以前、タイ人の知り合いから聞いたことがある。タイ人の名前は長く呼びづらいので、適当にアンとかノイとか適当なニックネームを付けて呼んでいるとのこと。だから親しい友人でも本名は知らないということも多いらしい。

タイ語での挨拶の「サワディ」というのは割と知られているが、アルファベットでの綴りを聞いたら「sawadiiでもいいし、sawadeeでもsawadeeeeでもかまわない」と答えが返ってきた。

タイ人はいい加減な人が多いという話を聞いてはいたが、確かに随分いい加減だなと思ったものだ。いい加減というより、細かいことを気にしない気質なのだろうか。そこがタイらしさかとも思っていたが、ある日、そのタイ人にこんな質問をされた。
「日本って、なんて読むの?」
ふと、返答に困った。普通に考えれば「にほん」だが、オリンピックなどで「NIPPON」と書かれたプラカードを持っていたような気がする。「全日本」は「ぜんにほん」「ぜんにっぽん」とも言う。「日本橋」は「にほんばし」も「にっぽんばし」も存在する。今は「にほんこく」が正式な気がするが、以前は「だいにっぽんていこく」だったわけだ。

後日調べたら「にほん」「にっぽん」のどちらでも良いというのが公式見解らしい。なんてことだ、タイ人をいい加減だなんて笑えない。日本は国の読み方も統一されてなかったのだ。しかも政府が「どっちでもいい」と言っている。今までずっと日本にいて、疑問に思ったことも無かった。

さらに、日本の首都は疑う余地もなく東京と思っていたが、東京を首都と定めた正式な文書が無いというのだ。つまり立法、行政、司法機関がすべて東京にあるから事実上東京が首都というだけで、東京と決めていないのだ。皇居が東京にあるから、という見方もあるが、京都にも京都御所がある。旧江戸城が皇居となってからも、法的な遷都があったわけではないので、京都を首都と考える説もある。

とはいっても現実に首都としての機能を果たしているのは東京で間違いない。しかし正式な取り決めがなく、流れでそのまま事実上首都になっている、とはなんといい加減な事か。

ところでタイの首都はバンコクだ。人名と同じく、正式名称は非常に長くタイ人でも覚えていない人が多いのだとか。バンコクの正式名称を日本語で表すと「クルンテープ・マハーナコーン・アモーン・ラタナコーシン・マヒンタラーユタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラッタナ・ラーチャターニー・ブリーロム・ウドム・ラーチャニウェート・マハーサターン・アモーンビーマン・アワターンサティト・サッカタットティヤ・ウィサヌカム・プラシット」となるらしい。タイ人はいい加減なのか、きめ細かいのか、よくわからない。

(戸次義継)