新たなチャンピオン誕生。デビュー20年のジョニー・オリベイラ戴冠。
木下竜輔は大抜擢ながらチャンスを活かせずも、まだエース格へ成長の力あり。
ベテラン瀬戸口勝也はNJKFの山浦俊一をノックダウン奪って判定勝利、存在感示す。
◎MAGNUM.59 / 3月3日(日)後楽園ホール17:15~21:16
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会
(戦績は当日プログラムより、この日の結果を加えています)
◆第12試合 59.0kg契約3回戦(6oz)
日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/ 58.8kg)42戦31勝(14KO)8敗3分
VS
山浦俊一(前・WBCM日本SFe級Champ/新興ムエタイ/ 59.95→59.9kg=計量失格、減点2、グローブ8oz使用)33戦17勝(3KO)14敗2分
勝者:瀬戸口勝也
主審:少白竜
副審:宮沢30-25. 勝本30-24. 中山28-25 (山浦に減点2含む)
初回、山浦俊一が蹴りで仕掛けるが、瀬戸口が距離を詰めて来てボディーブローを狙う。パンチの勢いは瀬戸口が攻勢だが、ヒジ打ちを合わせるタイミングや組み合ったら崩すのは山浦が上手く、ヒジで瀬戸口の右瞼をカットしたが、第2ラウンドには瀬戸口がヒジ打ち返しで山浦の眉間をカットした。
最終第3ラウンドの開始早々に瀬戸口が強打で出て来た。ロープ際に詰まった山浦に右ストレートがヒットし、ノックダウンを奪う。すぐ立ち上がりダメージは小さいが勝利は大きく瀬戸口に傾いた。更に打ち合った中、瀬戸口の連打で山浦は2度目のノックダウン。更に倒しに行った瀬戸口だったが、打ち合いに耐え凌ぎ、組み合ったら崩し転ばす山浦。ハイキックも見せた山浦は意地を見せて打ち合いに応じた中、瀬戸口も最後のヒットを見せることが出来ず判定に縺れ込んだ。
山浦は前日計量ではうつむいた暗い表情も、試合では瀬戸口の強打と打ち合うアグレッシブな展開が見られた。瀬戸口の強打を貰ってしまったが、ムエタイ技の上手さを活かせた山浦だった。
山浦は「瀬戸口さんのパンチは重いとは感じなかったです。これなら耐えられるな、というパンチでしたけど、結果ダウンしているんでダメですけど。減量は完全に自分のミスだと思います。」と反省していた。
◆第11試合 日本スーパーフェザー級王座決定戦 5回戦
日本スーパーフェザー級2位.木下竜輔(伊原/ 58.65kg)11戦4勝(2KO)7敗
VS
同級4位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 58.9kg)61戦16勝(1KO)27敗18分
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:宮沢48-50. 少白竜49-50. 中山48-50
木下竜輔は2021年4月デビュー。一昨年5月15日にはベテランの王座挑戦経験を持つジョニー・オリベイラを第1ラウンドに右ストレートで失神TKO勝利して一気に注目を浴びる存在となった。
初回、両者のローキック中心の蹴りで様子見から距離を詰めてパンチに繋ぐ展開も、前回のように木下竜輔が強打の右ストレート狙うも、ジョニーも警戒し主導権支配には至らない探り合いが終盤まで続く。
第4ラウンドにはジョニーが組み付くシーンが増え、消極的展開にレフェリーが両者へ注意を与える。
第5ラウンドもジョニーの組み付くシーンが続いてレフェリーの注意を受けたが、少ない残り時間を支配しようとアグレッシブさが増したジョニー。木下は攻め倦む中、積極性を失い、ジョニーが攻勢で終わる流れとなった。試合終了後も延長の可能性を賭けてか、木下陣営はアドバイスを続けていた。判定は第3ラウンド以降、ジョニーが優勢に傾くも、ジャッジ三者揃ってジョニー・オリベイラに付けたのは最終ラウンドだけだったが、勝利を得るに至った。
木下竜輔は「僕はジョニーさんとの初戦からいろいろ始まったのですが、連敗している僕は試合できる身分ではない中でチャンスを頂いたことと、対戦したジョニーさんに感謝しています。」と語った。
ジョニー・オリベイラは、「木下さんのパンチは重かったし効きました。でも我慢して練習して来たテクニック出して頑張りました。試合はとても良い感じで勉強になりました。」と語り、ジョニーのチーフセコンドを務めた中川卓さんは、「1月に王座決定戦が決まってからジョニーと100ラウンドぐらいスパーリングしましたよ。ジョニーは試合はちょっと力んでしまいましたけど、練習の調子良さが出せれば勝てると思いました。」と語った。
◆第10試合 69.0kg契約3回戦(8oz)
佐藤界聖(聖域統一ウェルター級Champ/ PCK連闘会/ 70.9→70.3kg=計量失格、減点2)
15戦11勝(3KO)3敗1分
VS
大谷真弘(BRAVE FIGHT CLUB/ 68.9kg)7戦5勝(2KO)1敗1分
引分け 0-1
主審:勝本剛司
副審:椎名28-29. 28-28. 中山28-28 (佐藤の減点2含む)
初回はスピーディーな展開でパンチ中心に出て来る大谷真弘だったが、佐藤界聖がローキック、主にカーフキックを連発していくと大谷の攻撃力が弱まり、佐藤が完全に主導権を奪って攻勢を維持したが、減点が響いて引分け。ウェイト差が出た展開かは分からない。
◆第9試合 78.0kg契約3回戦
マルコ(伊原/ 78.05→77.9kg) 7戦4勝(1KO)3敗
VS
雄也(新興ムエタイ/ 77.55kg)10戦2勝7敗1分
勝者:マルコ / 判定3-0
主審:宮沢誠
副審:椎名30-25. 少白竜30-25. 勝本30-25(三者とも各ラウンド同一採点)
初回、マルコはパンチから強烈な右ローキックを連発して主導権を奪う。パンチとローキック中心の流れはマルコが優勢のまま最終第3ラウンド、マルコのパンチ連打で雄也がノックダウン。立ち上がった雄也は打ち合って前に出てヒザ蹴りを出すとローブローに近かったか、逆にマルコのヒザ蹴り仕返しで二度目のノックダウン。立ち上がって反撃するも巻き返せず終了。
◆第8試合 女子(ミネルヴァ)48.5kg契約3回戦(2分制)
ミネルヴァ・アトム級チャンピオン.Nao(AX/ 48.2kg)5戦5勝(2KO)
VS
RUI・JANJIRA(JANJIRA/ 48.05kg)4戦1勝3敗
勝者:Nao / 判定2-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-29. 宮沢29-29. 勝本30-29
NJKFで2023年の女子部門優秀選手賞を受賞したNaoが5戦目を迎えた。
手数と攻防は互角の展開を見せるが、ヒザ蹴りのヒット、パンチや前蹴りのヒットとインパクトがやや優ったNao。ジャッジ三者が揃う明確な差のラウンドは無かったが、僅差判定勝利を飾った。
◆第7試合 51.8kg契約2回戦
渡邊匠成(伊原/ 51.4kg)3戦1勝1敗1分
VS
大久保貴広(京都野口/ 51.65kg)2戦2勝(1KO)
勝者:大久保貴広 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名19-20. 中山19-20. 勝本18-20
◆第6試合 ウェルター級2回戦
宇野澤京佑(伊原/ 66.35kg)1戦1敗
VS
崚登(新興ムエタイ/ 66.4kg)3戦2勝(2KO)1分
勝者:崚登 / TKO 2ラウンド2分35秒
主審:宮沢誠
初回、崚登のパンチ連打の後、ヒザ蹴りから右ストレートが宇野澤京佑の顎にヒットでノックダウン。
第2ラウンドには崚登がパンチから右ヒザ蹴りを宇野澤のボディーへヒットさせ、右ミドルキックを腕の上から蹴ったが、ボディーが効いていてノックダウン。立ち上がったがカウント中のレフェリーストップとなった。
◆第5試合 アマチュア女子37.0kg契約2回戦(2分制)
西田永愛(Queen’s Fight 全国トーナメント初代35kg級覇者/伊原越谷/ 36.9kg)
VS
渡邊梨央(Queen’s Fight準優勝/MtF MUGEN/ 36.4kg)
勝者:西田永愛 / 判定2-0 (19-19. 20-19. 20-19)
◆第4試合 女子(ミネルヴァ)女子49.0kg契約3回戦(2分制)
ミネルヴァ・ライトフライ級2位.佐藤”魔王”応紀(PCK連闘会/ 47.6kg)
22戦11勝(6KO)9敗2分
VS
同級3位.紗耶香(格闘技スタジオBLOOM/ 49.35→49.25→49.0kg)
14戦5勝(1KO)8敗1分
勝者:佐藤”魔王”応紀 / TKO 2ラウンド1分14秒
主審:中山宏美
初回早々、10秒あまりで佐藤はローキックから右ストレートで紗耶香からノックダウンを奪う。第2ラウンドも佐藤が蹴りから右ストレートでノックダウンを奪い、少々の首相撲の後、再度右ストレートで紗耶香からノックダウンを奪うとレフェリーがノーカウントで試合を終了した。紗耶香は試合前から右膝にテーピングされており、試合でもローキックを貰ってフットワークに影響あったかもしれない。
◆第3試合 ミネルヴァ公式戦 女子49.0kg契約3回戦(2分制)
ナディア・ブロン・バビルス(伊原/アルゼンチン/48.05kg)7戦3勝1敗3分
VS
ミネルヴァ・ライトフライ級チャンピオン.Yuka★(SHINE沖縄/48.75kg)11戦5勝4敗1分
引分け 三者三様 (29-29. 29-30. 30-29)
◆第2試合 アマチュア45.0㎏契約2回戦(2分制)
西田蓮斗(伊原越谷/ 44.7 kg)vs龍翔(TRASH/ 44.55kg)
勝者:龍翔(青コーナー) / 判定0-2 (19-19. 19-20. 19-20)
◆第1試合 アマチュア31.0㎏契約2回戦(2分制)
武田竜之介(伊原越谷/ 30.9kg)vs米田賢吾(VALLEY/ 29.85kg)
勝者:武田竜之介(赤コーナー) / 判定3-0 (20-18. 20-19. 20-19)
《取材戦記》
今回の興行、伊原ジムに於ける前日計量で4名のウェイトオーバーがありました。そのうちの一人はマルコ。余裕の計量に臨みながら、わずか50グラムのオーバーで減量失敗ではなく、少々の運動で数分後にクリアー。
紗耶香は350グラムオーバー(コスチューム分を除く)だったが、スウェットジャケットを着てシャドウボクシングを続けて規定の2時間以内に3回目の計量でクリアー。佐藤界聖は1回目の計量で1.9kgオーバー。地下の伊原ジムで縄跳び等を経ても1.3kgオーバーで諦めた様子。当人と陣営は相手陣営に平謝り。
プロモーター関係者からは「だらしない試合するのが一番ダメで、良い試合して勝って謝りなさい!」と檄を飛ばされていた。
山浦俊一は950グラムオーバーで、再計量でも900グラムオーバー。こちらも諦めざるを得ない状況でした。本人は試合後、「自分の不甲斐無さです!」と自分を責めたが、加工食品の添加物などは疎くて気にしていないという。
近年、よく聞く大幅な計量失格。昔は飲まず食わずの過酷ながらもジャケット着てしっかり動けば、ウェイトは何とか落ちたもので、リミットクリアーするのが殆どだったが、古き昭和時代の経験者は「今時の選手は我慢が足らない。我々の時代は1週間、水一滴も飲まずに落としたもんだよ!」と言う元・選手もいます。
現在は食物のカロリーなど計算された中で、水分と栄養を摂りながらウェイトを落とす時代でもありますが、普段からいろいろな添加物の食生活になっているのが我々現代人で、昔と比べより増えたホルモン剤による食肉加工品(特に外国産)を食べていれば人間の健康にも影響が出ない訳が無いと言われます。あくまで仮説ですが、そんな食生活で身に付いた筋肉や脂肪は、プロボクサー等の計量に向けた短期で落とす減量には思うように落ちない現象もあるのかもしれません。
新日本キックボクシング協会に新たなタイトルが誕生しました。現状の興行体制で賛否両論はある中、新王座の成り行きを見て行くしかないでしょう。
ジョニー・オリベイラは在日ブラジル人で、2004年デビューから20年となるベテランは46歳という。タイトル挑戦が決まったのは1月中頃で、最後のチャンスとなるタイトル戦へ向けた日々が始まりました。
過去の王座挑戦は2012年12月9日に日本ライト級で、石井達也(藤本)に挑戦は判定負け。2016年12月11日には勝次(藤本)に挑戦もノックアウトで敗れていました。まだまだ戦い続ける意欲あるジョニー・オリベイラ。練習量が豊富で体脂肪率も低いという。今後も注目してみましょう。
新日本キックボクシング協会次回興行は、5月12日に後楽園ホールに於いてTITANS NEOS.34が開催予定です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」