都知事選で、民主党は細川護煕を支持。民主党の支持母体である連合東京は、舛添要一を支持した。この、ねじれには、オヤッと思った人々も多いだろう。
人心が離れていくのをみて、民主党は原点に立ち返ったのかと感心した向きも少なくない。
だが、選挙が終わって流れているのは、民主党は細川陣営の足を引っ張るために選対に加わったのではないか、という情報だ。

桝添支持に傾いていた民主党は、細川出馬が決まると一夜にして、細川支持に変わった。
1月27日には、民主党の大畠章宏幹事長は、「暴走を始めた安倍政権に対峙していく戦いの一環だ。細川候補の勝利を勝ち取るために、協力をお願いします」と、党所属国会議員や都道府県連代表者らに檄を飛ばした。

大畠章宏は、日立製作所労働組合の出身。日立労組は会社にべったりの御用組合だ。原発のプラントメーカーである日立の意を受けて、福島原発の事故前には、原発に関してバラバラだった民主党を原発推進にまとめ上げ、事故後には、大飯原発の再稼働に力を発揮した、大畠は会社にとっての“功労者”である。
大畠がそれまでの経緯を反省し脱原発の立場に変わったというのなら、それまでの経験や知識は大いに役立つだろう。しかし彼が、そんな意思表明をしたことはない。
また、経産相の時に、玄海原発を再稼働させようと動いたのが、現在の民主党代表の海江田万里だ。

当初、勝手連的に細川を応援すると言っていた、民主党。
だが、支持が広がらないことに焦った細川陣営は、選対に民主党関係者を入れた。
表は脱原発、心は原発推進の民主党関係者は、原発ゼロを曖昧にすることに躍起になった。

細川は「経済成長至上主義からの脱却」などと演説で叫ぶ始末となった。
これでは、原発をなくすと江戸時代に戻る、という推進派のウソのそのまま裏返しだ。
最終処分場の問題を考えたときに、原発を稼働させて使用済み核燃料を増やしながら、次第に依存度を減らしていくより、原発ゼロと決めて一気に廃炉への道筋をつけたほうが、中長期に見れば経済的にも有利なことは明らか。
経済を成長させるためにも原発ゼロ、と唱えるべきだったのだ。

海江田はもともと、経済評論家。そんなことは百も承知でいながら、原発を稼働させれば自分もまた甘い汁が吸えるのだから、そんなことを教えるわけもない。

毎週金曜日に続いている、国会前で行われている脱原発のデモに、細川は小泉とともにやってきた。
マイクを使わずにしゃべる細川に、デモ参加者からは「聞こえないよ」と声が飛んだ。
壇上に上がらせずマイクも使わせなかったのは、民主党選対の判断だったという。

細川の足を引っ張り、まんまと桝添圧勝につなげた民主党は今頃、原子力ムラから頭を撫でられているのだろうか。

(深笛義也)