鈴木邦男さんが11日亡くなったとの報に27日接した。鹿砦社と鈴木さんは80年代から交流があり、出版点数からすれば、鈴木さんの書籍をもっとも数多く世に出したのは鹿砦社であろう。思想・プロレス・時事問題など広い分野で、忌憚のない手書き原稿を送って頂き、活字にした日々が懐かしく思い出される。
鈴木さんはその後活動範囲を広げ、言論界では、押しも押されぬ著名人としてテレビでも幅広い活動をされたのはご承知の通りである。21世紀に入ったからは、本社の在るに西宮市で『鈴木邦男ゼミ』を開催し、数々の著名人と対談していただいた。ここ数年は体調を崩しておられると伺ってはいたものの、鹿砦社が関わった大学院生リンチ事件(いわゆる「しばき隊リンチ事件」)への対応をめぐり、両者が微妙な関係に陥っていたこともこの際告白しよう。
しかし、「暴力ではなく言論で活動できることを教えてくれたのが鹿砦社だ」(複数回同様の表現あり)と評して頂いた我々は、鈴木さんご逝去の報に接し、虚心坦懐にご冥福をお祈りする。
鈴木さんありがとうございました。
在りし日の鈴木さんが元気に表現された書籍が少数ながら残っている。この際鈴木さんかつての書籍をご存知ない皆様に鹿砦社出版の書籍をご紹介し追悼の意としたい。
以下が、鹿砦社が出版してきた鈴木邦男氏の著作である(著者表記のないものは単著)。他にもあるが品切れとなっているものは省いた。
在庫のあるものは鹿砦社での直接購入(ホームページ またはメール sales@rokusaisha.com)、全国書店、ネット書店等で購入可能です。
『慨世の遠吠え 強い国になりたい症候群』(内田樹×鈴木邦男対論)1,540円(税込)2015年3月
『慨世の遠吠え 2 呪いの時代を越えて』(内田樹×鈴木邦男対論)1,430円(税込)2017年2月
『終わらないオウム』(上祐史浩・鈴木邦男・徐裕行。田原総一朗改題)1,650円(税込)2013年6月
『右であれ左であれ 鈴木邦男対談集』(重信末夫〔重信房子父〕、松崎明、青木哲、猪瀬直樹、井上章一らとの対談を収録)1,760円(税込)1999年9月
『生きた思想を求めて 鈴木邦男ゼミin西宮報告集 Vol.1』(対論=飛松五男、水谷洋一、浅野健一、Paix2〔ぺぺ〕、野田正彰、山田悦子)1,026円(税込)2012年3月
『思想の混迷、混迷の時代に 鈴木邦男ゼミin西宮報告集 Vol.2』(対論=本山美彦、寺脇研、北村肇、重信メイ、田原総一朗、池田香代子)1,320円(税込)2013年2月
『錯乱の時代を生き抜く思想、未来を切り拓く言葉 鈴木邦男ゼミin西宮報告集 Vol.3』(上祐史浩、神田香織、湯浅誠、前田日明、青木理、内田樹)1,540円(税込)2014年1月
『【復刻新版】闘う日本語 愛と革命の読書道 鈴木邦男コレクション1』1,650円(税込)1999年9月
『【復刻新版】宗教なんてこわくない 上手な付き合い方 鈴木邦男コレクション2』(鈴木邦男・編著 島田裕巳・ひろさちや/対談)1,320円(税込)1999年9月
『【復刻新版】赤報隊の秘密 朝日新聞連続襲撃事件の真相 鈴木邦男コレクション3』(鈴木邦男・編著 伊波新之助〔朝日新聞編集委員〕対談)1,320円(税込)1999年9月
『【復刻新版】闘うことの意味 プロレス、格闘技、そして人生 鈴木邦男コレクション4』(鈴木邦男・編著 佐山サトルほか対談)1,320円(税込)1999年9月
『【復刻新版】がんばれ!!新左翼 「わが敵・わが友」過激派再起へのエール』1,650円(税込)1999年8月
『がんばれ!!新左翼 Part2 激闘篇』1,760円(税込)1999年8月
『がんばれ!!新左翼 Part3 望郷篇』1,650円(税込)2000年5月
『UWF革命 シューティングの彼方に』1,078円(税込)1988年8月
『格闘プロレスの探究』1,100円(税込)1989年1月
『夢の格闘技・プロレス』1,100円(税込)1989年10月
『プロレス・シュート・格闘技 よみがえれ!!過激伝説』1,078円(税込)1988年3月
なお、いずれも残部は少数で出版時期の古いものには、若干の汚れがあるものもございます。ご注文時に品切れになっていればご了承ください。
【松岡より補足】
以上は「デジタル鹿砦社通信」編集部の見解で私松岡の見解とはいささか異にします。私は1980年代はじめから鈴木さんと長い付き合いがあり、相互の信頼関係から上記されたように多数の書籍を刊行しました。思い返せば、実に多くの多種多様な本を出したものだと、あらためて思いました。
知り合ったのは1980年代はじめ、装幀家の府川充男さんの紹介で、まだ「統一戦線義勇軍」事件の前でした。府川さんとも組み、著者・鈴木、編集/出版・松岡、装幀・府川の3人で刊行した本も少なくありません。鈴木さんが創設した一水会の機関紙『レコンキスタ』の縮刷版(1巻=1号~100号、2巻=101号~200号)まで出版しました。このことによって、私のホームグラウンド・兵庫県西宮市で起きた朝日新聞襲撃事件について関係を疑われました。それにもかかわらず、長年多くの書籍を出し続けました。
ちなみに、当時大阪朝日社会部記者で、72年の早稲田大学で起きた、革マル派による「川口君虐殺事件」で抗議の声を挙げ、朝日退職後その件について『彼は早稲田で死んだ』を刊行した樋田毅氏も取材に来られています。樋田氏にとっては、この2つの事件における暴力の問題は深刻だったものと思われます。
しかし、「大学院生集団リンチ事件」(しばき隊リンチ事件)に対するスタンスで義絶せざるをえませんでした。鈴木さんは、配下の見澤知廉(故人)の「統一戦線義勇軍」によるリンチ殺人・死体遺棄事件を経験していながら、これを教訓化せず日和見主義的態度を取り、むしろしばき隊寄りの態度を取られました。昵懇の辛淑玉らとの関係に配慮されてのことだろうと推察します。統一戦線義勇軍事件を体験され運動内部の暴力について身を切るような経験をされた鈴木さん(鈴木さんが激しい行動右翼から言論戦にコペルニクス的転換を遂げたのは、この事件が契機となっていると私なりに考えている)にこそ問題解決に協力してほしかった。こうした時のために、長年共に思想を研鑽し一緒に数多くの本を作って来たのではなかったのか──。上に挙げた本の数々を見ていただきたい、鈴木さんや私たちの思想的営為の雰囲気が感じられるでしょう。
そうしたことにより、私たちがみずからの全思想を懸け会社の業績にも影響することも厭わず全力で取り組んでいた大学院生リンチ事件の問題にケリがつくまで義絶せざるをえませんでした。バカはバカなりに、私にとっては断腸の想いでした。もう6~7年になります。関係修復を勧める方もおられましたが、やはり私には、大学院生リンチ事件の問題に決着がつくまでは、とてもその気にはなりませんでした。複数の裁判も昨年末まで続き一応終結しました。リンチ事件問題に一定の決着がつけば、いずれはきちんと話し合わなければ、と思っていましたが、柔道などの格闘技をやり酒・たばこもほとんど飲まず健康には人一倍気をつけておられた鈴木さんがこんなにも早く逝かれるとは……。今はただご冥福をお祈りするしかありません。
昨年12月には、元読売新聞記者で学生時代に暴力を受けた体験もあって「大学院生リンチ事件」への私たちの取り組みを理解された山口正紀さんも亡くなられました。鈴木さんと共に私に長年影響を与えたお2人が相次いで亡くなられショックで、興奮と虚脱状態です。その前には、岡留安則さんや北村肇さんらも亡くならています。私もそろそろ……と思わないでもありませんが、もう一仕事、二仕事をやり抜かないと死ぬに死ねません。
鈴木さんに対する私の見解は,後日明らかにいたします。合掌
*鈴木さんとの義絶については、「デジタル鹿砦社通信」2017年6月27日号「【公開書簡】鈴木邦男さんへの手紙」、これに加筆した「リンチ事件に日和見主義的態度をとる鈴木邦男氏と義絶」(『カウンターと暴力の病理』所収)を参照してください。