杉山空と谷津晴之は2021年10月16日に対戦し引分け。2年4ヶ月ぶりの再戦となった。その後、両者ともそれぞれの団体で王座挑戦があり、杉山空は昨年2月18日に王座決定戦で龍太郎(真門)に判定勝利してNKBフライ級王座獲得。
谷津晴之は2021年12月5日にNJKFフライ級チャンピオン、優心(京都野口)に挑戦も判定負け。昨年9月17日に2度目の挑戦も引分けで王座奪取は敵わず。今回、杉山空にとってはチャンピオンとして負けられない立場となっての再戦となった。
◎冠鷲シリーズvol.1 / 2月17日(土)後楽園ホール 17:30~20:35
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会
◆第11試合 52.0kg契約 5回戦
NKBフライ級チャンピオン.杉山空(HEAT/2005.1.19静岡県出身/51.45kg)
8戦5勝1敗2分
VS
NJKFフライ級1位.谷津晴之(新興ムエタイ/2003.5.7神奈川県出身/51.8kg)
11戦5勝(1KO)4敗2分
勝者:杉山空 / 判定2-0
主審:前田仁
副審:加賀見50-47. 鈴木49-49. 笹谷50-48
ローキック中心に蹴りで距離感を掴みながらパンチの交錯の後、すぐ組み合ってから縺れ合い、ヒザ蹴りなどスピーディーな展開が続く。崩し転ばすのは杉山がやや上手。
好戦的に戦う両者にとっては最も苦しいであろう第4ラウンドも主導権を奪おうとする勢い衰えず、最終第5ラウンドには杉山空がバックハンドブローがヒットするインパクトを与え、ヒジ打ちで谷津晴之の左眉尻をカットし、谷津晴之は序盤から時折飛びヒザ蹴りを見せたが、杉山空の勢いに優ることは出来なかった。
全体ではパンチと首相撲からの崩しは杉山空が支配したか。ジャッジ三者が揃って10対9を採点するラウンドは無いほど差が付き難い展開ながら、幅がある分かれ方で杉山空が判定勝利した。
杉山空は「1年ぶりの試合で不安な要素もいっぱい有って、凄くパンチを練習していたんですけど、その成果が少し出せて、遠い所(静岡県裾野市)から応援団が沢山来てくれて、その人達の応援の力の御陰で最後まで粘って戦うことが出来ました。」
対戦相手の谷津晴之については、
「谷津選手のミドルキックを警戒していたんですけど、やっぱりそのミドルキックが強くて何とか凌いで攻めを上回ることが出来ました。次戦はまだ決まっていませんが、防衛戦になると思います。防衛戦に向けてパンチを強化して倒せる選手になりたいと思います。」
と語った。
◆第10試合 バンタム級3回戦
キッシンチャイ(=森貴慎/AKSドミネーター/1992.1.13静岡県出身/53.5kg)
15戦12勝(7KO)3敗
VS
雄希(テツ/2002.9.3大阪府出身/53.25kg)5戦4勝(2KO)1敗
勝者:キッシンチャイ / 判定3-0
主審:高谷秀幸
副審:鈴木30-29. 加賀見30-29. 前田30-29
元・JNETWORKバンタム級チャンピオン森貴慎がキッシンチャイとリングネームを変更し、5年ぶりの再起戦。雄希は202年12月デビューで4戦無敗の新鋭ながら、現在の両者の実力拮抗を量るマッチメイクとなった。
パンチとローキックの攻防は互角の展開。第2ラウンドにはキッシンチャイの左ストレートヒットと首相撲からの崩しでやや優勢を維持したか。大きな差は無いままラウンドが進んだが、第2ラウンドをリードしたキッシンチャイが辛くも判定勝利した。
雄希側陣営は試合内容、展開について「蹴りを上手くはやらせて貰えんかったですね。」と言っている間に、近くで聞いていた雄希本人が悔しそうに「動きは悪かったです。出直します!」と反省を述べていた。
◆第9試合 61.0kg契約3回戦
角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/1989.8.14富山県出身/60.7kg)23戦12勝8敗3分
VS
山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/60.9kg)15戦5勝(4KO)7敗3分
勝者:角谷祐介 / 判定2-1
主審:笹谷淳
副審:鈴木30-28. 高谷30-29. 前田29-30
開始早々、山本太一は猛ダッシュで角谷祐介に飛びヒザ蹴りを浴びせる。ヒットはしなかったが、角谷祐介は焦ることなく冷静に試合を進め、蹴りからパンチの互角の攻防から徐々にヒットを増やしたが、山本太一のアグレッシブなパンチと蹴りの前進には評価は分かれる展開で、スプリットデジションとなる判定勝利となった。
◆第8試合 65.0kg契約3回戦
大月慎也(元・JKAライト級4位/TEAM Artemis/1986.6.19埼玉県出身/65.0kg)
22戦9勝(4KO)9敗4分
VS
ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/64.6kg)39戦7勝(3KO)29敗3分
勝者:大月慎也 / TKO 3ラウンド1分25秒
主審:加賀見淳
蹴りの攻防から接近戦に持ち込みたいちさとに、離れた距離での蹴りでは徐々に大月慎也のヒットが増えていく。
第2ラウンドには左ハイキックでノックダウンを奪い、度々ハイキックがちさとを襲う。大月のローキックもヒットが増え、第3ラウンドにもガードが低いちさとに左ハイキックを後頭部ヒットで倒すと、立ち上がる様子はあったが、レフェリーがほぼノーカウントで試合を止めた。
◆第7試合 58.5kg契約3回戦
NKBフェザー級5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身/58.5kg)
30戦11勝(4KO)15敗4分
VS
利根川仁(Realiser STUDIO/2003.1.24東京都出身/58.3kg)4戦4勝(4KO)
勝者:利根川仁 / TKO 2ラウンド1分25秒
主審:鈴木義和
パンチと蹴りの攻防は第1ラウンドから利根川仁が右ストレートのタイミングを探っていたか、第2ラウンドには追い詰めていく中でカウンターでヒットさせるとノックダウンとなってカウント中のレフェリーストップとなった。
◆第6試合 ライト級3回戦
猪ノ川海(大塚道場/2005.9.30茨城県出身/60.85kg) 3戦2勝(2KO)1敗
VS
龍一(拳心館/1995.11.17新潟県出身/61.2kg)8戦7敗1分
勝者:猪ノ川海(赤コーナー) / TKO 1ラウンド2分52秒
主審:笹谷淳
開始から猪ノ川海の距離感で蹴りとパンチが優り、組んでのヒザ蹴りも効果的に攻める。龍一のパンチをやや喰らっても、すぐにパンチ、ヒジ打ちで巻き返し、左ハイキックから右ハイキック、更にパンチ連打から右フックで倒し切ると、レフェリーストップとなる圧勝となった。
◆第5試合 ライト級3回戦
魔裟屋(SLACK/1991.2.4岩手県出身/60.05kg) 3戦3敗
VS
中山航輔(テツ/2002.10.13香川県出身/61.0kg)2戦2勝
勝者:中山航輔(青コーナー) / 判定0-2 (29-30. 30-30. 28-30)
◆第4試合 62.0kg契約3回戦
森野允鶴(渡邉/2001.1.17東京都出身/61.75kg)2戦2勝
VS
鈴木ゲン(拳心館/1973.6.5新潟県出身/61.6kg)9戦6勝(4KO)2敗1分
勝者:森野允鶴(赤コーナー) / 判定2-0 (30-28. 29-29. 30-28)
◆第3試合 56.0kg契約3回戦
ATSUSHI(NK/2001.11.21大阪府出身/54.95kg)2戦2勝(1KO)
VS
荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/54.85kg)3戦2敗1分
勝者:ATSUSHI(赤コーナー) / 判定2-1 (30-29. 30-29. 29-30)
◆第2試合 51.0kg契約3回戦
TAKUMI(Bushi-Doo/1989.12.8新潟県出身/50.9kg)6戦6敗
VS
緒方愁次(ケーアクティブ/2004.1.6東京都出身/50.65kg)1戦1勝
勝者:緒方愁次(青コーナー) / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)
◆第1試合 バンタム級3回戦
九龍悠誠(誠真/1999.12.1神奈川県出身/53.45kg)2戦1勝1敗
VS
涌井大嵩(アルン/1997.3.2新潟県出身/53.2kg)2戦2勝(1KO)
勝者:涌井大嵩(青コーナー) / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)
《取材戦記》
今年のシリーズ名、冠鷲のように杉山空は狙った獲物は逃さない、今年のエース格に上り詰められるか。
2022年10月29日より始まった、NKBに於ける12年ぶりのフライ級王座戦となった4名参加の王座争奪トーナメントで、翌年2月18日には杉山空が龍太郎(真門)との王座決定戦で判定勝利し王座獲得となった。そこから1年、試合が空いてしまうのは成長期に勿体無い事態だったが、今回の判定勝利で「次は防衛戦になると思います。」と言うように「防衛してこそ真のチャンピオン」をこのNKBでも実践して欲しいものである。
現在は興行運営一歩退いた感のある渡邊信久連盟代表理事は、NKB実行委員会代表としてもリングサイドに陣取り、大御所としての存在感は健在です。血気盛んに興行を担っていたお手製のチケットだった頃は、1枚1枚席番を押印する手作業をやっていたり、更なる昔は手書きの時代もあり、そんな昭和の時代は“切符”と呼んでいました。現在も“入場券”という言い方は残っていますが、若い世代の大方は“チケット” と呼んでいるでしょう。
長きに渡って続けられて来た“切符販売”は大変な苦労ですが、渡邊ジム設立以来54年続けられて来た販売の技と、日本キックボクシング連盟設立40周年の地道な継続の力での次回の冠鷲シリーズvol.2は4月20日(土)に後楽園ホールに於いて開催予定です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」