ヒジ打ち有り、5回戦制への原点回帰へ、プロモーター武田幸三の挑戦!
モトヤスックが豪快な左フックでWMOインターナショナル王座獲得。
馬渡亮太はヒジ打ちの相打ち、ダブルノックダウンとなる衝撃のKO勝利。
麗也JSKはノックダウン喫する勿体無い失点。盛り返すも3回戦では時間が足りない惜しい引分け。
「肘ありって決めてました!」というポスターまで登場した藤原乃愛の存在感。ミドルキックで豪快なTKO勝利。
睦雅はNJKFチャンピオンに攻める圧力で優って判定勝利。ジャパンキック協会の主要メンバーの一角として大きく前進。
◎CHALLENGER.6 / 9月18日(日)後楽園ホール17:30~21:08
主催:Yashioジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
◆第9試合 WMOインターナショナル・スーパーウェルター級王座決定戦 5回戦
モトヤスック(=岡本基康/治政館/2001.9.27埼玉県出身/69.7kg)
vs
ダーンチョン・R・ヨーンムエタイ(タイ/68.7kg)
勝者:モトヤスック / TKO 2R 1:19
主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:椎名利一、シンカーオ、アラビアン長谷川
立会人:ナタポン・ナクシン
モトヤスックは前・JKAウェルター級チャンピオン
ダーンチョンは元・タイ国ブリラム地区フェザー級チャンピオン
初回の蹴り合いは距離とタイミングを計る探り合い。ダーンチョンもスピードとしなやかさある蹴りを返してくる。
第2ラウンドには距離を詰めて出るモトヤスックがローキックとボディーブロー、顔面狙うパンチを試した後、接近戦で左フックを決めてダーンチョンをブッ倒し、カウント中にレフェリーが試合ストップ。本日のMVP賞を獲得。ダーンチョンは担架で運ばれる完全失神TKOであった。
◆第8試合 58kg契約 5回戦
馬渡亮太(治政館 / 2000.1.19 埼玉県出身/58.0kg)vs ガン・エスジム(タイ/57.75kg)
勝者:馬渡亮太 / KO 3R 1:25
主審:少白竜
馬渡亮太はWMOインターナショナル・スーパーバンタム級チャンピオン
ガン・エスジムは元・タイ国ラジャダムナン系フェザー級7位
序盤は馬渡亮太のローキックがやや効いた感じがあったガン・エスジムだったが、第2ラウンドには馬渡が的確な蹴りでやや優勢に立ち、飛びヒザ蹴りでノックダウンを奪った。
ここからガン・エスジムが巻き返しにヒジ打ちで馬渡の額と頭上部をカットし、ドクターチェックを受ける馬渡。
第3ラウンドには接近戦でのヒジ打ちが増えると、両者のヒジ打ちの相打ちでダブルノックダウンとなった壮絶な幕切れ。
馬渡はマットに膝を突く程度の崩れですぐに立ち上がったが、ノックダウンを奪ったという表情も、すぐダブルノックダウンと理解し、ファイティングポーズに構えた。
レフェリーが認め、倒れたままのガンエスジムにカウントを続け、背中から受け身をとれずに倒れるほどダメージあったままテンカウントアウトされ、馬渡のノックアウト勝利となった。
◆第7試合 53.5kg契約3回戦
麗也JSK(=高松麗也/治政館/1995.10.2埼玉県出身/53.5kg)
vs
平松弥(岡山/岡山県出身/53.5kg)
引分け 0-1
主審:松田利彦
副審:和田28-28. 椎名28-28. 少白竜28-29
麗也JSKは元・ISKAインターコンチネンタル・フライ級チャンピオン
平松弥はジャパンキック・イノベーション・フライ級チャンピオン
第1ラウンド、静かな蹴りの立ち上がりからパンチの距離で平松弥の左ストレートでノックダウンを喫した麗也。軽いヒットですぐ立ち上がるが、大きな失点。徐々に盛り返す麗也は圧力があり、平松に余裕が無くなっていく。第3ラウンドには麗也がパンチ中心に前進を強め、平松も必死に打ち合って凌いで終了、麗也が第2~3ラウンドを奪ったと見られる採点は、一度のノックダウンでも喫すれば勝利を掴むことが難しくなる3回戦制の短さがあった。
◆第6試合 女子45.5kg契約3回戦
藤原乃愛(ROCK ON/45.2kg)vs ヌアファー・ソー・ソンタム(タイ/44.9kg)
勝者:藤原乃愛 / TKO 3R 1:10
主審:椎名利一
藤原乃愛は女子(ミネルヴァ)ピン級チャンピオン
ヌアファーは元・タイ国イサーン地区ピン級チャンピオン
しなやかさとスピードある藤原乃愛の蹴りもより強くなった。スアファーもタイ人らしい、しなやかさを持った蹴りで返してくるが、的確差で主導権を奪った藤原乃愛。第2ラウンドにロープ際に追い込んでパンチ連打でスタンディングダウンを奪うと更に前進を強め、第3ラウンドには左ミドルキックでフアファーのボディーにヒットすると、ヌアファーは呻き声を上げて苦しそうに倒れ込み、レフェリーがほぼノーカウントで試合を止める悶絶のTKOとなった。
◆第5試合 61.5kg契約3回戦
NJKFライト級チャンピオン.岩橋伸太郎(エス/ 61.1kg)
vs
JKAライト級1位.睦雅(ビクトリー/ 61.15kg)
勝者:睦雅 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:和田27-30. 松田28-30. 椎名28-30
序盤の両者はローキックからパンチ中心の攻防。ここから睦雅がパンチで主導権を奪い、微差ながら徐々に優っていく。岩橋伸太郎も応戦しアグレッシブな展開を見せるが、睦雅を下がらせるに至らず、睦雅が主導権を維持したまま判定勝利。NJKF同級チャンピオンを圧力で優ったことは今後のタイトル戦にもアピールできたことだろう。
◆第4試合 女子56.0kg契約3回戦
浅井春香(KICK BOX/ 56.0kg)vs 北川柚(京都野口/ 55.5kg)
勝者:浅井春香 / 判定2-0
主審:椎名利一
副審:和田30-28. 松田30-28. 少白竜29-29
浅井春香は女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級チャンピオン
北川柚は同級4位
組み合っての攻防で浅井春香が僅差ながら勝利を導く。
◆第3試合 フェザー級3回戦
JKAフェザー級3位.皆川裕哉(KICK BOX/ 57.0kg)
vs
JKAバンタム級2位.義由亜JSK(治政館/ 56.8kg)
勝者:義由亜JSK / 判定0-2
主審:松田利彦
副審:和田28-29. 椎名28-29. 少白竜29-29
7月に対戦し引分け、この再戦を制したのは義由亜。前回と似た羅枯れで、やや攻勢を維持した義由亜に第3ラウンド終盤にパンチで猛攻掛けた皆川裕哉、今回は1~2ラウンドの失点が響いた流れで、義由亜が辛うじて勝利を拾う。
◆第2試合 ジャパンキック協会ウェルター級王座決定トーナメント3回戦
2位.ダイチ(誠真/ 66.3kg)vs 山内ユウ(ROCK ON/ 66.2kg)
勝者:ダイチ / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:松田30-27. 椎名30-28. 少白竜30-27
来年1月の新春CHALLENGER興行に於いて正哉vs ダイチで王座決定戦。ダイチは「同門でも倒します」と宣言。
◆第1試合 ジャパンキック協会ウェルター級王座決定トーナメント3回戦
3位.正哉(誠真/ 66.0kg)vs 鈴木凱斗(KICK BOX/ 66.5kg)
勝者:正哉 / TKO 2R 1:00 / カウント中のレフェリーストップ
主審:和田良覚
《取材戦記》
モトヤスックはWMOインターナショナル王座獲得より、「ヒジ打ち有り5回戦」へ原点回帰目指す興行の看板を背負った戦いがより大きなインパクトを与えた。
そのモトヤスックは「ヒジ打ち有り、首相撲有りの5ラウンド(制)最強を証明していく」と言い、馬渡亮太は、「ヒジ有りルール、面白くないですか?ヒジ有りじゃないとダメだよ」という二人のマイクアピール。二人とも武田幸三氏と世代は違うが、キックボクシングの神髄思想は同じであろう。この日出場した選手全員が“ヒジ打ち有り”に共感している様子がありました。
前日計量では武田幸三氏が選手の前で、「現状、皆さん御存知のとおり、“ヒジ打ち有り”が圧され気味になっています。ここで、プロモーター含め、代表含め、ジャパンキック協会で大会を盛り上げていこうと必死に頑張っています。選手皆さんの力が最大限発揮される試合の力が頼りになりますので、明日の凄い試合を期待しています。宜しくお願いします!」と熱のこもった御挨拶がありました。
「ヒジ打ち有り、5回戦」は推進派としてよく聞くフレーズだが、今一番熱く訴えるのは武田幸三氏だろう。
武田幸三氏は興行終了後、「モトヤスック、馬渡亮太、麗也の三人とも、自覚をもって、ヒジ有り、首相撲有り、それが最強だと謡ってくれているのは頼もしくて嬉しい。みんな少しずつレベル上がってきているので、自分でハードル上げて行くべきだし、お客様の目も肥えて来るし、自分達の戦いを世界最強という、これが一番なんだという目標があれば、また更に一つ上に挑むことを臨んでくるでしょう。更なる上位を考えれば合格点とは言えないが、今日の興行は盛り上がって良かった。親心としては大満足です。皆、本当に頑張ってくれた。全員MVPです。でも次なる我々としての課題、THE MATCHとかムエタイとか、あの立場に辿り着くにはどうしたらいいか。 THE MATCH=東京ドーム満員。こっちは後楽園ホールも満員にならない。何をすべきかが僕の課題でもある。それが本来のキックボクシングに戻す。それ僕がやりますから!」と簡潔コメントでは終わらない、武田氏の熱い語り口でした。
毎度、選手に檄を飛ばすのも、選手の戦い、プロモーターの戦い、競技としての確立、最高峰への道へ一つ一つの課題克服に繋がる一歩があるからでしょう。
K-1を観て育った世代が30年続いた中で、世間一般には浸透してしまった「ヒジ打ち無し、3回戦」から新しい令和時代に、元祖キックボクシングの戦いを浸透させることが出来るかが、武田幸三氏のCHALLENGEであろう。これ本当に注目で、「今後に期待したい」とは毎度の纏め文句でなく、私(堀田)も心から願うところです。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」