とうとう、児童ポルノの単純所持が禁止されるかもしれない。
現行の児童買春・児童ポルノ処罰法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)では、児童ポルノを提供、製造、頒布、公然な陳列、輸入、輸出することが禁止されている。
それが単純所持、ただ持っているだけで罰せられるようになるという。

ゴールデンウィーク明けにも、改定案の審議に向けて衆議院理事懇談会にて討議が行われる予定とのこと。委員会で審議が始まるのは6月になる見通しだ。マンガ・アニメなど創作物の性犯罪への影響についての調査研究に関する項目が外れるのは、ほぼ確実で、残る問題は「単純所持の禁止」だ。強行採決を避けたい与党は、単純所持禁止の落としどころを巡って、野党との調整を進めているという。

児童ポルノとは何か? 児童買春・児童ポルノ処罰法では、以下のように述べられている。

1.児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態。
2.他人が児童の性器等(性器、肛門又は乳首)を触る行為又は児童が他人の性器等(性器、肛門又は乳首)を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの。
3.衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの。

児童とは、18歳未満の男女を指す。
筆者の書棚には、『Santa Fe』(朝日新聞社)がある。
衣服の全部又は一部を着けていない、17歳の時と言われる、宮沢りえの写真集だ。
単純所持禁止となった場合に、筆者は逮捕されるのだろうか。

単純所持禁止への法改正への抵抗として、そのような写真集を持っている者が、いっせいに自首したらどうか、という提案もあるようだ。
だが実は、これには答えが出ている。
『Santa Fe』を持って自首しても受け付けられないし、所持していても逮捕されることはないだろう。

2009年6月、民主党の枝野幸男議員は、児童ポルノ禁止法の法案提案者である自民党の葉梨康弘議員に対し、『Santa Fe』を児童ポルノとして取り扱うのかと質した。
葉梨議員は、同法により本写真集の単純所持が違法化されたとし、1年の猶予期間内に廃棄されなかった場合には本写真集の所持を法の不遡及の原則に逆らい、処罰の対象にすべきであるという旨の答弁をした。
だがこの発言がメディアで波紋を呼ぶと、葉梨議員は、自分は本写真集を見たことがなく判断のしようがなかったと弁解しつつ、自分が本写真集を廃棄すべきだと発言したという報道は誤解に基づくものであるとして反論した。

『Santa Fe』を持っていたら逮捕されるかどうかよりも、字義通りに読めば違法となるものが、実際には違法にはならないという見解を、法案提案者がぬけぬけとしているということのほうが問題なのではないだろうか。

憲法9条がそうであるように、字義通りに読めば一切の軍隊を持てないはずが、解釈で持てるというような、2重基準がまた生まれることになる。

違法かどうかというのは、かつてのポルノ論争と同じく、芸術か否かを論じることになるのだろうか。
写真家が篠山紀信ならよくて、加納典明ならダメという話だったら、誰も納得がいかないだろう。

単純所持に抵抗の姿勢を示している民主党は、「有償で反復して取得した場合」との限定をもうけることを、落としどころとして探っているという。

(深笛義也)