連合東京が18日、臨時の三役会議を開き、東京都知事選で舛添要一元厚生労働相を支援する方針を決めた。だが、多くの人々にとっては目を引くニュースではなかった。
そもそも、連合東京が何なのか、知らない人のほうが多い。今や「関東連合」のほうが有名。歌舞伎役者に絡み、今度は都知事選に絡むのか、と勘ぐった人もいるかも知れない。

連合は、日本労働組合総連合会の略称。日本の労働組合の最大のナショナルセンターだ。連合東京は、その東京都連合会である。
ここで初めて、労働組合がなぜ自民党が応援する候補を支援するんだ? と疑問が湧くかもしれない。

過去の遺物と思われている労働組合。それでもなんとなく、労働組合と言えば、民主的で労働者の味方と思われている。連合は原発推進の立場に立って動いてきた、と聞くと、「どういうことなんですか?」「それじゃ逆じゃないですか」などの疑問の声が上がる。
電力会社の組合の集合体である電力総連は、明確に原発推進を掲げている。原発のプラントメーカーの組合を抱える電機連合も、原発推進の立場だ。傘下にある2つの産業別組合の強い影響力で、連合は原発推進の立場を取ってきた。
福島第1原発の事故の後も、この立場は変わらない。原発推進と明確に言うことはなくなったが、脱原発を掲げることはない。

連合は、民主党の支持母体であった。連合から民主党で議員になった者には、プラントメーカーである日立労組出身の大畠章宏、東電労組出身の小林正夫、関西電力労組出身の浜野喜史などがいる。
現在民主党の幹事長である大畠章宏は、福島原発事故の前には、原発についてバラバラだった民主党を推進へとまとめた“功労者”。事故後には大飯原発再稼働で力を発揮した。

民主党都連は、脱原発を掲げる細川護煕元首相(76)への支援を決めている。
脱原発派が出て行き、原発護持に純化した感のある民主党。当初は、舛添氏の支援に前向きの姿勢を示していた。
脱原発候補への支援に舵を切ったのは、世論の風を読んだということだろう。

連合東京の大野博会長は、東電労組出身。舛添氏への支援決定に際して、「連合は将来的に原発の依存度を低下させていく方針で『明日から止めます』というのはノーと言っている」と述べ、脱原発候補への支援はできないという姿勢をあからさまにした。
自分たちの業界の利益を、都民の生活よりも優先させる考えに、連合は従ったということだ。
会社の利益のために動く「労働貴族」であることを、自ら露わにしたことになる。
一般の組合員らがこれにどう反応するのか、見守っていきたい。

(深笛義也)