初防衛に成功した洋輔YAMATOは上位王座WBCムエタイ日本王座挑戦を希望

波賀宙也がローキックでペットーンを苦しめるも“接戦の厚い壁”に阻まれる。

ルイも積極的展開を見せながら、ザ・スター・シッチョーの巧みさにポイントを持っていかれた敗戦。

洋輔YAMATOがしぶとい野津良太をTKOに下しNJKF王座初防衛。

シングルマザー、NA☆NAが昨年10月に引分けたIMARIと接戦の末、王座獲得。

嵐が吏亜夢の長身からくる距離感で苦戦も終了間近、パンチの打ち合いに持ち込みノックダウンを奪う執念の勝利。

この日、ノンタイトル戦で杉山空と引分けたチャンピオンの優心と、挑戦権を奪った嵐が並んでタイトルマッチへのコメントを述べるも、嵐の力強さが優ったアピール。

◎NJKF 2022.2nd / 6月5日(日)後楽園ホール17:30~21:50
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF) / 認定:IBFムエタイ、NJKF

《プロ公式戦10試合》

◆第10試合 IBムエタイF世界ジュニアフェザー級タイトルマッチ 5回戦

Champion.波賀宙也(立川KBA/55.3kg)vs ペットーン・ギャッソンリット(タイ/55.33kg)
勝者:ペットーン・ギャッソンリット / 判定0-3
主審:スントーン・シーブラー(タイ)
副審:サノン(タイ)48-49. ソムサック(タイ)48-49. 宮本和俊(日本)48-49

ペットーンのミドルキックと波賀宙也のパンチが交錯

ペットーンは、タイ国ノンタブリー県ジットムアンノンスタジアム(オートーコー市場)認定フェザー級チャンピオン。オートーコー市場はタイ農業共同組合生鮮市場の一つ。

リングネームは「ペットング・ゲッソンリット」という主催者発表ではあるが、正式に近い発音は「ペットーン・ギャッソンリッ」となる。

ペントーンは前日計量が55.6kgで、少しずつ試しながら4度目の計量で55.3kgのリミットまで落とした様子。

入国から計量時まで秤に乗る機会が無ければ、よくあるパターンで、わずかな差の減量影響は無いだろう。

序盤は様子見も波賀宙也はローキック中心に攻める。ペットーンも序盤は軽く蹴る流れで、第3ラウンドから距離を詰めて圧力掛けて出て来た。

波賀宙也も凌いで蹴りの攻防。どちらが強く多く攻めて主導権を奪うかの展開。

ペットーンの蹴りは勢い付き、波賀もローキック中心にかなり蹴り込んで効いた様子もあったが、ペットーン勢いを止めることは難しかった。

それでも全体的に上回ったように見える波賀の気合入った頑張りも採点はペットーンに流れていた。

波賀は惜しくも防衛成らず王座陥落。

波賀宙也のローキックとペットーンのミドルキックが交錯

◆第9試合 S-1レディース・スーパーフライ級 世界王座決定戦 5回戦(2分制)

S-1ジャパン同級覇者.ルイ(=和田類/クラミツ/52.1kg) 
      vs
ザ・スター・シッチョー(元・WPMF世界アトム級C/タイ/51.85kg)
勝者:ザ・スター・シッチョー / 判定0-3
主審:サノン・アウムイム(タイ)
副審:ソムサック(タイ)48-49. スントーン(タイ)46-50. 中山宏美(日本)48-50

ルイが積極的に蹴って出て、シッチョーが蹴り返す展開も、前進の勢いはルイが目立つ。しかし、シッチョーは蹴りの的確さと首相撲の展開では優位に立ち、大差を付ける採点もある中、判定勝利でタイへS-1世界王座を持ち帰ることになった。

シッチョーの左ミドルキックがルイにヒット

王座獲得に成功したタイ陣営、ペントーンとシッチョーが並ぶ

◆第8試合 NJKFウェルター級タイトルマッチ 5回戦

Champion.洋輔YAMATO(大和/66.5kg)
      vs
挑戦者同級1位.野津良太(E.S.G/66.4kg)
勝者:洋輔YAMATO / TKO 5R 0:27
主審:竹村光一

開始からローキック中心に的確なヒットを続けていた洋輔YAMATO。野津良太はスピードで劣るも、予想通り第3ラウンドにはしぶとく勢い増して蹴って出てきた。

第4ラウンドには洋輔が野津をコーナーに詰めたところでの接近戦で、偶然のバッティングで野津が左眉下を切る。

ドクターチェック後、洋輔のパンチ連打からの蹴りで野津がバランス崩してスリップ気味のノックダウン。すぐに立ち上がられずノックダウンとなって、最終ラウンドも野津が蹴りに出たところがバランス崩して倒れ、立ち上がりが遅い為のノックダウンを宣せられ、更に蹴りを受けてスリップ気味に倒れると2度目のノックダウン扱いでノーカウントのレフェリーストップとなったが、洋輔のローキック(カーフ)によるダメージがあったと思われる。

洋輔YAMATOが野津良太にローキックをヒット、スピードある攻めを続けた

◆第7試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級王座決定戦3回戦

2位.IMARI(LEGEND/51.5kg)vs 6位.NA☆NA(エス/52.1kg)
勝者:NA☆NA / 判定0-2
主審:宮本和俊
副審:和田28-30. 中山28-29. 竹村29-29

両者は昨年10月31日の「DUEL.22」で対戦し三者三様の引分け、今回は前進の勢い強かったNANA。結構パンチで打ち合い、IMARIは表情冴えなく圧されるシーンが多くNANAが判定勝利で王座獲得。

NANAが活き活きしたファイトでミドルキックをIMARIにヒットさせる

◆第6試合 62.0kg契約3回戦

健太(元・WBCムエタイ日本ウェルター級C/E.S.G/61.8kg) 
vs
琢磨(元・WBCムエタイ日本スーパーフェザー級C/東京町田金子/61.9kg)
勝者:琢磨 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:竹村28-30. 中山28-30. 宮本28-30

前回は色白だった健太がまた以前のような日焼けした褐色に戻って来た。初回からの探り合いはパンチとローキックの駆け引き。落ち着いたベテラン同士の攻防は後半にやや琢磨のパンチヒットが目立ち判定勝利を導く。

100戦超えの健太に飛びヒザ蹴りで攻める琢磨

◆第5試合 56.0kg契約3回戦

TAKAYUKI(=金子貴幸/REV/55.75kg) 
vs
WMC日本バンタム級チャンピオン.稔之晟(TSK Japan/55.7kg)
勝者:稔之晟 / 判定0-3
主審:和田良覚
副審:竹村28-30. 少白竜29-30. 宮本27-30

蹴りの攻防から稔之晟(=じんのじょう)の前蹴りでボディーが効いていたTAKAYUKIは下がり気味で攻めの勢いが足りない展開。稔之晟は組み合ってからのヒザ蹴りもあり、勢い増した判定勝利を導く。

◆第4試合 51.0kg契約3回戦

NJKFフライ級チャンピオン.優心(京都野口/51.0kg)vs 杉山空(HEAT/50.55kg)
引分け 1-0
主審:中山宏美
副審:和田29-29. 少白竜30-29. 宮本29-29

パンチとローキック中心から多彩に蹴り合うのはやや優心が攻勢も、接近戦で杉山が組み合ってくると決定打の無い展開が続き引分け。

◆第3試合 NJKFフライ級挑戦者決定戦3回戦

2位.吏亜夢(ZERO/50.7kg)vs 3位.嵐(キング/50.55kg)
勝者:嵐 / 判定0-3
主審:宮本和俊
副審:竹村27-29. 少白竜28-29. 中山27-29

長身の吏亜夢が手足の長さと距離感を掴んで蹴りのヒットで優位に進めたが、ペース掴めぬ嵐もパンチとローキックでチャンスを待つ。最終ラウンド終了近い残り時間でパンチの打ち合いに導いた嵐が強烈な連打でノックダウンを奪って勝利を決定付けた。

次期挑戦者となった嵐(右)と2度目の防衛戦となる優心(左)がツーショット

◆第2試合 ウェルター級3回戦

NJKFウェルター級6位.宗方888(キング/66.5kg)vs 悠YAMATO(大和/66.6kg)
勝者:悠YAMATO / 判定0-2 (29-30. 29-29. 28-29)

◆プロ第1試合 女子(ミネルヴァ)57.0kg契約3回戦(2分制)

北川柚(京都野口/56.5 kg)vs ERIKAスリーツリー(DAIKEN THREE TREE/57.0kg)
勝者:北川柚 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-27)

◆オープニングファイト アマチュア-54kg級2回戦(90秒制)

辺成玉(鍛錬会/53.0kg)vs 高橋ひかる(GRES 8Mile/53.8kg)
勝者:辺成玉 / 判定2-0 (20-29. 20-18. 20-18)

戦うシングルマザーとして女子(ミネルヴァ)チャンピオンと成ったNANA

《取材戦記》

4つのタイトルマッチ、歴史あるものから最近派生したものまで、それぞれの運命がありました。IBFムエタイ、S-1、NJKF、ミネルヴァ。今回はタイのIBF本部から審判団が3名来日。女子S-1世界戦を含め2試合の審判に加わりました。やっぱり本場から公式審判やスーパーバイザー(今回は兼・審判)が来日するとタイトルマッチの権威が増すものです。この2日後に行われた井上尚弥選手の世界3団体統一戦も、より崇高な権威を感じました。

ペントーンはリングを下り、バックステージでのインタビューの後、控室へ向かう階段を下りる際、脚を引きずって歩いた。ペットーンは顔色変えずに戦っていたが、波賀がもう少し蹴っていれば倒れていたかもしれない。波賀は「またチャンスがあれば挑戦したいです。」と応えた。

2019年9月23日の王座決定戦では波賀宙也がトンサヤーム・ギャッソンリットに判定2-1勝利で王座獲得。49-48が二者と逆に一者と分かれた形で、今回は49-48が三者ともペットーンに流れた。毎度言っているが、この1点差が越えられない本場ムエタイ王座の大きな壁である。

賭けが行われる活気あるタイのスタジアムと、今回の最終試合で観衆も少なくなっていた後楽園ホールでは同じ展開を見せても、採点の流れはまた違っていたかもしれないだろう。

女子試合のルイとザ・スター・シッチョーの試合前のワイクルー(戦いの舞い)は綺麗な舞いだった。雑な踊りは女子にも男子にも居るものだが、波賀宙也も毎度の通り、綺麗に長く舞っていました。

次回のNJKF 興行は7月3日に新宿のGENスポーツパレスで「DUEL.24」が開催、「NJKF 2022.3rd」は9月25日(日)に後楽園ホールで開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年7月号