コロナ禍の緊急事態宣言再発令の中、ジャパンキックボクシング協会(JKA)3年目の新春興行は、元・ラジャダムナンスタジアム・ウェルター級チャンピオンの武田幸三氏がプロモーターとして開催する興行「CHALLENGER 1」

名付けたのも武田幸三氏。この時代の荒波を乗り越えるチャレンジがテーマ。将来的にはこの団体と、更に業界を支える一人となっていくであろう武田幸三氏です。

WMOインターナショナル王座は昨年11月22日、フェザー級王座決定戦で、瀧澤博人(ビクトリー)がジョムラウィー・レフィナスジムに僅差の判定勝利で王座獲得。今回はスーパーバンタム級で王座決定戦となり、馬渡亮太が倒せぬ消化不良も判定勝利で王座獲得。

この日、芸人レイザーラモンHGがいつものコスチュームで、セレモニーでの司会を務められた。オープニング宣言では素顔とスーツ姿でリングに立ったが、全く気付かない観衆。パフォーマンスでは武田幸三氏との絡みで、さすがにプロのトークをしっかり見せてくれました。

レイザーラモンHG御登場、武田幸三と“フォー”

◎CHALLENGER 1 / 1月10日(日)後楽園ホール 18:00~20:40
主催:治政館ジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)、WMO

◆第7試合 WMOインターナショナル・スーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

馬渡亮太(前・JKAバンタム級C/治政館/55.2kg)
    vs
クン・ナムイサン・ショウブカイ(元・MAXムエタイ55kg級C/タイ/55.34kg)
勝者:馬渡亮太 / 判定3-0
主審:チャンデー・ソー・パランタレー
副審:椎名49-48. アラビアン長谷川49-48. シンカーオ49-47
立会人:ナタポン・ナクシン(タイ)

馬渡亮太のタイミングいい左ハイキックでクン・ナムイサンの前進を止める

馬渡は様子見でハイキック、ヒザ蹴り、前蹴り等の鋭いけん制が引き立つ。クン・ナムイサンもテクニシャンで負けず劣らず応戦するが、馬渡のヒザ蹴りが徐々に効いてくると、第3ラウンド終了時には呼吸が荒い様子。

強気な様子は伺えるが次第にスタミナ切れ、最終ラウンドには馬渡の前蹴りをボディーに貰うと嫌な顔をして、間を取る横を向く素振り。それはレフェリーが認めていないが馬渡も遠慮気味に攻めない。

そんな前蹴りヒットによるダメージ誤魔化しが二度あったが、その後は距離をとったまま流して終わるようなムエタイの慣習をやってしまうと、観衆人数制限ある少ない観客からでも野次が飛ぶ。馬渡優勢の展開ではあったが、不完全燃焼の念が残る結末となってしまった。

馬渡は試合後、「もっと強くなって、次は倒せる選手になって帰ってきます」と語った。

馬渡亮太の左ハイキックが巻き付くようにクン・ナムイサンの首を捕える

新たなチャンピオンベルトを巻いた馬渡亮太、更なる上位を目指す

モトヤスックの右ミドルキックで野津良太を突き放す

◆第6試合 ウェルター級3回戦

JKAウェルター級チャンピオン.モトヤスック(治政館/66.6kg)
    vs
NJKFウェルター級2位.野津良太(E.S.G/66.3kg)
勝者:モトヤスック / TKO 2R 2:36 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

上背で上回るモトヤスックに野津良太は距離を縮めてパンチ、ヒジ打ち、蹴りで積極的に攻める。モトヤスックのスピードある蹴りが野津の脇腹にヒットすると赤く腫れだす。首相撲になればモトヤスックが圧し掛かるような技が優る。

第2ラウンドには右ストレートをヒットさせると一気にコーナーに詰めて連打するとほぼロープダウンの形でカウントを取られ、足下定まらない野津をレフェリーが止めた。

モトヤスックは全試合終了後にはこの日のMVPとなるの武田幸三賞が贈られた。

モトヤスックの右ストレートから連打に繋いで仕留める

この日のMVPはモトヤスック、武田幸三賞が贈呈された

◆第5試合 バンタム級3回戦

JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/53.2kg)
    vs
ジョムラウィー・ブレイブムエタイジム(タイ/53.0kg)
引分け 0-0
主審:椎名利一 / 副審:松田29-29. 仲29-29. 少白竜29-29

やや距離ある中でのローキック、前蹴り、パンチの攻防。石川にとって得意の首相撲には持ち込めない展開。互いの攻めは強烈なヒットは無いまま進むが、ジョムラウィーの蹴りの駆け引きがやや優る攻勢。石川はやや不利に進むも最終ラウンドには石川がパンチで攻めた積極性がやや有利に動いたか引分けに終わった。

(ジョムラウィーはレフィナスジムからブレイブムエタイジムに変更されています。)

ジョムラウィーを掴まえきれなかった石川直樹、パンチで攻勢をかけた

◆第4試合 70.0kg契約3回戦

JKAミドル級1位.光成(ROCK ON/69.5kg)vs JKAウェルター級1位.政斗(治政館/69.5kg)
勝者:政斗 / 判定0-3
主審:桜井一秀
副審:椎名28-30. 仲28-30. 少白竜 29-30

光成は手数は少なめ。圧力をかけ前進するのは政斗。強いヒットは無いまま進むが、最終ラウンド終盤、組み合ったところで政斗のヒジ打ちがヒットし光成の額が切れ、攻勢を保った政斗が判定勝利。

光成vs 政斗。政斗のヒジ打ちが光成にヒット

◆第3試合 バンタム級3回戦

義由亜JSK(治政館/53.0kg)vs 景悟(LEGEND/52.9kg)
勝者:景悟 / 判定0-3
主審:松田利彦
副審:椎名27-29. 桜井28-30. 少白竜28-29

景悟は新鋭ながら昨年10月に元・日本フライ級チャンピオン.泰史(伊原)と引分ける実力を見せている。両者の攻防は幼い頃から始めたアマチュア(ジュニアキック)の技が冴え、最終ラウンドに景悟が右のパンチでノックダウンを奪い、残り時間少ないところで再度のパンチで義由亜JSKの腰が落ちかけるもそのまま終了に至り景悟の判定勝利。

義由亜JSK vs 景悟。景悟の高く上がる脚、ハイキックで義由亜を攻める

◆第2試合 フライ級3回戦

空明(治政館/50.5kg)vs 吏亜夢(ZERO/50.4kg)
勝者:吏亜夢=リアム / KO 2R 2:50 / テンカウント
主審:仲俊光

◆第1試合 55.0kg契約3回戦

樹(治政館/54.0kg)vs 猪野晃生(ZEEK/54.5kg)
勝者:樹 / TKO 1R 2:00 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一

※55.0kg契約3回戦  西原茉生(チームチトク)vs 中島大翔(GET OVER)は西原茉生の練習中の右手骨折の負傷により中止

《取材戦記》

大会場でテレビ生中継されるビッグイベントと違い、こじんまりした昔ながらの後楽園ホール興行。これはこれで昭和の雰囲気があっていいものです。新春興行としては寂しい内容でしたが、コロナ禍では仕方無いところでもあります。

手に痛々しい包帯が巻かれた負傷欠場した選手に対し、「俺は試合三日前にスパーリングで右拳骨折したけど試合に出たぞ!」と言った某レフェリー。昭和の時代は会長が「そんなもんで休むんじゃねえ!俺らの頃は……!」とまた更に前の時代を引き出して厳しいこと言われたらしい。「今時の若いモンは!」とはこの業界でも言い伝えられていくようです。

義由亜JSK(治政館)にノックダウンを奪って判定勝利した景悟(LEGEND)は17歳で、5戦4勝(1KO)1分となった。両者は将来タイトルマッチに絡んでくる期待される存在と言われている。楽しそうに戦っている雰囲気があった景悟は今後どんな成長を見せるか。「今時の若いモンは!」と言われない成長を魅せて貰いたい。

アルコールと次亜塩素酸水によるリング上の消毒が1試合ごとに行われました。これはコロナウィルス対策だけでなく、毎度の興行、試合ごとにやればいいのではと思います。

昔、1990年代前半頃、リングスかUWFだったか、1試合ごとに若手レスラー2名がリング上を拭いていたのを見たことありますが、以前からリング上は土足で上がる関係者がほとんどで、出血した選手の血が落ちている場合もあります。ノックダウンした選手はマットに倒れ込み、マウスピースは落とすと、プロボクシングでは一旦洗われてから口に戻されますが、キックでは以前どおり、その場でレフェリーが拾って口に戻す場合が多く、衛生的には良くないものでした。このコロナ禍を期に毎回行えばいいなと思うところであります。

次回、ジャパンキックボクシング協会興行は3月28日(日)に新宿フェースで開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2021年2月号 日本のための7つの「正論」他