ASKA逮捕の続報が世間を賑わせている。確かに、この事件は周辺を大きく揺るがせている。
「グループとしては正直、もう修復は不可能に近い状態です。どちらかというとCHAGEがASKAの態度に怒っている感じで…原因?それはちょっと…」
オフレコで記者に話した事務所関係者も困惑の表情で、この3か月後にはデュオとしての活動を無期限休止と発表した。妻も仲間もファンも困惑させた背景には、ASKAの深刻な薬物中毒があったのだろう。

遡ればASKAの異変は6年前、福岡でのソロコンサートでファンが目の当たりにしている。交響楽団をバックに歌うシンフォニックコンサートで、1曲目の「Birth」からファンがざわめいた。ASKAの口は開いているが声が聞こえてこなかったのだ。

「聞こえない!」
音響の不調かという不満の声が聞かれる中、3曲目「迷宮のReplicant」を歌うとその原因が音響機器ではなくASKA本人にあったことが伝わる。低音は聞こえるが高音が出ていない。ずっと歌ってきた持ち歌にもかかわらず素人がカラオケで練習しているようなレベルだった。ASKA自身、この不調は本番まで自覚がなかったようで曲が終わると挨拶もなく「おなかが減っているのかな」と首を傾げた。

しかし、その調子はさらにひどくなり、バックの演奏がなくソロで歌う場面になるとそれは顕著。声が出ていないだけではない。ファンが双眼鏡で見たASKAは脂汗をかき、表情が硬直していた。曲の途中、ASKAは歌そっちのけでペットボトルを手にとりゴクゴクと飲み始めた。

ヒット曲「僕はこの瞳で嘘をつく」では高温パートで無言になる有様で、そのうちに手からペットボトルが離れなくなった。場内のファンは聞き惚れるどころか「金返せ」とヤジを飛ばす始末。さすがにこのまま終われず、曲目が終了してもASKAは再登場し「今日のチケット捨てないでください。日程は分からないけど、もう一度やらせてください」と再演を約束。経費の高いオーケストラ同伴のコンサートだったが、そうでも言わないと収まりがつかなかったのだ。同時に翌年CHAGE&ASKA30周年のツアーは方向性の違いから行われないという発表もあったが、実はこのときCHAGEとの殴り合いのケンカがあったという話も関係者間で噂になっていた。

ASKAを逮捕に踏み切らせたのは他でもない妻だ。捜査陣が自宅に踏み込んで薬物を押収しても元アナウンサーである洋子夫人の事情聴取は行なわれた様子がなかった。昨年末、音楽活動やバーの経営をしていた長女と長男が急に活動を停止して姿を消したのもカウントダウンを知っていたからだ。ASKAと20年来の付き合いがある音楽関係者は「薬物のことは一切、聞いてなかったけど、洋子さんがASKAのことで相当に悩んでいた話は聞こえていた。洋子さんは相棒のCHAGEにも相談していた」という。

夫人は薬物常用者となったASKAの変化を一部始終、見てきたのだろう。84年に地方局のアナウンサーだったところラジオ番組で知り合って交際、3年後に結婚。一時、ロンドン在住だった頃も同行しており、人付き合いが得意ではない夫の活動を陰で支えてきた。そんな夫人が知人に漏らした話がある。
「夫が歯磨きをする姿を見ただけでも様子が違っていた。口から泡を飛ばしながら“歯がまた白くなった! どんどん若返っているみたいだ”と叫んでいた」
実は逮捕は、ASKAにとって僥倖であったかもしれない。癈人になるよりは、獄舎からやり直したほうが彼の人生のためではないだろうか。

(鈴木雅久)