国民の大多数から「無実なのに死刑囚にされた冤罪被害者」と認識されている袴田巌さんの再審がついに行われることになった。袴田さんは1966年の逮捕から現在まで57年にわたり、殺人犯の汚名を着せられてきたが、無事に再審が行われれば、無罪判決を受けることは確実だとみられている。

このような状況の中、過去に袴田さんに対し、無実の訴えを退ける判決や決定を下した裁判官たちはどのような思いで、どのように過ごしているのだろうか。当連載では、該当する裁判官たちの中から存命であることが確認できた人たちに対し、公開質問を行っていく。

3人目は竹花俊徳氏。東京高裁の裁判官だった2004年8月26日、安廣文夫裁判長、小西秀宣裁判官と共に袴田さんの第一次再審請求の即時抗告審を担当し、袴田さんの即時抗告を棄却する決定を出した人だ。

現在は弁護士をしている竹花俊徳氏(竹花俊徳公式ホームページより)

◆「竹花氏の略歴」と「竹花氏への質問」

竹花氏は1947年10月18日生まれ、長野県出身。安廣裁判長らと共に袴田さんの即時抗告を棄却する決定を出した後、仙台高裁秋田支部長、水戸家裁所長、静岡家裁所長などを歴任し、65歳の誕生日である2012年10月18日付けで定年退官。その後、定年が70歳の簡裁の裁判官となり、川口簡裁、さいたま簡裁、東京簡裁に勤務し、2017年10月18日付けで定年退官。現在は弁護士となり、東京都新宿区西新宿にある『弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部』に所属している。

なお、竹花氏は、公式ホームページで次のように述べている。

〈刑事事件・少年事件の被疑者・被告人になってしまったあなたに寄り添い、あなたの立ち直りの力になりたい。あなたが無実の罪で容疑を掛けられていたとしたら、それを晴らす力になりたい。そう考えて弁護士になりました。〉

そんな竹花氏に対しては、以下のような質問を書面にまとめ、郵便切手84円分を貼付した返信用の封筒を同封のうえ、『弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部』に特定記録郵便で郵送し、取材を申し込んだ。

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【質問1】

袴田巌さんは再審が決まり、無罪判決を受けることが確実な状況となりました。竹花様はこの状況をどのように受け止めておられますか?

【質問2】

竹花様は、公式ホームページで次のように述べておられます。

〈刑事事件・少年事件の被疑者・被告人になってしまったあなたに寄り添い、あなたの立ち直りの力になりたい。あなたが無実の罪で容疑を掛けられていたとしたら、それを晴らす力になりたい。そう考えて弁護士になりました。〉

竹花様は袴田巌さんについて、「無実の罪で容疑を掛けられた人ではない」と認識されているのでしょうか?

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この質問に対して、竹花氏からは以下のような回答が郵便で届いた。なお、竹花氏に郵送した「質問をまとめた書面」や「郵便切手84円分を貼付した返信用の封筒」は、回答と一緒に返送されてきた。

片岡健様

お世話になっております。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所です。

この度は、弊所所属弁護士の竹花俊徳への取材をご依頼いただきありがとうございます。

こちら検討させていただいたところ、竹花が業務多忙のため、今回の取材は見送らせていただきます。

ご要望にお応えできない形となってしまい大変申し訳ございませんが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

2023年5月25日
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所

竹花氏については、追加取材をすることを検討している。

※竹花氏の生年月日と出身地、異動履歴は『司法大観 平成二十八年版』と『新日本法規WEBサイト』の情報を参考にした。

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。編著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(リミアンドテッド)、『絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―』(電子書籍版 鹿砦社)。stand.fmの音声番組『私が会った死刑囚』に出演中。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―」[電子書籍版](片岡健編/鹿砦社)