広島市議会2月定例会は26日、2024年度予算案などを可決し、閉会しました。
◆サンフレ本拠地移転と齟齬をきたすアストラム延伸
このうち、2024年度予算案のアストラムライン延伸については反対討論が相次ぎました。
この計画は、アストラムラインを安佐南区の広域公園前から、佐伯区の五月が丘団地、そしてトンネルで山をくぐって西区の西広島駅へ、とつなぐものです。
広島市が過半数を出資する第三セクター「広島高速交通」のアストラムラインは広域公園を会場とする1994年の広島アジア大会を前に、同年8月20日に本通りから中区の城北駅、東区の不動院前駅、安佐南区の大町駅などを経由して広域公園前までの区間が開通しました。その後、1999年に環状化する計画も出ました。
しかし、これらは採算性の問題から、秋葉忠利前市長のもと、2007年にはアストラムライン延伸ではなく、広電やバスなどの既存交通機関の活用を優先させる方針に転じました。2011年に松井一實市長に政権交代した後、2014年に、都心部での延伸は事業廃止する一方、2015年には西広島駅までの延伸のみを事業化することが決定。当初は一日15000人の利用を見込んでいました。しかし、現在の見込みは9100人です。
安佐南区の日本共産党の中村孝江議員や、中区の無所属の門田佳子議員(保守系無所属議員の後継で1年前初当選)からは以下のような討論が出されました。
第一に、輸送人員の見込みは、市が昔計画していた15000人から9100人まで減っていること。
第二に、せっかく延伸しても、自転車置き場や車による送迎コーナーがないと利用しにくいのですが、それが市の案には考慮されていない。
第三に、現実問題、西風新都方面の団地から都心部にはバスの方が乗り換えもなく、便利という現実もある。机上ではアストラムラインが2分所要時間は短いが、そうなれば乗り換えなしの方が良いに決まっている。
予算案そのものは結果として賛成多数で可決となりましたが、上記の反対討論はきちんと市長も受け止めるべきです。
広島市内でも高齢社会化の中で、公共交通の確保は大事です。国や県の支援も必要です。他方で、その方法、また、利用しやすい公共交通の在り方。これをきちんと議論しないまま、そして、国や県の十分な支援が見込めない中で突き進んだ場合には(自治体は国と違い、お金を刷ることができませんから)大変なことになります。
広島都市圏全体の交通の在り方、ひいては広島県内全体の交通や地域づくりの在り方をきちんと市民的、県民的にもっと議論すべきではないのか?場合によっては住民投票も活用すべきではないのか?そのように感じました。
輸送人員の減少が見込まれる。これは当たり前の話です。サンフレッチェ広島の本拠地であるサッカースタジアムが安佐南区から中区のエディオンピースウイング広島(写真)に移ったことも大きな影響があるでしょう。サッカースタジアムについてはいろいろ議論がありました。
しかし、現在地に移転した以上は以下のことは想定できます。
1.アストラムラインの利用者が激減する。
2.一方、広島駅から歩いて行けるサッカースタジアムということで、サンフレッチェ広島の対戦相手のチームのサポーターも多く広島駅経由で来られる。
1.については、アストラムラインの見直しを市に迫る。
2.の要素は広島駅周辺の混雑激化を通じて、県が広島駅北口に計画している新巨大病院(湯崎病院)に見直しを迫る。
ことになるでしょう。
今一度、サッカースタジアムが移転した後の状態を前提に、アストラムラインの延伸の是非、県病院含む病院のエキキタへの統合の是非、これらをきちんと再論議する必要があるのではないでしょうか?
繰り返しますが、サッカースタジアムの移転で状況は変わった。人の流れも変わった。前と同じことをしていたらあちこちでほころびが出る。そういうことも含めて、市民投票、県民投票も視野に入れた議論は必要ではないでしょうか?
◆中央図書館の移転費用も青天井
松井市長が進める、中区の中央公園にある中央図書館の駅前のエールエールA館への移転費用も青天井です。ついに、96億円という見込みだった費用が、131億円に膨れ上がってしまいました。これに加えて、浅野文庫や広島文学を展示する施設を旧市長公舎の跡地に建設予定で、37億円かかります。ついに、現在地で建て替えた場合の予想経費の120億円を上回ってしまいました。
これでも、本日の議会最終日で賛成多数で2024年度予算は可決されてしまいました。しかし、これももう一度議論し、場合によっては住民投票にかけることも大事ではないでしょうか?
◎広島市の中央図書館の移転費膨張 当初計画から35億円増の131億円(中国新聞デジタル)Yahooニュース
とにかく、住民の声を無視して進めた計画のほころびが出ています。今必要なのは市民的、県民的な「広島をどうするか」という議論ではないでしょうか?
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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