困にあえいでいるいっぽうで、大企業には惜しみなく投資するというのだ。資本家と株主など富める者を富ませ(株価の高騰を誇る)、フリーターなど貧しい者は生活苦を舐めさせる(雇用率を誇る)、これこそ安倍政権の経済政策が達成したものにほかならない。いままた、危機に際して貧富の格差を拡大させようというのだ。
ドイツではフリーランス(英語教師)が、申請後2日で60万円(5000ユーロ)の支援金が得られたという記事を目にする。ドイツでは従業員5人までの小企業、個人事業主に対して105万円、10人までの小企業で175万円を3カ月間支援している。もともと国民が支払ってきた税金の使い方なのだから、ある意味では当然の支援といえる。おそらくドイツ経済は、感染病収束とともに復活するであろう。
大企業が内部留保を持っているから、経済は好況なのではない。国庫にカネがあるから国が豊かなのでもない。経済の好況とは現実に消費が行なわれ、おカネが市場を回るかどうかなのだ。個人消費が経済全体の60~70%を占める、現代消費社会の経済原理をいまだに理解できない財務官僚および安倍政権の経済政策において、日本経済は泥沼に足を踏み入れようとしている。
◎[参考動画]【緊急事態宣言前夜】政府対策108兆円のカラクリ れいわ新選組代表 山本太郎(れいわ新選組2020年4月6日)
▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。