◆告発状受理、正式に被疑者に!

広島地検は3月11日までに広島県内の住民が平川理恵・教育長を官製談合防止法違反などの疑いで告発していた告発状を正式に受理しました。これにより、平川氏は広島地検の捜査対象と言う意味で正式に「被疑者」となります。

もちろん、被疑者・被告人は推定無罪です。しかしながら、すでに、平川氏は自らが依頼した外部の弁護士による調査により、京都のご自身のご親友のNPO法人「パンゲア」への業務委託などで、「官製談合防止法違反」「地方自治法違反」があった、と指摘されています。

一方、平川氏は2023年8月に始まった住民裁判で、官製談合による県費の無駄遣い及び、高額なタクシー代、そして高額な弁護士への費用を返還するよう訴えられています。

広島瀬戸内新聞2023年9月号外

法律的に言えば、平川氏は何の処分も受けていません。特別職公務員にはそもそも懲戒という仕組みがない。2023年2月に平川氏が給与の自主返納をしただけです。あとは、知事による罷免しかない。

こうした状況で、任期満了まで教育長を続けられる平川氏には呆れてしまいます。まさに鉄面皮を超えて劣化ウラン※面皮と言う状況です。

(※ウラン鉱石から核燃料を取り出した後に残った劣化ウランは非常に硬い性質を持っている。1991年の湾岸戦争において鉄より硬く、劣化ウランを使用した米軍の戦車が鉄でできていたイラク軍のT72戦車を撃破したことで有名。しかし、飛び散った劣化ウランの粉塵が、周辺の住民や米軍兵士の健康にも悪影響を与えているとされている。)

◆広島・日本の教育を前に進めたのではないか、と自負している?

こうした中、3月22日、平川氏は県民をさらに呆れさせました。平川氏は退任前最後の記者会見で「広島・日本の教育を前に進めたのではないか、と自負している」と言い切ったのです。一方で、告発状受理については「お答えできない」と逃げました

「この中で平川氏は、2期6年の任期中に取り組んだ公立高校の入試改革や不登校対策、それに探求的な学習の導入について「365日24時間、どうやったら広島の教育が良くなるかを考え続けてきた。広島県、あるいは日本の教育を前に進められたのではないかと自負している」と振り返りました。」

平川氏は一生懸命だったのは事実でしょう。しかし、教育を前に進めたというより、脱線させた、というのが事実ではないでしょうか。脱線したまま、あさっての方向に進んでいるというべきでしょう。

◆アメリカン・ポストモダンな腐敗と日本の古臭さの悪いハイブリッド

平川氏は、ただただ、アメリカン・ポストモダニズム的なものに飛びついて、それを取り入れることが進歩だと思い込んでいる。1990年代後半あたりの日本企業の経営者、新自由主義政治家によくあるパターンです。実は、それこそが時代遅れなのではないでしょうか?

そして、正直、平川氏が「私自身が任期中の評価をするのは難しいが、教育というのは今成果が出るものではなく、何十年後かに子どもたちが答えを出してくれるものだと思っている」というのも責任逃れにも見えてしまいます。

例えば、高校入試。2023年の入試から改革が行われました。今までは一般入試と推薦入試で行っていたのですが、推薦入試を廃止。そしてアメリカンな「自己表現」を導入したのです。これまで学力重視の一般入試と、部活などで実績がある生徒向けの推薦入試でバランスを取っていたのが崩れ、生徒や保護者、中学校の先生らにも不評です。そして、「自己表現」とはどうすればいいのか? どう採点すればいいのか? 生徒も保護者も、高校の先生も苦慮したのです。

そもそも、日本の文化とアメリカの文化は違う。その中で、いきなりアメリカンな自己表現とやらを導入するのは無理がある。その上で、アメリカの教育が良いかと言えばまったくそんなことはない。日本の政治の腐敗ぶりは大概ですが、アメリカのポストモダンの政治だって、バイデンVSトランプと言うどうしようもない不毛な大統領選挙ではないですか?アメリカの教育を受けたアメリカの有権者がそういう構図にしたのではないですか?

平川氏の行政手法である、お仲間優遇というのは実は、アメリカ直輸入なのです。平川氏ご親友のNPOや企業とか、赤木かん子さんら平川氏の「意識高い系」のお仲間で物事を決めていく。これはアメリカでは普通のことです。

かつての日本の疑獄事件みたいに賄賂をやり取りするよりも、高級官僚と企業の幹部がいわば回転ドアのように行き来して利益誘導する。従来の日本の天下りどころではありません。そうした中で、戦争国家と言われるアメリカができています。

平川的なことを進めて行けば、アメリカンな腐敗と日本・広島の権威主義をハイブリッドした無茶苦茶なことになりかねません。というか、もうなっています。国土が広く、資源が豊富なアメリカだからまだ政治が腐っていても持ちこたえていますが、日本はそうはいきません。

◆新教育長は「フロント」に徹せよ!

さて、新年度からの教育長には、文部科学省課長の篠田智志さんが県議会に人事案が提案され、2月26日に議会で全会一を以って可決されました。篠田新教育長には以下のことを申し上げたい。

戦前の臣民を育てる教育を止め、戦後は、日本国憲法の下で市民が市民を教育する制度に変わりました。すなわち、アメリカに倣った教育委員会制度が導入されました。当初は、教育委員会は公選制がとられたものの、イデオロギー対立などで混乱したということもあり、任命制に変わりました。その後、安倍政権の下では、事務方のトップである教育長が教育委員会の委員長も兼ねること制度改正。教育長の権限は強大になりました。しかし、あるべき公教育の基本は変わりません。

プロ野球に例えれば市民、県民がオーナーで、生徒が選手、先生がコーチ、校長が監督、そして教育委員会は球団フロントのようなものです。教育長の権限が以前より強大化したとはいえ、所詮は球団社長の立ち位置であり、オーナーでもなければ主役でもない。選手の個々のプレイに口を出したり、監督の采配に口を出したりするのがおかしいのです。カープの新井監督のお名前は広島県民ならだれもが存じています。しかし、球団社長のお名前はすぐには出てきません。それでいいのです。フロント=教育長は現場がやりやすいように支援する黒子で良いのです。

例えば、県内では県教委管轄だけで1000人以上、非正規の先生がおられます。非正規の先生も大変だし、正規の先生も疲弊する。非正規を正規の先生に変えていくことでそういう状況を変えていく。平川教育長は「予算がない」と言っておられたのですが、何十億もかけてグローバルエリート中高「叡智学園」をつくったのだから、お金がないわけがない。使い方の問題です。

◆「万辞に値する」湯崎英彦知事の「任命責任」

さて、安倍政権の制度「改革」自体に問題があるが、それを「悪用」した平川「被疑者」教育長、何より任命した湯崎知事には大きな責任があります。とりわけ、湯崎知事は、2月に平川教育長の続投がないことを決めた際、「法令違反は改革の副作用」と言って、平川教育長を庇ったのです。

そもそも、県は平川教育長にお金を無駄遣いされた「被害者」のはずです。平川教育長を警察・検察に告発したり、平川教育長に無駄遣いしたお金の返金を命じたりするのは知事の仕事ではないでしょうか?

住民が平川「被疑者」教育長を刑事告発したり、返金を求める裁判を起こしたりしなければいけないのが本来おかしいのです。知事が動かないから、住民が自腹を切って動かないといけなくなる。それどころか、県は、平川「被疑者」教育長を庇う立場で住民訴訟に参加しているわけです。

湯崎英彦知事は、ある意味、類は友を呼ぶということで、平川氏を、2018年度に神奈川県の民間校長から一本釣りしたのでしょう。いずれにせよ、湯崎知事の任命責任は、その後に平川氏を罷免するなどしなかったことも含め、「万辞に値する」と言わざるを得ません。

もちろん、今まで、湯崎県政を十分チェックできなかった県議会、そして湯崎知事と平川教育長を持ち上げてきたマスコミの責任も重いと言わざるを得ません。
筆者も平川教育長の逃げ切りを許さない。そして腐敗しきった湯崎知事から広島を取り戻す。その動きを強めていく決意です。

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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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