朝の通勤ラッシュの電車でのことだ。既に乗車率200%近いだろうというぎゅうぎゅうの状態で、停車駅からさらに人が乗ってくる。身動きも出来ないまま奥へと押し込まれる中、脇にいた50歳前後と思われるおばちゃんが、私の体に何度もひじ打ちをしてくる。

体を密着されるのがよほど嫌だったのかもしれないが、ひじ打ちされたところでこちらも身動きが取れないのだからどうしようもない。こちらとて、好き好んでおばちゃんと身体を密着させたいとも思わないのだが、通勤ラッシュの電車なのだから仕方ない。あまりにしつこくひじ打ちをしてくるので、カバンをずらして間に挟んだのだが、電車を降りるまでひじ打ちはずっと続いた。ラッシュの電車なんて誰だって不快なのだ。嫌ならラッシュの電車など乗るべきではない。

モバイル端末の運営会社に在籍しているのだが、出社するとクレームの電話がかかってきた。私の部署は営業でも販売でもないので、客から電話がかかってくること自体、間違い電話だ。しかし電話の相手は激高していて担当部署に案内しようにもまともに話を聞いてくれない。

話を聞いてみると、急に動かなくなった、不良品だ返品しろというものだった。放っておくわけにもいかないので返品してもらうことになった。後日届いた端末に異常は見つからず、単に客の操作ミスでロックがかかってしまったようだ。解除ボタンを押すだけですぐ元通りになったので、その事を電話で伝えたら「機械がおかしいに決まっている。さっさと返金しろ」の一点張りで埒が明かない。いつまでも一人のクレーマーに対応している余裕も無いので、仕方なく返金することになった。ゴネ得というものは、子供の頃より大人になってからの方が見掛ける機会が多い。

遅い時間に仕事が終わり、自炊する元気も無かったので近所の松屋に入った。食券を買って席に座っても店員が食券を取りに来ない。見ると、奥で相撲取りのような体格の男が、何やら店員に対して怒っている。「牛丼を食べたら舌をヤケドしたので金返せ」とか言っている。

個人的には、300円足らずの牛丼にケチ付ける気にもならない。その男は、言っていることもおかしいが、目つきもおかしい。この話を後日知人にしたところ、安い飲食店ではそういったクレーマーが多いらしい。適当な理由で因縁を付けて、お詫びの金券を受け取るまで帰らないのだそうだ。そうやってただ食いをして店を回っているのだとか。横幅が人の3倍はあるあの体は、ただ食いの賜物だったのか。

子供の教育問題を考える時、親だの学校だのに責任を問うのは簡単だが、大人の再教育はどこですればいいのだろう。

(戸次義継)