笑っていいともの最終回は、久しぶりに笑った。ビートたけしが表彰状を読み上げると言いつつ、悪いことばかり言って随分笑わせてもらった。これだけ笑ったのはいつ以来だろう。

笑いにも人によって好みがあるから、たけしのような笑いの取り方を毛嫌いする人がいるのも理解できる。私のような天邪鬼は、もうテレビ画面の向こうでちょっと面白い話をされたぐらいでは、ちっとも笑えなくなってしまった。会話で最も盛り上がるのは人の悪口であるし、人が隠そうとすること、汚点となっているところをあえてネタにするのは、お笑いの常套手段だ。だからお笑いが他の芸能より一段下に見られていたというのもある。しかし今はそんな毒気の微塵も無いバラエティ番組ばかりだ。だからテレビはつまらなくなった。

夜にも最終回特番があったようだが、そちらは観ていない。だが芸能ニュースとしては特ダネの宝庫だったようで「さんまにダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるず、爆笑問題等奇跡の競演」だの「視聴率低迷のために番組が終了したが、最後に高視聴率を叩きだした」だのと大喜び。これが10年前の出来事だったら、私もテレビにかじりつきつつ録画し、永久保存版としたことだろう。しかしとっくにテレビというメディアに愛想を尽かした今となっては、誰と誰が不仲だろうがどうでもいい。視聴率なんてそれこそテレビ関係者以外にとってはどうでもいい数字だ。

30年以上も続いた定番番組が終わるのと、実現しないだろう顔ぶれが共演したのだから、盛り上がるのも結構なことだ。大変なのはこれからだ。いいともの最終回だから、たけしもリップサービス満点のネタを披露したが、もうこんな笑いを取るようなことはやらないのではないか。少なくともテレビでは、これ以上の舞台は今後用意できるとは思えない。たけしは死ぬまでテレビに出続けるだろうが、タモリはどうだろう。あまりテレビに固執せず、段々と出ることも無くなっていく様に思える。あくまで個人的予想だが。

夜の部での豪華共演陣は、2度と集まることもないだろう。高視聴率でフジテレビは大喜びかもしれないが、下手をすれば今後2度とこれ以上の視聴率が取れなくなる可能性だってある。出せるだけのお笑いのビッグネームを出しての高視聴率だったからだ。定番の番組が無くなるということは「いつもある安心感」の消失ともいえる。ただでさえテレビ離れが進む中、いいともの代わりになる様な期待の番組もなく、タモリの後継者になるような人物も見当たらない。

いいともの最終回は大いに笑わせてもらった。これでもう、遠慮なくテレビからサヨナラができる。そう思った人は、私だけではないはずだ。

(戸次義継)