広島県立広島病院(県病院)やJR広島病院など広島都市圏の病院を再編し、広島市東区二葉の里地区に新しい巨大病院を建設する広島県の計画で、広島県の湯崎知事は10月27日、建設予定地の取得に向けた売買契約をJR西日本と交わしました。
建設予定地はJR広島病院の建物や駐車場がある約2万6千平方メートルで、JR西日本が所有しています。購入費181億円で契約を結び、土地の引き渡しと代金支払いは2025年4月を予定しています。
◆やる気なし!ガラガラの会場で自称「説明会」
また、県は10月29日、筆者も含む東区民にほとんど周知作業らしいこともしないまま、説明会を強行。出席した有田優子・広島市議によると会場はガラガラでした。有田市議が参加人数を質問したところ、人数すら県は把握していなかったそうです。まったく、説明をやる気が感じられません。今年の夏、高速5号線二葉山トンネルの工事を再開した直前にも、ほとんどの住民がボイコットする中で説明会と称するイベントを行っています。
こうした「説明会」と称するものを行ったとして、事業を独裁的に進めていくのが、湯崎知事の最近の手法として定着しています。
◆県民の意見を聴かずに健全経営の病院潰し
さて、度々お伝えしていますように、県病院廃止→新巨大病院計画は矛盾だらけです。
第一に、県病院もJR広島病院も、総務省による再編の対象になっていません。県病院については、他の都道府県の公的病院のような経営破綻状態にあるわけでもありません。それをわざわざ潰すのはどういうことか?
第二に、県病院の地元の住民の意見をほとんど聞かずに計画を決めています。地元の患者を見放しています。また、江田島市などから船で県病院に来ている患者も不便になってしまいます。
◆独立行政法人化で人材流出、医療崩壊の恐れも
第三に、新巨大病院を県立ではなく独立行政法人にしています。独立行政法人にしてしまうと、県知事や議会は関与できない独立採算制になってしまいます。
第四に、にもかかわらず、湯崎知事は高度医療をこの新巨大病院にやらせようとしています。高度医療はどうしても赤字になりやすい。他方で知事は県立をやめて独立採算制にしてしまうので赤字を県が穴埋めすることが難しくなります。そうなれば、最悪の場合、経営が破綻ということも考えられます。高度医療もダメ、一般的な医療もダメ、という共倒れ状態になりかねません。
第五に、県立病院から独立行政法人になることで医師や看護師の待遇が悪くなる可能性が高い。そういう中で新病院に残りたいという職員は15%という組合側のアンケート結果もあります。
現実に、「子供を養っていくには将来不安」という理由で、県病院をすでに退職することを決め、県外の給料の高いところに移るという方もおられるそうです。今や若手女性を中心にカナダやオーストラリアに行く時代。人材流出の結果、スタッフが不足し、崩壊しかねない。人材流出で病院が崩壊する恐れがあります。
◆移転でむしろ強まる災害・渋滞リスク
第六に、新病院の予定地の東区二葉の里は交通渋滞が今でも激しいことです。筆者もバスで帰宅するより徒歩の方が早いと思えるような渋滞に良く巻き込まれます。新病院ができれば外来患者の車でさらに渋滞は激化し、さらに救急車の走行も困難になります。助かる命も助からなくなりかねない。
第七に、今の県病院の位置は津波のリスクがあるとされており、だから広島駅北口に移すのだ、と県は言っています。しかし、津波による水没のリスクであれば、広島駅周辺も同程度のリスクがあります。土砂災害のリスクについては新病院予定地の方がむしろ土砂災害警戒区域が敷地近くに迫っています。
いずれにせよ、このままでは何のために巨大病院を作ったのか分からなくなります。全国的に見ても公的な病院再編の事業規模は50億円程度ですが、広島県は1300-1400億円と桁が二つ違います。結局は、「JR病院を消費税で救済するだけはないか?」という疑念がぬぐえません。
◆労働組合と議会はチェック機能果たさず
さて、こんなふうに経営者=知事が暴走するとき、労働組合は職員の立場で、県議会が県民の立場で歯止めになるべきです。しかし、現実には労働組合(自治労県職連合)は知事による基本計画を呑んでしまったそうです。筆者は組合OBとして、後輩たちのふがいなさに情けない思いです。労働組合は、労働者と患者=県民を新自由主義独裁者の知事に売り渡したといっても過言ではないでしょう。
広島県議会でも労働組合を基盤とする立憲民主党の県議も含めて知事の案に賛成してしまいました。他方で、一部の保守系の特に女性議員の方がこの問題では頑張っておられます。
◆消費税を財源のご乱行、止めるチャンスはある
そして、こんなずさんな事業の財源は消費税です。こんなことに使うくらいなら消費税を減税・廃止し、庶民の暮らしを楽にしていただきたいものです。
他県では青森県では(同じ自民党系とはいえ若い方に)知事が交代して計画が修正される、三田市でオール与党の市長が無名のサラリーマンに打倒されています。宮城県議選で知事与党が敗北するなどしています。広島も今後、どうなるかはわかりません。
街頭活動では「県病院は残してほしいけど、もう決まったのでしょ?」というご反応もあります。
しかし、筆者は他県の例をご紹介して、「まだまだ諦めてはいけない」ということを申し上げ、それにより相手の方の反応も「じゃあ、署名しておこう」と変わることも経験しています。
県病院問題を考える会(代表代行・有田優子市議)では、超党派で署名活動や学習会、関係者への要請活動などに力を入れています。
当面は第二回学習会が予定されています。第一回は福島瑞穂参院議員が講師でしたが、第二回では広島県庁の担当者をお招きし、意見交流を図ります。
◎県病院問題を考える会 第二回学習会
12月16日(土)14時-16時 (13時開場)
東区民文化センター 3F大会議室
・講師 広島大学大学院 先進理工系科学研究科 早坂康隆先生
演題 瀬戸内・広島の自然災害と安全問題~日本列島の成り立ちから~
・広島県庁担当者との意見交換
広島県医療機能強化推進課長 渡部滋 様
連絡先 県病院問題を考える会 広島市南区翠町1丁目10-27
TEL 082-250-3155 / FAX 082-250-3157
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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