定年後に何をしたらよいのか、何もすることが無いという話題を時折聞く。高度成長期をがむしゃらに働いていた日本人だからこその話かと思えば、アメリカでも老後にやることが無い人が増えているという。そういう人たちは本当に、仕事しかすることが無かったのだろうか。あるいは主婦は、子供の独り立ちを見届けたら、もう何も残っていないのだろうか。

不思議でしょうがない。私はやりたいことが多すぎて困っているというのに。仕事さえなければと、何度思ったことだろう。もっと時間があればピアノの練習時間も多く取れる。他にもギターもやりたいしサックスなんかも吹いてみたい。PCで曲を作って動画も作成してYouTubeに上げるとなると、何か月もかかる作業になってしまう。作りたいものはいくらでも出てくるのに、全く作業時間が追い付かない。

ブログも時間が無く更新が途絶えてしまっている。もっと時間があれば、プログラムの1つでも覚えてアプリ作成ぐらいやってのけたい。そうなると楽器を1つ覚えるよりハードルが高いものとなりそうだが。読まずじまいの本も山と積んであるし、聴かずじまいのCDも大量にある。これらは年々増えていく一方だ。旅行だって行きたいところはいくらでもある。行ったことのない国ばかりだし、国内でも行ったことのない土地はいくらでもある。尤もお金の余裕が無ければ、時間があっても中々できないが。

言ってしまえば定年が待ち遠しくて仕方がない。退職できれば時間の余裕ができるのだから、はやく退職させてくれと言いたいところだ。歳を取ってから何かを始めるのは難しい、と言う。しかし現に今定年後にピアノを始める人もいれば、ボランティアに従事する人もいる。勿論若いうちからやれれば良いのだが、誰だって若いうちからやりたいことができるわけではないのだから、仕方がない。だからといって歳を取ったら諦めなくてはならない理由はない。

私はピアノを始めたのは高校生からだ。働くようになり止めていたが、止めてしまうと物足りなさが常に付きまとってくるので、10年のブランクののち再開した。技術的にも伸びが悪いし、物覚えも悪いが、好きでやっているのだから楽しいばかりだ。PCの知識も深いわけではない。学校で学べなかったが、社会人になってから仕事と趣味でほとんど覚えた。そう思うと30歳から始めようが40歳から始めようが、50歳だろうが60歳だろうが大差はないのではないか。逆に、全く興味が無い人は20代でもPCのことに無頓着だったりする。要は興味が持てるか、やる気があるかだ。

そんなわけで定年後、時間を十分に使える日が待ち遠しいのだが、60歳から65歳になるだの、今の30、40代は定年が70歳になるだの、定年が遠のくばかりだ。おまけに欠かさず年金を払っていても、十分な額がもらえないだの、そんなニュースばかり観ていると、定年後にやることがないどころか、定年退職させてもらえないんじゃないだろうかと思えてくる。

(戸次義継)