ファイタータイプのタイ選手が日本人チャンピオンを苦しめた試合が続いた。
瀧澤博人は僅差の判定勝利ながら、新たなチャンピオンベルトを巻く。今後、ジャパンキックボクシング協会のエースの一角として負けれない立場となる。
チャンピオンとして存在感増してきた永澤サムエル聖光もムエタイ戦士に攻略される展開。
閉鎖された目黒藤本ジムからKICK BOXへ移籍した内田雅之は、テクニシャンのベテランムエタイ戦士と対戦。今一つ攻められない、もどかしい引分けに終わる。
昨年11月9日、JKAバンタム級チャンピオンとなった翼は交流戦で、一つ上を行くチャンピオンの一航に悔しい敗戦。
◎KICK Insist.10 / 11月22日(日)後楽園ホール 18:00~21:15
主催:VICTORY SPIRITS / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
◆第10試合 WMOインターナショナル・フェザー級王座決定戦 5回戦
JKAフェザー級1位.瀧澤博人(/ビクトリー/ 57.15kg)
vs
ジョムラウィー・レフィナスジム(元・タイ国TV9chバンタム級C/タイ/ 56.5kg)
勝者:瀧澤博人 / 判定2-1
主審:チャンデー・ソー・パランタレー
副審:椎名48-49. アラビアン49-48. ナルンチョン49-48
スーパーバイザー:ナタポン・ナクシン
ローキック中心に前進するジョムラウィー。距離を詰められ下がり気味の瀧澤博人。ジョムラウィーが圧力強めて出て滝澤の蹴りに怯まず、蹴り返しや足払いに行くようなローキックを返す。瀧澤博人は劣勢な印象を受けるが、長身を活かしたパンチやハイキックで距離を保つ。首相撲にいく流れはほとんど無いが、パンチとローキックで前進を続けたジョムラウィーの優勢かと思われたが、下がりながらも高めの蹴りが多かった瀧澤博人にタイ人ジャッジ2名の支持が勝り王座獲得となった。
◆第9試合 62.0kg契約3回戦
WBCムエタイ日本ライト級チャンピオン.永澤サムエル聖光(ビクトリー/ 61.9kg)
vs
シラー・ワイズディー(元・ラジャダムナン系バンタム級C/タイ/ 62.0kg)
勝者:シラーY’ZD / 判定0-3
主審:少白竜
副審:松田28-29. 和田28-30. 仲28-30
初回は永澤がパンチでやや有利な流れ。シラーは第2ラウンドに入ると蹴りやパンチの攻防の中、前進を続け永澤を上回っていった。約300戦以上の戦歴を持つシラーは、多少蹴られてもパンチを受けても体幹が崩れない。永澤もパンチやヒジのヒットを狙うが下がり気味。永澤のヒットで左眉尻をわずかに切られたシラーだが、第3ラウンドも主にパンチで永澤を追う展開で優勢を保った。在日タイ人としてのトレーナーが本職か、日本の応援団が多かったシラーはしっかり日本語で応援に感謝を叫んでいた。
◆第8試合 54.0kg契約3回戦
JKAバンタム級チャンピオン.翼(ビクトリー/ 53.75kg)
vs
WBCムエタイ日本バンタム級チャンピオン.一航(新興ムエタイ/ 54.2→53.9kg)
勝者:一航 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:松田27-30. 少白竜27-30. 仲27-30
パンチと蹴りの様子見から隙を狙った素早い攻防が続く。第2ラウンドには距離が詰まりパンチの攻防も増えていく中、ボディーブローからヒザ蹴りに持ち込む一航が有利なヒットを何度か見せるが、翼のパンチも幾らか貰い鼻血を流す一航。第3ラウンドには接近戦でのパンチの交差で一航の左フックがヒットし翼がノックダウン。決定的な流れを掴んだ一航が攻勢を維持し、大差判定勝利を導いた。
◆第7試合 72.8kg契約3回戦
JKAミドル級チャンピオン.今野顕彰(市原/ 72.7kg)
vs
清水武(元・WPMF日本SW級C/Sbm TVT KICKLAB/ 72.55kg)
勝者: 今野顕彰 / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:椎名30-28. 少白竜30-28. 仲30-29
終始、今野のパンチとローキックで清水の前進を止め、清水がパンチや蹴りは出しても強いヒットは無いまま調子掴めず、今野が攻勢を維持したまま終了。
◆第6試合 ライト級3回戦
リク・シッソー(トースームエタイ/ 61.1kg)
vs
JKAライト級1位.林瑞紀(治政館/ 61.1kg)
勝者:リク・シッソー / TKO 2R 1:51 / 主審:松田利彦
第2ラウンド半ば、パンチの交錯の後、林が異常を訴え、ノックダウン扱いでノーカウントのレフェリーストップ、左腕骨折の疑いによる。
◆第5試合 62.0kg契約3回戦
内田雅之(KICK BOX/ 61.4kg)
vs
ペットワンチャイ・ラジャサクレックムエタイジム(タイ/ 61.7kg)
引分け0-1
主審:仲俊光
副審:椎名29-29. 松田28-29. 和田29-29
◆第4試合 ライト級3回戦
JKAライト級2位.興之介(治政館/ 60.9kg)
vs
同級6位.睦雅(ビクトリー/ 61.0kg)
勝者:睦雅 / TKO 1R 2:34 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜
◆第3試合 54.0kg契約3回戦
JKAバンタム級1位.幸太(ビクトリー/ 53.75kg)
vs
NKBバンタム級2位.高嶺幸良(真門/ 53.8kg)
勝者:幸太 / TKO 3R 0:22 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:椎名利一
◆第2試合 ウェルター級3回戦
大島優作(RIKIX/ 66.68kg)vs 鈴木凱斗(KICK BOX/ 66.2kg)
勝者:大島優作 / TKO 3R 0:42 / ヒジ打ちによるカット
主審:和田良覚
両陣営セコンドで旧・目黒藤本ジムのOBの顔触れが見られる同門対決のようなムードが漂う。
◆第1試合 55.0kg契約3回戦
樹(治政館/ 53.8kg)vs ペトウ・タイコン(旭/ 55.0kg)
勝者:樹 / TKO 1R 0:43 / カウント中のレフェリーストップ
主審:松田利彦
遊魔(旭)が負傷欠場でペトウ・タイコンに変更。
《取材戦記》
今年6回の興行予定だったジャパンキックボクシング協会は、コロナ禍により3回に留まりました。
インターネット中継による有料配信を試みた今回の興行。来年の観衆入場制限の解禁見通しが立たない現在、放映は簡単な話ではないが、有料配信継続は一つの運営手段でしょう。
WMOは「World Muaythai Organization(世界ムエタイ機構)」が正式名称。数年前にタイで発祥の認定団体で、タイに於いて幾らか認定される王座戦が行われている模様。世界機構はいろいろあるが、「そう言えばあのタイトルどうなった?」と言われないように活性化を切に願う。
永澤サムエル聖光は今年1月5日に興之介(治政館)をTKOに下し、ジャパンキック協会ライト級王座獲得し、9月12日に鈴木翔也(OGUNI)に判定勝利し、WBCムエタイ日本ライト級王座獲得(いずれも王座決定戦)。この日、62.0kg契約で永澤(61.9kg)、シラー(62.0kg)ともにライト級リミット(61.2kg)を超えており、敗れても王座剥奪はされません。プロボクシングのシステムだが、ムエタイも確立した団体では採用されているシステムです。
今居るチャンピオン達で盛り上げていかねばならないジャパンキックボクシング協会。そこはビクトリースピリッツプロモーションが年々力を付けて来た運営が今後の鍵を握るでしょう。
◎ジャパンキックボクシング協会2021年興行予定
1月10日(日)後楽園ホール
3月28日(日)新宿フェース
5月 9日(日)後楽園ホール
6月13日(日)市原臨海体育館
8月22日(日)後楽園ホール
11月21日(日)後楽園ホール
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」