「スラップ訴訟反対 被害者支援の会」のホームページ管理人としては、見逃せないスラップ訴訟が起きた。
前田敦子ら女優8名らが所属するプロダクションおよび関連会社5社が加盟する一般社団法人日本音楽事業音楽協会が3月25日、無断で写真を合成・掲載されパブリシティ権を侵害されたとして『週刊実話』の発行元、日本ジャーナル出版などを相手どり、総額8800万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
原告は他に篠原涼子(40)、国生さゆり(47)、綾瀬はるか(29)、石原さとみ(27)、深田恭子(31)、優香(33)。

訴状によると、同誌2013年11月21日号の記事 「勝手に品評!! 芸能界妄想オッパイグランプリ」で、「アーティストの写真に人格を 傷つけるような加工を施した」とのことだ。同誌編集部は「まだ訴状が届いていないのでコメントできません」としている。確かに、記事は妄想でタレントの裸を想像しているが、シャレで笑う度量はなかったのだろうか。

「これこそ恫喝訴訟だろう。週刊実話より部数が多い夕刊フジや週刊文春や週刊新潮などでは、芸能人の名誉を毀損していると思われる記事が山ほど散見できる。だが、それらは仮に訴えられても、きちんと取材していて記事が事実なら、阻却できる可能性がある。今回は、完全に訴訟された側が100%負けるという事案。音事協も大人げないよね。勝つ相手を選んで、ケンカを仕掛けるのだから」(弁護士)

タレントのボディを想像して楽しむ記事などは、週刊誌や実話誌に30年前以上から山ほど掲載されている。
ところが、「大資本の論理」で8800万円も版元に請求する暴挙に音事協らは出た。
もし運良くいったとしても、訴訟された「日本ジャーナル出版」は、800万円ほど支払うことになるだろうと前出の弁護士は見ている。

さらに、元野球選手の清原が、週刊文春で薬物使用問題を書かれた文藝春秋社を相手に「2億5千万円支払え」という訴訟を起こしている。
「記事による名誉毀損裁判の賠償金額が高騰した分水嶺となったのは、2009年、週刊現代が一連の八百長疑惑のスクープにより、日本相撲協会に対して賠償金4290万円の支払い命令を受けたケース。これから、敗訴したメディア側が、高額の賠償金を支払う例が続いています。今は、『事実かどうは』は争点にならず、『報道によってどれくらいの損害が出たか』『プライバシーがどれくらい侵害されたか』が重要な論点で、メディア側が取材過程などをつまびらかにして事実を検証しても、なかなかメディア側が勝てないのが現状です。これからは、欧米なみにメディア側に『1千万円支払え』などという判決が相次いでいくでしょう」(前出・弁護士)

「金持ち、ケンカせず」ということわざはここでは通用しない。
それにしても、音事協は噛みつきやすい場所に噛みついてくれた。さすが、芸能プロダクションの「番犬」を自負しているだけのことはある。
彼らに週刊文春や週刊新潮を相手どる骨っぽさはない。音事協よ! スラップ訴訟でタレントへの取材が手ぬるくなる効果を狙っているとすれば、逆効果だ。
記者たちは、山ほどタレントの醜聞を握っているぞ。

(小林俊之)