前チャンピオン(第7代)の西村清吾(TEAM KOK)が王座返上による今回の王座決定戦は、釼田昌弘が田村聖を苦しめ、僅差判定で下すと番狂わせだけに衝撃的メインイベントの終了。これでテツジムからウェルター級の蛇鬼将矢と並んで現役2人目のチャンピオン誕生となった。

笹谷淳は打たれない巧みな試合運びも大きな山場を迎えることなくドローに終わる。
野村怜央は判定勝利も額を切られて終わる辛勝。

◎喝采シリーズ Vol.3 / 6月18日(土)後楽園ホール17:33~20:37
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第12試合 第8代NKBミドル級王座決定戦 5回戦

チャンピオンベルトとお米(粒すけ)10kg獲得の釼田昌弘

1位.田村聖(拳心館/72.45kg/1988.7.23新潟県出身)24戦13勝(10KO)10敗1分
      vs
4位.釼田昌弘(テツ/72.55kg/1989.10.31鹿児島県出身)19戦6勝10敗3分
勝者:釼田昌弘 / 判定1-2
主審:前田仁
副審:川上48-49. 鈴木48-49. 加賀見50-48

両者は2018年4月21日に対戦し、田村聖が判定勝利(3回戦制)しているが、今回の大方の予想もチャンピオン(第6代)経験者の田村聖有利だった。

組み合ったところから崩しに入ると柔道や総合格闘技経験ある釼田昌弘が上手いが、これもリズムを作る切っ掛けとなったか。釼田はローキックで田村を転ばすことも多かったが、カーフと言われる脹脛を狙う低い位置や足を掛けてバランスを崩す流れでもあった。田村聖は第2ラウンドにローキックで勢い強めるが主導権奪う流れは作れず。

釼田に「ミドルを蹴れ!」というテツ会長が怒鳴るもミドルキックは少なく、ボディーへの前蹴りと時折ハイキックも見せ、田村の前進を弱める効果が見られた。

釼田のローキックが効いているのか、田村は蹴りに行きながら自らバランス崩す場面もあり。第3ラウンド以降、釼田はヘロヘロでも踏ん張って、2-1ながら釼田昌弘の判定勝利。

ボディー攻めが効果的だった釼田昌弘の前蹴り

釼田昌弘の右ハイキックと田村聖の右ストレートが交錯

◆第11試合 ウェルター級3回戦

NKBウェルター級3位.笹谷淳(team COMRADE/66.4kg)
      vs
天雷しゅんすけ(SLACK/64.95kg)
引分け 1-0
主審:川上伸
副審:高谷29-29. 鈴木29-28. 前田29-29

初回早々は天雷しゅんすけの右ストレートから連打で笹谷をロープ際に詰めるも、天雷はパンチはあるが蹴りが少なく、笹谷は出方を見極めて、パンチ連打と蹴りから組み合っていく。

終盤に天雷はパンチで前進し、笹谷をロープ際にやや後退されたが、どちらも主導権を奪う攻勢は無く終了。

パンチで攻めれば笹谷淳が有利と見えるが攻勢に導けず

勝利を掴むも額を切られての終了は無念さ残る野村怜央

◆第10試合 ライト級3回戦

NKBライト級3位.野村怜央(TEAM KOK/60.9kg)vs KEIGO(BIG MOOSE/60.8kg)

勝者:野村怜央 / 判定2-0
主審:加賀見淳
副審:高谷30-30. 川上30-29. 前田30-29

KEIGOが開始早々飛んでのチョップ気味のパンチ打ち下ろし。

蹴りも右ストレートも伸びがいい。

野村はややスロースターター気味でも冷静に様子を見て蹴りとパンチコンビネーションで返して、ペースを掴んだ流れも最終残り5秒でKEIGOが飛びヒザ蹴り。

ヒットはしなかったと見えたが、試合終了ゴングが鳴った後、野村の額から出血が見られ、ヒザ蹴りが掠ったかと思われる。

判定は僅差だが野村怜央の勝利。

カットは終了間際。鮮血が流れたのは終了ゴング後。

すぐの流血ではない、やや時間差があった。

カットさせたことを優勢と抗議しても覆ることは無いが、残念さは残るKEIGO陣営だった。

コンビネーションブローで野村怜央が優った展開は僅差ながら勝利を掴む

◆第9試合 59.0kg契約3回戦

JKIフェザー級7位.都築憲一郎(エムトーン/58.9kg)
      vs
NKBフェザー級5位.鎌田政興(ケーアクティブ/58.2kg)
引分け 三者三様
主審:鈴木義和
副審:加賀見29-29. 前田29-30. 川上30-29

両者のパンチと蹴りのコンビネーションで後に引かない展開も強打が無く、どちらも主導権を奪ったとは言えない、差が付け難い三者三様に分かれた。

都築憲一郎の前蹴りが鎌田政興の突進を止める、互角の攻防は引分け

◆第8試合 フェザー級3回戦

七海貴哉(G-1 TEAM TAKAGI/56.8kg)vs 半澤信也(Team arco iris/57.15kg)
勝者:七海貴哉(赤) / KO 1R 1:44
主審:高谷秀幸

七海貴哉がパンチの距離で右ストレートで3度のノックダウンを奪ってノックアウト勝利。半澤信也は打ち合いを避けた方がよかっただろう。

七海貴哉がカウンターパンチで半澤信也を3度倒す

Mickyがヒザ蹴りで圧倒していく展開で荻原愛を倒した

◆第7試合 女子バンタム級3回戦(2分制)

Micky(PIRIKA TP/53.35kg)vs 荻原愛(ワンサイド/52.95kg)
勝者:Micky(赤) / TKO 3R 0:33

Mickyが萩原愛を捕まえ首相撲からヒザ蹴りをヒットしていく。第2ラウンドには何度かヒザ蹴り連打を受けたこところでスタンディングダウンとなった荻原。第3ラウンドにもMickyがヒザ蹴り連打から崩し倒すとダメージを見たレフェリーが試合ストップし、MickyのTKO勝利となった。

◆第6試合 ウェルター級3回戦

田村大海(拳心館/66.15kg)vs 浦辺俊也(Team arco iris/66.1kg)
勝者:田村大海(赤) / TKO 2R 1:56

田村大海は田村聖の弟。パンチが上手く、2度目のノックダウンとなった際の、一発の右ストレートヒットでレフェリーがカウント中にストップし、田村大海のTKO勝利。

◆第5試合 ライト級3回戦

近藤豊仁(STS/62.05kg)vs 蘭賀大介(ケーアクティブ/62.45kg)
勝者:蘭賀大介(青) / TKO 2R 1:19 / カウント中のレフェリーストップ

◆第4試合 バンタム級3回戦
シャーク・ハタ(=秦文也/テツ/52.5kg)vs 笠原秋澄(ワンサイド/53.05kg)
勝者:シャーク・ハタ(赤) / 判定3-0 (30-28. 30-29. 30-29)

田村大海が冷静に攻め、右ストレートをヒットさせる

◆第3試合 フェザー級3回戦

志村龍一(拳心館/56.6kg)vs 古木誠也(G-1 TEAM TAKAGI/56.85kg)
勝者:古木誠也(青) / KO 1R 0:47 / 3ノックダウン

◆第2試合 56.0kg契約3回戦

TAKUMI(Bushi-Doo/54.3kg)vs 安河内秀哉(RIKIX/55.85kg)
勝者:安河内秀哉(青) / KO 3R 2:37 / 3ノックダウン

◆第1試合 バンタム級3回戦

山本藍斗(GET OVER/52.55kg)vs 橋本悠正(KATANA/53.2kg)
引分け 1-0 (29-28. 30-30. 29-29)

《取材戦記》

田村聖は元・NKBミドル級チャンピオンで、PRIMA GOLD杯ミドル級8人トーナメント(開催2019.4~2020.2)優勝。この経験が大差を付けて勝つだろうという大方の予想が外れた。番狂わせと言ったら釼田昌弘に対して失礼かもしれないが、柔道四段と総合格闘技経験がある釼田が、5回戦経験は少ない中、後半ヘロヘロになりながら踏ん張った。

チャンピオンベルトを腰に巻き、勝利者賞として贈られた今井興業ライスセンターのお米10kgを抱えて控室に戻って来た釼田昌弘は勝因について、「ただ気持ちだけでやっていました。内容的には酷かったですけど、ミドルキックと前蹴りでボディー攻めが効いたかな、ミドルは少なくて怒られたけど!」

これからチャンピオンとしてNKBグループのメインイベンターを務めるにはちょっと心許無い存在であるが、新チャンピオンは新たな好カード誕生に繋がる。自覚が芽生え、ここから化ける選手も多いのも過去には多い事実。

釼田昌弘も他団体交流や、現在の有名どころのビッグイベントプロモーション興行出場目指して結果を残さねばならない。

野村怜央は試合終了3秒前にカットされた様子で、KEIGO陣営にとっては悔やまれる結果だったでしょう。傷の具合やヒットしたタイミングと終了ゴングの間(ま)、問題追求すれば判断の難しい裁定ではあります。試合は既定の3ラウンドで終了し、採点集計され野村怜央の僅差2-0判定勝ち。もし再戦が行われるようであれば因縁の面白いカードとなるでしょう。

近年はビッグマッチに於いても有料配信が中心となる時代となりました。視聴者数では翌日の「THE MATCH」に遥かに敵わぬも、今回の興行もツイキャス(twitcasting)にて有料生配信がありました。録画再配信は7月2日まで可能のようです。
日本キックボクシング連盟次回興行は、7月31日(日)に大阪176boxに於いて、NKジム主催の「喝采シリーズvol.4 / Z-Ⅳ Carnival YOUNG FIGHT」が開催予定です(開場13:30 開始14:00)。後楽園ホールでの連盟定期興行予定は10月29日(土)です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」