自民党総裁選後、総選挙直前の発行ということもあって、政局の記事が多いかと思っていたところ、このかんの政界の激変を反映してか、慎重な記事が目立った。自民党の総裁選パフォーマンスが自民党支持を押し上げたことで、政権交代にはやや懐疑的にならざるをえないのは仕方がないであろう。そのいっぽうで、専門分野のレポーターの記事が目を惹いた。

◆継続して分析すべき、当面する課題──総選挙とコロナ対策、そして介護保険

 

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大山友樹「なりふり構わぬ公明党の宗教闘争」は、創価学会票の低減が分析されている。自公連立が22年目にはいって、議員数は伸びもせず減りもしない、その意味では固定票をもとにした政治が、ここにきて自民党の長期政権にたいする批判のあおりで、危機を迎えているという。ほかならぬ学会内の矛盾である。

そして公明党は、遠山清彦議員への貸金業者法違反疑惑という地雷を抱えている。総選挙で自民党が単独過半数を割ったときに、連立政権の根幹からヒビが入る可能性は、この事件をどう評価するのか、学会の内部事情にかかっている。

青木泰の「政権選択に求められるコロナ対策」は、10月に入ってからの激減を前に書かれたレポートだが、世代別の感染・死亡率のデータを冷静に分析し、直近の段階での分析が詳しい。このレポーターならではの専門的なレポートの継続を期待したい。

「利用者の知らぬ間に大きく変質 介護保険はなぜ崩壊するのか?」(新田進二)は、ちょっと衝撃である。気になる方は詳読されたい。

◆日大疑惑は検察VS警察の覇権抗争に発展か?

「疑惑まみれの日本大学と検察の攻防」(青山みつお)は、日大附属病院の背任事件にかかる、安倍晋三の関与をさぐっている。青山のレポートによれば、日大の闇カネが錦秋会グループ(大阪の医療法人)に流れ、そこから政治家に流れた可能性があるという。そして検察独自の動機として、黒川弘務検事長の定年延長を画策した、安倍晋三がターゲットだという。

そのいっぽうで、山口敬之(安倍官邸の御用物書き)のレイプ事件を隠ぺい(逮捕中止)した中村格が、警察庁長官に就任している。こちらは安倍の肝入りの人事ではないかと考えられる。したがって日大疑惑は、検察と警察の権力抗争という様相を呈してくる。その中村格については、西道弘(元公安・現イスラム教徒)の連載に詳しい。この筋でのうごきに注目したい。

◆麻生太郎の中東地下水脈

「疑史倭人伝」(佐藤雅彦)は「麻生太郎のイスラム国との腐れ縁」である。なんと、麻生セメント(麻生家)がイスラム国と、本業をつうじて密接な関係にあるというのだ。すなわち、フランスの多国籍セメント企業・ラファルジェの経営に参画し、麻生セメントがイスラム国と共存共栄の関係にあるという事実だ。財閥政治家の本体に、日本ではなくフランス司法当局のメスが入る可能性がある。注目したい。

◆記録されるべき事件

シリーズ「日本の冤罪」(尾崎美代子)は、築地公妨でっち上げ事件である。この事件はテレビの報道特集でも紹介され、警察の現場捜査の恣意性、トンデモない実態を国民が知る契機となった。女性警察官の虚偽通報からはじまり、検事のこれまた恣意的な自白強要(起訴猶予と引き換えの同意)であった。そして国賠訴訟へと発展し、警察の無法を満天下に示すことになる。国賠訴訟という、国民的な利益を知らしめたのも、大きな成果といえよう。こうした事例は、国民の法的権利を担保するスタンダードとして、何度も語られるべきであろう。

◆自衛隊への国民的理解を策する警備出動?

本通信でも明らかにしてきたが、東京オリンピック・パラリンピックへの自衛隊動員問題(警備出動)である。

自衛隊法違反の警備事実が指摘される「東京オリ・パラ後も続く安全・安心の国民監視体制」(足立昌勝)をお読みいただきたい。

かつて、自衛隊は平和憲法の異端児ともいうべき、戦後社会の日陰者だった。それがいつの間にか、国民的な人気職種になりつつあるという。あいかわらず人員不足は変わらないが、自分はならないまでも憧れの職業。愛すべき自衛隊というイメージが定着してきた。軍隊であることを否定しつつも、世界有数の軍事力を誇り、災害救援力では相当の力量があるという。ならば、国会をつうじた国民的な議論を、たとえば災害救助任務の拡大や警備出動の可否として、議論すべきときではないか。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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