新宿御苑に近い新宿1丁目の辺りは、新宿の繁華街からは離れている。
表通りから中に入ると、マンションなどが建ち並ぶ住宅街だ。
その道路を、完全武装の機動隊がふさいでいる。
ちょうど、小学生くらいの女の子がその前まで来たが、機動隊の壁を見て引き返していった。

その先の花園西公園では、在特会(在日特権を許さない市民の会)による、「犯罪害国人は出て行け!」という集会が行われていた。さる6月1日のことだ。
今さら説明するまでもないだろう。在特会は、在日外国人をあからさまに差別するデモを行ってきた団体だ。
こうした行為をやめさせようと、「レイシストをしばき隊」(現在は、C.R.A.C.と改称)などの人々が、対抗する行動を取ってきた。

それがずいぶん大変なことになっていると聞き、筆者はやってきた。
集会の様子を見てみようと公園に向かったところ、道路がふさがれていたのだ。
機動隊員とは、以下のやりとりがあった。
「どちらに行かれますか?」
「そこの公園まで」
「集会の参加者ですか?」
「取材です」
「どちらの社です?」
「フリーランスです」
こちらが渡した名刺をまじまじと見てから、彼は言った。
「取材の方は入れないんですよ。集会参加者しか入れないんです」

これまでの人生で、おそらく100回以上は集会に参加していると思うが、こんなことは初めてだ。
集会参加者だろうが、野次馬だろうが、取材者だろうが、その場に行けるのが普通だ。
しかも、公園の50メートル手前で、道路は封鎖されている。
四方の道路を確認してみたが、すべて同じである。

機動隊の張った阻止線の前に、ヘイトスピーチに反対する人々が集まって、肉声や拡声機で、在日外国人を差別する集会やデモをやめるように訴える。
しかしその声は、50メートル離れた集会場には、届いていないだろう。

近くにいる警官に聞いてみた。
「道路を封鎖している法的根拠は何なんですか?」
「根拠って、見れば分かるでしょ。見れば。お互いを引き離すためですよ」
「いや、これが悪いと言ってるわけじゃないですよ。法的根拠を聞いてるんです」
これまでもお互いの衝突で、負傷者や逮捕者が出ている。確かに、その予防策にはなっているだろう。
「悪くないんだったらいいでしょう。悪くないんだったら」
警官はそう繰り返しながら、法的根拠は教えてくれなかった。
後で警視庁に聞いてみると、道路法によって、必要な場合は通行の制限や禁止ができるとのことだ。

日の丸や旭日旗を掲げた、在特会のデモが出発する。機動隊員たちに阻まれて、抗議する人々は近づけない。
夏が来たかと思えるような、日差しが照りつける、昼間。
完全武装で走り回る機動隊員たちを見て、いつになく、気の毒だなと思ってしまった。

(深笛義也)