《書評》『紙の爆弾』2月号 諸悪の根源、電通を叩け 横山茂彦

新年、明けましておめでとうございます。厳しい政治経済状況のなか、皆様の一年が良い年でありますよう、心から祈念いたします。

 
好評発売中! 月刊『紙の爆弾』2023年2月号

さて、われわれの社会は批判的な視点、批判の武器こそが発展の糧であります。その意味では活字を媒介にした雑誌メディアは、創造的な社会・文化の原動力とも言うべき役割を果たすものと思料します。

一般論で言っているわけではありません。政治批判・社会批判の切っ先を鈍らせ、あらかじめ企業批判の制約をかけるシステムが、メディアの中にも存在するからです。そう、その元凶は電通をはじめとする広告代理店、イベント代理店の存在にほかなりません。広告スポンサーの威力をもってジャーナリズムの機先を制す。この悪習はいまだ、わが国の前途を覆っているといえましょう。

『紙の爆弾』2月号は、まさにこの悪習が東京五輪という公共性を持ったイベントを食いものにしてきたこと、その中枢で電通が果たした悪行を暴露する記事が巻頭を飾りました。以下、読みどころを掻い摘んでご紹介しましょう。

『紙爆』2月号では、本間龍と片岡亮の論考「電通のための五輪がもたらした惨状」「東京五輪グッズ 新たな汚職疑惑」が、電通の犯罪的な立ち回りをあますところなく暴露している。あらためて、広告収入に頼らない本誌ならではの記事と称賛を贈りたい。

まず、電通が単体で世界最大の企業、グループで第6位に入るコングロマリットであることに、あらためて驚かされる。同じく男性衣料のトップメーカーである青木、出版界における最大手KADOKAWAと結びつくことで、電通の東京五輪は巨大疑獄へと発展したのだ。

広告代理店のシステムは、そもそも業界内提携にある。ビッグイベントに対しては、スポンサー契約という枠組みで利権の配分を「オフィシャルサポーター」としてグッズの販売、関連商品の販売特権をスポンサーに付与する。今回の場合は高橋治之被告が元電通役員であり、五輪組織委員会理事という立場を利用した贈収賄・官製談合だったところに、構造的な利権が露呈した。

かつて、電通のキャッチフレーズに「電通には人いがいに何もありません」というものがあった。そう、広告代理店業界は人脈と業界内の提携があるのみで、あとは芸術家づらをしたデザイナーと制作会社があるだけなのだ。小さな代理店に友人が居たら、その事務所に行ってみるといい。壁に代理店の電話・ファックスの一覧表が貼ってあるはずだ。

もちろんデータ通信、Eメールでも業務は行なっているが、主要なやり取りは電話とファックスである。なぜならば、広告クライアントの代理店同士のやり取り(年間広告費管理)は、すべて人対人の交渉力で決まるからだ。ほとんどすべての代理店が、電通と博報堂、東急エージェンシーなどの大手代理店に系列化されている。

その意味で、電通に「人いがいに何もありません」は実態を照らしているが、その人脈が国家レベルの巨大イベントに係る、人と人の関係、すなわち贈収賄であれば看過できない。本間は電通談合ルート構造がオリンピックの発注金額の膨張につながったこと、それを看過してきた大手メディアの責任を問いただす。大手メディアがスポンサー(電通)に慮るのであれば、司直の厳しい追及をうながすためにも、われわれのような在野メディアが奮闘するしかない。

片岡亮の「東京五輪グッズ疑惑」も、その背後に電通という「本丸」があることを指摘するが、取材は公式グッズの販売現場からだった。片岡はクアラルンプールの日系ショッピングモールで、一枚のTシャツを発見する。そのTシャツには、東京五輪のエンブレムとタグが付いていたが、胸のエンブレムは別のデザインで塗りつぶされていた。別デザインで塗りつぶしたのは東京五輪が終わったからだが、片岡が取材したところ、そこにはマネーロンダリングと旧エンブレム(デザインのパクリ疑惑で取りやめ)という、いかにも利権がらみの背景が判明したのだ。マネーロンダリングは日本から輸出することで、名目的な売り上げが五輪関係者に計上される、いわば伝票上の予算消化である。旧エンブレムの塗りつぶしは、あらためてデザイン選考が出来レースだったことを露呈させた。

これら五輪スポンサードに係る利権、グッズ販売における不透明な構造は、膨大なものになった建設予算とその後の管理費をふくめた収支決算として、情報公開が求められるところだが、大手メディアには期待できない。内部告発をふくめた、電通城の攻略こそジャーナリズムの使命ではないか。

◆左派の新党を待望したい

ほかに、統一教会被害の救済新法をめぐる各政党の思惑、公明党と立憲民主党の内幕が明らかにされています。「創価学会・公明党 救済新法骨抜きの重いツケ」(大山友樹)「ザル法に賛成した立憲民主党の党内事情」(横田一)。創価学会・公明党の場合は自公路線による支持者の減少、立憲民主党の場合は維新との共闘による独自性(および野党共闘)の喪失ということになるが、れいわ新選組を除いて野党共闘に展望があるとも思えない。共産党や社民党など、賞味期限の切れた党に代わる、たとえば参政党のような求心力のある左派の登場が待たれる、と指摘しておこう。

◆レールガンは脅威か、平和の使者か

小さな記事だが、マッド・アマノが注目する「レールガン(電磁砲)」が気になる。究極の防衛システムは、電磁波を発生させることで、誘導ミサイルや戦闘機など、電気で動く兵器を無力化するものだ。通常は核爆発による電磁波の発生で、電子系の兵器は無力化されると考えられている。そんな武器が手軽に、3Dプリンターで製作できるというのだ。ミサイル制御の精密電子装置の有効性は、ウクライナ戦争でいかんなく証明された。そして超高速兵器の脅威やドローン(パソコン誘導)の有効性も明らかになっている。最前線が電子機器である以上、それらを無力化する兵器が待望される。願わくば、すべての武器を無力化する「レールガン」の登場を。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年2月号