年末に、ハローワークで紹介された職場が詐欺会社で、業務命令で詐欺を働いた女性が逮捕されるという事件があった。
「詐欺」という言葉を辞書で引くと「1 他人をだまして、金品を奪ったり損害を与えたりすること。2 他人を欺く行為」と出てくる。言葉通りに従えば、ハローワークの求人は詐欺だらけということになる。
求人をしているものの、会社側は採用する気が無い求人で溢れ返っている。今は職種にもよるが、一人の求人に対して数十人の応募者が集まるような状態だ。その割にはいつまで経っても採用者が現れず、長いこと求人され続けている募集が多数ある。会社側に言わせれば「適確な人材がいない」ということだが、何十人と応募があるのに、一人の適正者もいない程高度な仕事ばかりなのだろうか。その割には経験不問、学歴不問と記載されている。つまり条件面では人を選ばないのに、誰も採用していない。採用されたとして、残業時間も各種保険、手当も求人情報とまるで違うなんてことは珍しいことではない。これを詐欺と言わず何というのだろうか。
転職活動時に、このような会社に応募したことがある。やはり経験不問、学歴不問とあったが、いざ電話してみると「高学歴で経験者の方も多数応募いただいているので、未経験の方を面接はお断りしています」と言われた。こういうことを羊頭狗肉というのだろう。尤も、そんな返事をもらった時点で、そんな会社には入りたくない。応募時に論文を提出させる会社もあった。丸二日かけて書いたが、面接時に「読んでいません」とあっさり言われたこともある。その会社も長いこと求人を出し続けていた。
こうなるとハローワークの問題というよりは、募集する会社の問題ではあるが、現在の求職状況を踏まえれば無理もない話ではある。ここ最近有効求人倍率が回復傾向にあるとはいえ、いまだ圧倒的に買い手市場だからだ。0.何%回復しようが、現場には全く影響など現れていない。会社からしてみれば選び放題なわけだ。その上どこの会社も景気は良くない。それならば、少しでも不安を感じる人は採用しない。完璧に理想に近い人材を求める。けれど当然、完璧な人などそうそう居ないのだから、いつまでも採用しない。だから採用しない求人情報がいつまでも存在するということになる。
また、求人の際にハローワークを利用しない会社も多い。人事を経験するとわかるが、ハローワークからの応募者は質が悪いというイメージが付いている。勿論人によりけりで、一概に言えるわけではない。ただ、私は2年弱の人事経験の間、面接時に二度学歴詐称者が発覚したことがある。どちらもハローワークからの応募者だった。それは学歴詐称でもしないと職にありつけないという現状を物語っている。ハローワークは求人件数も圧倒的に多いが、先に述べたように応募人数も圧倒的に多い。だから応募者もピンキリの幅が広い。大人数の面接をする時間も手間も大変なので、ハローワークに求人をしないという会社も多いということだ。
法に触れないというだけで、募集する側も、応募する側も詐欺が横行しているのがハローワークの現状だ。各会社、各応募者とも是正する余地はあるが、正攻法では職のマッチングがとても出来ないという、社会的な問題がそこにはある。
(戸次義継)