2月12日、広島中区の上幟町公園で呉市の男性会社員の呼び掛けで炊き出しが行われました。
今回が2021年12月26日、2022年1月22日に続き、3回目です。この会社員はどこかの団体に所属しているというわけでもないそうです。定期的に転勤がある全国規模の企業に勤務し、いまは、広島県内の事業所に配属されているということです。お会いしてみると、本当にどこにでもいそうな、フツーの会社員の好青年です。
「なんで炊き出しをするのかと問われると特に理由はないんだよな
別に慈善活動とも思っていないし
なんかとてもやりたい気持ちになっただけ 衝動
続けるけどね」
「広島で炊き出しやります
ホームレスのおっちゃんたちにカレー作って振る舞う 主催は自分
出来ることをやる
止まってられん 寒いけどあったかいもん食べて冬乗り越えてもらいたい
仲間が少ない 誰でも手伝ってほしい
できれば定期的にやりたい」(いずれも本人のTwitterより)
◆人数が少なくてもやり切る気迫
こうした、ご本人の気迫をTwitterだけでも十分に感じた筆者。今回は、はじめてお手伝いさせていただきました。
本日のメニューは中華丼です。前回、前々回はカレーライスだったそうです。調理は広島市でも(平和公園から見ても)南部に位置する中区舟入のプロテスタント教会の台所を貸し出していただきました。
同教会の牧師は「広島夜回りの会」でホームレス支援を継続されています。
この日、10時に教会に集合したのですが、最初は主催者の男性会社員とわたししかおらず、あまりの人数の少なさにびっくりしました。しかし、「前回も、ほとんど俺一人で料理はしたのでなんとかなるでしょう。」という彼の気迫に気を取り直して、台所に向かいました。
前回、前々回はフードバンクから食材の提供を受けていましたが、「俺も仕事が忙しくてお願いにいけなかったので」(男性会社員)、1万円で彼が買った食材を使うことになりました。50人前を想定。白菜は2個相当、人参は4,5本、また、豚肉やシーフードの冷凍パック、そして米は4kgを使いました。
男性会社員の他に、男性会社員の同僚の女性もあらわれ、最初は3人で食材の白菜や人参などを切っていました。
次第に、生活困窮者の相談活動に従事している団体職員、筆者同様、ネットで情報を得た県内の大学教員、医療従事者らも現れ、食材を大きな鍋に放り込んで炒めるなど、作業を進めました。
途中、炊き出しに必要なビニール手袋(感染対策)やごま油などが足りないことに気づき、男性会社員が近所の百均に買い出しに行くなど、慌ただしい状況もありましたが、無事に12時半には、中華丼の具も出来上がり、御飯も炊き上がりました。
◆ホームレス数の変化はないが、在宅の困窮者は激増
調理が終わると我々は会場の上幟町公園に移動しました。ここでは、さらに、広島市内の主婦らもスタッフに合流。この主婦は、「食品だけでなく生活必需品も含め、リサイクルによる困窮者支援」の活動をネットでされています。
中華丼とミネラルウォーター、そしてお菓子をくばりました。既に「広島夜回りの会」などを通じて情報を得ていた人々20人あまりが並ばれました。
中高年の男性が多いのですが、一方で若い男性やかなり年配の女性も並ばれていました。
団体職員は、前回もこの男性会社員主催の炊き出しにも参加しています。学生時代から生活困窮者支援の活動に従事しており、実態に詳しい方です。彼によると広島ではコロナ災害発生後もホームレスの数自体の増減はあまりないようです。
しかし、在宅の生活困窮者の数は急増しています。彼の悩みは、生活困窮者に生活保護受給を薦めても、しぶる方がおおいことだそうです。貸付中心の社会福祉協議会に頼ってこられる方が多いのです。
彼は「多くの人が貸付ではにっちもさっちもいかない状況だ。生活保護は恥ではないと意識を変えてほしい。」とおっしゃいました。
また、ホームレスの方については、「つながりを続けていくことが大事。」ともおっしゃいました。「夜回りの会」でも、2020年にコロナ災害がスタートした最初の一ヶ月のみ活動は休んだがその後はずっと活動を続けているそうです。
会社員主催の炊き出しは団体ではなく、やりたいと立ち上がった個人に、既存の活動団体も協力し、また、筆者のようなネットで情報を得た人間も参加する形で行われています。
男性会社員は、今後も、毎月第二土曜日に炊き出しを行う意向です。
◆あの頃と変わっていない生存権を守らぬ政府に憤り──炊き出しが「持続」するようでは困る
「あの頃と変わっていないじゃないか?!全然、生存権を守る政府になっていないじゃないか?!」
これが、最近、筆者がいきどおっていることです。
筆者は、2008年~2009年のリーマンショック時にも、岡山や名古屋など県外でも年末年始の炊き出しなどに参加させていただいています。
すでにあのころから、貧困問題は広がっていたのです。すでにギリギリの生活を強いられていたひとたちが、リーマンショックで路上に投げ出された。あの時の教訓をいかしてほしい、と選ばれたのが民主党政権だったはず。しかし、民主党は自滅してしまい、安倍晋三さんが再登板。当時は、たまたま、団塊世代の労働人口からの撤退で若い人の就職率が改善した。それに便乗して、安倍さんは身内ばかりを優遇し、生存権を守る政府の機能の強化はなされない。こうした問題は不可視化されてしまいました。だが、実際には、コロナ前でもじわりじわりと人々の実質所得はさがりつづけた。政府の怠慢をやむなく補完する形で、「子ども食堂」も広がったわけです。
そこへ、コロナが襲いかかったのです。前回、すなわち、リーマンショックのときの教訓を日本がいかしていたのなら、こんな状態になってはいません。子ども食堂にせよ、炊き出しにせよ、こんなものが「持続する」ようでは困ります。生存権を石にかじりついても守る気概を政治・行政はもたねばならぬ。このことも強調させていただきます。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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