フリージャーナリストの今井亮一さんが2011~2012年に「大髙事件」と呼ばれる刑事事件の裁判を取材していた際、東京地裁に「虚偽の記者席」で傍聴を妨害されたなどとして、国に1万円の損害賠償などを求めて同地裁に起こした国賠訴訟の控訴審で、またしても姑息な判決が出た。

昨年9月に出た東京地裁(山田明裁判長)の第一審判決は、「大髙事件」の公判で同地裁が毎回もうけた5席の記者席が「記者クラブに求められていない“虚偽”の記者席だった」という肝心の前提事実に踏み込んだ言及をせず、「憲法82条1項の規定は、各人が裁判所に対して傍聴することを権利として要求できることまでを認めたものではない」などという的外れな理屈で今井さんの請求を棄却。今井さんはこの判決に「傍聴できなかったこと以上に、虚偽記者席という卑怯・卑劣なものを見せつけられたことが不愉快だったと主張したのに、そこがスルーされたのは残念」などと不服を述べ、東京高裁に控訴していた。

そして2月19日、東京高裁であった判決公判で下田文男裁判長は今井さんの控訴を棄却したのだが、判決では第一審同様、「虚偽記者席」という卑怯卑劣なものを見せつけられて精神的損害を被ったという今井さんの主張の核心に何も答えず、完全スルー。今井さんは裁判所の一般待合室で食事をしながら判決文を読み、おにぎりに入っていた北海道産の大納言小豆を思わず吹き出しそうになったという。

そもそも、東京地裁が公判中に「虚偽記者席」をもうけた「大髙事件」は、裁判所前で毎日ハンドマイクを使って裁判所批判をしていた男性が高裁の警備職員の頭部を殴るなどしたとして公務執行妨害と傷害の容疑で逮捕・起訴されたという事案。男性は第一審で懲役1年2月の実刑判決、控訴審で控訴棄却の判決を受けたが、一貫して無実を訴えており、現在は最高裁に上告中だ。つまり、「被告人は裁判所に敵対的な人物で、被害者は裁判所の身内」「被告人は一貫して無実を主張」という事件を当事者的立場の裁判所が裁く構図になっており、本来なら裁判所は審理の公正さを疑われないように通常以上に注意する必要があった。にも関わらず、裁判所は「虚偽記者席」をもうけて一般の傍聴を妨害したうえ、その違法性を追及された国賠訴訟でも核心部分をごまかす姑息な判決を二度も出したのだ。今井さんが判決文を読みながら、北海道産の大納言小豆を吹き出しそうになったというのもよくわかる。

上告するかどうかなどについて、今井さんは「悩み中」だそうだが、今後の展開も注視したい。

(片岡健)

★写真は、姑息な判決を出した東京高裁

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