◆「2024能登半島地震」発生
2024年1月1日16時10分、北緯37.5度、東経137.2度、深さ16キロを震源とするマグニチュード(以下M)7.6の地震が発生した。1889年以来の記録では石川県で最大だった。
地震と共に津波も発生し、最大波高は輪島港で1.2メートルと記録された。しかし地震と同時に数秒で隆起し4メートルを超える高さになったことから、験潮場(けんちょうじょう)の機能は停止してしまった。
東大地震研などの現地調査では、志賀町で4メートルを超える津波の遡上が確認されている。記録上は対岸である新潟県上越市で5.8メートルを観測している。
津波は北海道から長崎県対馬まで日本海全域で確認された。
◆志賀原発の現状
地震は石川県志賀町にある北陸電力志賀原発に重大な影響を与えた。震源から65キロほど離れている志賀原発では、震度5強程度の揺れに遭遇したとされる。
「1号機原子炉建屋地下2階震度5強、3成分合成399.3ガル、水平方向336.4ガル、上下方向329.9ガル」としている。
現在の基準地震動は水平600ガル、上下405ガル。今回の地震ではそれを下回っていたとされる。しかし1部の周波数域では超過していたことが、その後の調査で明らかになった。
1号機で最大957ガルを観測し、基準地震動を元にした想定値を39ガル上回っていた。2号機も25ガル上回る871ガルだった。今後基準地震動を1000ガルに引き上げる予定とされるが、それでも十分とは思えない。
志賀原発1号機は54万キロワットのBWR(沸騰水型炉)、2号機は135.8万キロワットのABWR(改良型沸騰水型軽水炉)で、どちらも運転停止中。炉心に燃料はなく、危険は使用済燃料を貯蔵しているプールだ。現在は冷却が続いており、ポンプも稼働しているが地震の際一時停止している。
原発には外部電源が3系統5回線あり、そのうち2号機に接続されている50万ボルト1系統2回線は停止した。原因は変圧器の絶縁に使う油の配管が損傷したための油漏れ。1号機側の起動変圧器も油漏れで遮断した。火災が起きていないのに噴霧消火設備の起動及び放圧板が動作したことも確認されており、その原因は油圧の変化による誤作動ではないかと推定されている。
変圧器の油漏れは、1号機側で3600リットル、2号機側で3500リットルと発表されたが、5日になって2号機では19800リットル漏れていたと上方修正された。変圧器の復旧見通しは立っていない。したがってこれら回線も回復できない。
2号機の電源は27.5万ボルトの1回線で受電している。1号機は6.6万ボルトの1系統1回線で受電している。
6台の非常用ディーゼル発電機は1台が点検停止中。後日起動試験を行ったところさらにもう1台が停止した。
別に高圧電源車が1台、その他の電源車も7台待機しているという。
プール水は、地震発生時のスロッシングにより1部が漏えいしたが水位は保たれている。その量と放射能は、1号機が95リットルで合計17100ベクレル、2号機で約326リットルで含まれる放射能量は約4600ベクレル。北陸電力によれば外部への漏えいは確認されておらず、放射能の影響はないという。
その他の影響として、海岸に設置された「物揚場(ものあげば)」の埋立部の舗装コンクリートで沈下が発生し段差ができていた。
1号機放水槽及び1号機補機冷却排水連絡槽防潮壁の基礎の沈下が発生していた。これは津波対策として設置された鋼製防潮壁の基礎部分で地震の影響により数センチメートル程度沈下していた。
1号機高圧電源車使用箇所付近の道路に数センチメートル程度の段差が発生していた。(つづく)
本稿は『季節』2024年春号掲載(2024年3月11日発売号)掲載の「「大地動乱」と原発の危険な関係」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。
▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。
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