先月、ダウンタウンの松本人志が「タレントの高額所得を取り上げる前に高額納税者だと知れ」とtwitterで発言した。「頑張った人が頑張った分だけ多く持っていかれるって何だか府に落ちないですよね」「いい車に乗って、いい家に住んでる人が高い税金を払うのは当然」といった賛否の意見が多数寄せられたそうだ。

現在は長者番付の公示こそ廃止されたものの、少し調べれば納税額で大体の高額所得者の収入がわかってしまい、実際にそれを元に非公式なランキングをせっせと作っている御仁もいる。松本氏は以前からこの長者番付を批判しており、多少なりと知っているのであれば、twitterの発言はそれに対する批判だろうとは直に予想できることだ。

高額所得者はアメリカに住む、というのは昔からよく取られる手段だ。一定以上の高額所得者になると、アメリカの方が税金が安く済む(実際には州や算出方法で大分違うようだが)からだ。それとは別にしても、もし松本氏の発言がアメリカでされたものなら、猛烈なバッシングを受けただろう。アメリカではキリスト教の影響か、資本主義に対する考え方の違いか、富の分配に積極的だ。アメリカの大富豪が数十兆円規模の寄付を毎年しているのもそのためであるし、寄付によって税金控除も認められている。

日本では高額所得者といえど寄付額は少ない。東日本大震災時でも数千万円程度の寄付がせいぜいだった。億単位の寄付を毎年行っている人は稀だろう。高額所得者といっても、アメリカの大富豪とは規模が違うのはもちろんあるが、一番の原因は所得の多い少ないにかかわらず、日本は税金が高いという意識が常にあるからだと考える。だから日本の高額所得者が、納税に対して苦言を呈するのは仕方ない部分もある。

不思議なのは、税金が高いと認識しているのに、この度の消費増税に反対する意見はほとんど聞かなかった。上がるのは仕方ない、と諦めに似た反応ながら反対していた人はごく一部だったと記憶している。ではその高い税率で集めた税金を、一体何に使っているのだろう。本当に社会福祉や保険にあてがわれているかどうか、検証した人はいるのだろうか。東電に援助した公的資金はどれぐらい圧迫するものだったのか、銀行の危機に投入した時はどうだったのか、不透明過ぎてわからないというだけではないだろうか。

松本氏の高額な納税金は、富の再分配には使われず、一部天下りをする人たちの富に分配されているだけかもしれない。

(戸次義継)