ミス・インターナショナル12年グランプリの吉松育美さんは、芸能事務所の役員からのストーカー行為などで仕事の舞台を奪われたが、独自に切り開いた道を歩んでいる。
吉松さんが、アメリカのCBSラジオで、従軍慰安婦について語ったところ、批判が殺到した。
吉松さんのFacebookには「慰安婦の問題を語るには相当勉強しないと足元をすくわれますよ。痴漢の冤罪に加担しているのに等しいです」「教養がないならデリケートな国際的政治問題を語ってはいけません!」「今回の発言によってあなたがただの”無知な美人”として世間に認知されたことは間違いない」などのコメントが付いた。
これを見ると、どちらが勉強不足で無知で教養がないのかと、首を傾げてしまう。
従軍慰安婦が話題になるたびに巻き起こる論争を見ていると、いったいどれだけの人が正しく問題を把握しているのだろうか疑問に思う。
もちろん従軍慰安婦の問題は単純ではない。だが理解できないほどには複雑ではない。
元陸軍軍人の吉田清治が書いた『朝鮮人慰安婦と日本人』が1977年に発刊されて、従軍慰安婦は大きく問題となった。
そこには、韓国の済州島で、200人の女性を拉致し慰安婦にした、という告白が記されていたからだ。
しかし、済州島の郷土史家の研究などによって、吉田の証言は事実ではないことが明らかになった。
1996年5月には、吉田自身が告白がフィクションであることを認めた。
このことによって、あたかも従軍慰安婦そのものがなかったかのように思いこむ人々が日本には増えた。
だが、慰安所があり、そこに軍人の性交渉の相手となる女性がいたことは、様々な資料や証言から明らかだ。
慰安所は軍の管理下にあり、軍規の維持や敵の奇襲攻撃に備えて、銃剣を携えた歩哨がそこには立っていた。
女性たちは、業者の周旋人から、稼げるいい仕事があるなどと、貧しさにつけ込まれるかたちで騙されて、連れてこられていた。
これを「強制」と呼ぶのにふさわしいかどうかは議論のあるところだろうが、彼女たちの多くが自分の意思で慰安婦になったのではないことは確かだ。
現在の問題は、韓国などが国際社会に対して、いまだに吉田証言を真実として従軍慰安婦のことを訴えていることだ。
これに対しては、事実ではないと、冷静に伝えていくことが必要だろう。
だが一方で、軍の管理下にあった慰安所で不幸な目に遭った女性たちに対して、日本が謝罪することは間違いではない。
吉松さんは、CBSラジオで次のように語った。
「『慰安婦は売春婦だったので謝罪する必要はない』という意見も出ているが、生き残った慰安婦の証言を聞くとそうではなかったという意見もある。日本人としてこうしたコメントを恥ずかしく、また謝罪することが問題とすら考えられているのに憤りを感じる」
娼妓(売春婦)が慰安婦になった例もあるが、多くは騙された一般女性が慰安婦にさせられたのだ。「慰安婦は売春婦だったので謝罪する必要はない」というのは誤りであり、吉松さんの指摘はまったく正しいものだ。
批判の殺到で、吉松さんはブログとFacebookで「皆さんに大変な混乱と誤解を招きましたことお詫び申し上げます」と謝罪することになった。
謝罪する必要がなかったのは、吉松さんのほうではないかと思う。
(深笛義也)