原発を「重要なベース電源」と位置づけた、安倍内閣。原発の新規性基準は世界で最も厳しいと、安倍総理は言っているが、果たしてそうだろうか?
今なお原発を推し進めている国と、比べてみよう。

フランスでは、メルトダウンした際に、炉心を受け止め外に出さない、コアキャッチャーという設備を原発に設けることになっている。溶け落ちた核燃料が圧力容器の底を突き破って下に落ちても、それをキャッチして安全な容器に誘導して一気に冷却するというシステムだ。ヨーロッパの他の国々でも、コアキャッチャーの設置は義務づけられている。
日本には、コアキャッチャーのある原発はない。
ヨーロッパの基準でなら、日本には動かせる原発はない、ということになる。

日本では、原発の下の地層にあるのが、活断層か地滑りかが問題になる。
地滑りなら原発を動かせて、活断層なら動かせない、となっているからだ。
アメリカでは、こんなことは問題にならない。
安全基準での扱いは、活断層でも地滑りでも同じだからだ。
これで行くと、日本に動かせる原発はほとんどない。

アメリカでは、自然災害について、10万年に1度というレベルで検討する。
風速130メートルのハリケーンで、吹き上げられた自動車などが、高速で原発に次々と落ちてくる、といったケースまで想定する。
この基準では、たった1万2800年前に桜島が大噴火して火砕流が来た地域にある、川内原発を動かすことはできない。

アメリカのニューヨーク州にあるショアハム原発は、嵐の日に事故が起きたら、船での住民の避難ができないとして、完成後にも関わらず、廃炉になった。
福島原発事故当時に首相だった菅直人は、2キロ、10キロ、20キロと段階的に避難区域を広げたことを、「その区域の全員がいっせいに移動すると、原発に近い人ほど、逃げ遅れる可能性が高い」と手記で釈明している。
日本では、原発からの避難などできないと言っているに等しい。
日本のどこの原発でも、避難に3~4日かかるという試算もある。その間に、住民は被曝してしまう。
日本では、避難の問題は、原発の規制基準には入っていない。

18日に、トルコとアラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出を可能にする原子力協定が参院本会議で承認されたばかりだが、日本の原発の輸出先として名が上がっているのは、ベトナム、インド、ヨルダンなどだ。
アメリカやヨーロッパでは、日本の原発は買ってくれない。
2012年に、アメリカのカリフォルニア州にあるサンオノフレ原発が、放射性物質を含む水漏れを起こしたことで、製造元の三菱重工業は、運営会社から約4000億円の損害賠償を求める訴訟を起こされている。

原発先進国ではとうてい動かせない欠陥原発を、売りつけようとしているのだ。
日本は、恥ずべき国になろうとしている。

(深笛義也)