環境汚染について、韓国は「日本が世界の海と空を汚している」と名指しで批判を繰り返している。地理的に中国から当然、PM2.5という大気汚染をかぶるのだが、ソウル市は、「大気汚染は中国のせい」だということを頑なに隠している。ソウル市に発表では、この冬(13年11月)にpm10の濃度が、ここ10年で最多となった。
韓国では、大気汚染を「中国のせいだ」とする風潮に、さまざまな論客が「中国のせいではない」と次から次へと論文を雑誌やネットで書き散らしてきた。
たとえば、予防医学が専門で、亜州大学(京都道水原市)教授の張裁然氏は環境問題を考えるシンポジウムで、とうとうと語った。
「国内で観測されるスモッグの30%から50%はたしかに中国から入ったものですが、ソウル市で発生したのは、21~27%、仁川、京畿道などでも発生したのも25~26%にものぼります。韓国の大気汚染を『中国発』と表現するのは過剰な責任 転嫁で、大気汚染の改善と国民の健康の保護に悪影響を与えかねません」
それでも中国の工場地帯で発生した汚染大気と、韓国国内の汚染大気を比較したデータを国民に公開してこなかった。これこそ中国におもねってきた国をあげての隠蔽である。
韓国の環境部はようやく国民からの追及に重い腰をあげて、今年に入り、民間学者の研究結果を引用して、中国発の粒子状物質が韓半島のスモッグに及ぼす影響が30~50%程度だと明らかにした。これにより国民は怒り心頭になる。
事実として、ソウルなど韓半島(朝鮮半島)の粒子状物質の汚染がどんどん深刻化していることを政府レベルで認めたのだ。
「子供の絵を見ると、空が黄色くなっているときもある。これこそ、大気の汚れを敏感に感じとっている証拠でしょう」と現地では指摘されている。
昨年のソウル市の粒子状物質の年平均汚染度は6年ぶりに悪化した。今年に入って4月までにソウルの粒子状物質の平均汚染度もやはり1立方メートルあたり59マイクログラムで、昨年同期の55マイクログラムよりも悪化した。2004年から10年間、首都圏の大気改善のために投資を続けてきたにもかかわらず、むしろますます悪化している。韓国では、今すぐにでも汚染対策が必要で、手を打たないとならない状況だ。
「大気汚染は日本のせい」としてきた世論が現在、当然のごとく揺らぎつつある。その証拠に韓国メディアは大気汚染について報道が激減してきた。
さて、70年~80年代にかけて韓国は急速に工業化が進んできたが,ここにきて河川の汚染に拍車がかかっており、健康被害も指摘され始めた。とくに南西部の全羅北道は、付近の水源である龍譚湖の水質汚染、畜産業からの廃棄物による益山川、万頃江などの主要な河川の汚染が指摘されている。
「インフラの整備が整わないまま時間がすぎたので、その弊害でしょう。環境保護よりも経済優先の方針がボディブローのように効いてきた」と在韓の日本人は言う。今年の3月、韓国の朴大統領は、中国の政府に「国民からの突き上げが強いから大気汚染について協議したい」と泣きを入れたとされる。
今年の4月、この結果を受けて朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は北京を訪問して王安順・北京市長と合意文に署名した。合意内容は▼大気汚染防止のための両都市の政策・技術・情報・人的交流と協力▼ソウル・北京統合委員会内に環境チーム新設▼ソウル・北京が主導する北東アジア大気の質改善フォーラム共同開催など大きく3種類だ。ソウルと北京はまずCNG(天然ガス)バスの普及、公共車両の媒煙低減装置の装着、低NOx(ノックス)バーナー普及、道路粉じん吸入車両の試験運行を共同推進することにしたという。ソウル市関係者は「北京が大気の質に関して外国の都市と合意文を発表したのは今回が初めて」と話した。
それにしても遅きに失した感がある。この十年にわたって「大気汚染は日本のせい」としてきた韓国内のメディアは、どう責任をとるのか。ぜひ朴に聞いてみたいものだ。
(鹿砦丸)