横浜副流煙裁判(反訴)で新しい動きがあった。原告である藤井敦子さんの支援者の男性が、2月9日に行われた尋問の中で被告の作田学・日本禁煙学会理事長が行った発言について、名誉毀損に当たるとして発言の撤回と謝罪を求める内容の内容証明郵便を6月12日に送付した。男性は、藤井さんと同じ地域に住み、藤井さんを熱心に支援してきた酒井久男さんである。
既報してきたように横浜副流煙裁判は、煙草の副流煙により健康被害を受けたとして、藤井さんの隣人のAさん一家が藤井さんの夫に対して4518万円の損害賠償を求めた裁判である。1審、2審とも藤井さんの勝訴だった。勝訴を受けて、藤井さん夫妻は、作田医師を刑事告発した。A家のために虚偽の診断書を作成したというのがその理由である。作田医師は、横浜地検へ書類送検されたが、紆余曲折を経た後、不起訴となった。
さらに藤井さん夫妻は、作田医師とA家の3人に対して、約1000万円の損害賠償を求める「反スラップ訴訟」を起こした。この「反スラップ訴訟」で行われた作田医師に対する尋問の中で、作田医師は酒井さんに対する問題発言を行った。
前訴が進行中の2019年の夏、酒井さんと藤井さんは、日本赤十字医療センター(渋谷区広尾)にある作田医師の外来を訪れた。酒井さんは、繊維に対するアレルギー体質があった。そこで藤井さんを伴って作田医師の外来を受診し、診察の様子を確認する計画を立てた。藤井さんは高額訴訟の被害者であるから、作田医師の医療行為の実態を観察したいと考えるのは当然だった。
2人が実行した計画はどこからか、作田医師の耳にも入ったようだ。裁判の尋問の中で、作田医師は弁護士からの質問に答えるかたちで、酒井さんが受診後に治療費もしくは診察費用を払わずに帰宅したと証言した。しかし、これは事実ではなかった。酒井さんが治療費もしくは診察費用を支払ったことは、病院の記録にも残っている。その後、作田医師は日本赤十字医療センターを除籍となったが、医療や経理の記録自体は保存されている。
酒井さんが送付した内容証明の全文は次の通りである。
向夏の候、作田様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。さて、去る令和5年2月9日、横浜地裁にて行われた貴殿を被告とする裁判にて証人尋間が行われました。その際に貴殿が証言台で行った発言の中で、私に対してのただならぬ名誉棄損発言がありました。それは、「当日、当然、会計にも行っていないと思います。」というものです。
支払いをせずに診察を受けるというのは 「犯罪」行為であり、貴殿はまさしく公開された法廷に居合わせたたくさんの傍聴者の面前で、私を犯罪者と呼んだことになります。これは私の名誉を棄損した虚偽の発言です。上記発言につき謝罪および発言の撤回を求めますので、令和5年6月30日迄にご回答いただきますようご通知申し上げます。
酒井さんは、名誉毀損で作田医師を提訴することも視野に入れている。
◆片山律弁護士の病的な憶測
この日の尋問では、片山律弁護士がわたしや藤井さんに対しても不穏当な発言を繰り返した。藤井さんに質問するかたちで、たとえばカンパで集めた資金がわたしに提供されているのではないかとか、藤井さんがJT(日本たばこ産業株式会社)から支援を受けているのではないかといった趣旨の発言である。
このうちカンパとは、麻王監督が制作した横浜副流煙事件をテーマとした映画『窓』の制作資金を集めるために実施されたクラウドファンディングのことである。わたしは1円も受け取っていないし、制作にもかかわっていない。
また藤井さんとJTは何のかかわりもない。
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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