今興行タイトル「フェザー級の至宝が揃い踏み、甦る老舗の底力」に際し、前回に続いてのメインイベンターは、無くてはならない存在となった瀬戸口勝也。ベテランのガン・エスジムにはテクニックで敗れるも強打は優った。

ジョニー・オリベイラの王座戴冠後の初戦はムエタイテクニシャンに惜敗。

NJKFからやって来たTAKAYUKIと庄司理玖斗ともにインパクトあるTKO勝利。

◎TITANS NEOS.34 / 5月12日(日)後楽園ホール17:15~20:03 
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

(戦績は興行部データより、この日の結果を加えています。第4試合以降はプロ試合。)

◆第12試合 58.0kg契約3回戦

日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/ 57.85kg)43戦31勝(14KO)9敗3分
        VS
ガン・エスジム(元・ラジャダムナン系フェザー級5位/タイ/ 58.0kg)107戦78勝26敗3分
勝者:ガン・エスジム / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:勝本29-30. 宮沢28-29. 中山28-29

ガンエスジムは2022年9月、馬渡亮太にはヒジ打ち相打ちでKO負けしているが、2022年7月、ジャパンキック協会の睦雅に判定勝利、2023年6月、NJKFスーパーフェザー級の龍旺に判定勝利、2023年8月、NKBライト級の棚橋賢二郎にTKO勝利しているベテランムエタイ戦士。

初回早々は両者ともローキックで牽制、徐々にミドル、前蹴りなど高めの蹴りからパンチの距離に移る。ガンエスジムは重いパンチで牽制。ジャブを幾らか瀬戸口にヒット。瀬戸口勝也も得意の強打でボディーから顔面へ打ち返す。

蹴りはガン・エスジムが優る。ヒジ打ちで斬られた瀬戸口勝也は苦戦

第2ラウンド、瀬戸口はパンチ、ガンエスジムは重いミドルキック、接近した際にガンエスジムは左ヒジ打ちで瀬戸口の眉間をカットし、そのまま組み合ってヒザ蹴りで攻勢を強める。一旦ドクターチェックに移るもすぐ再開。ガンエスジムは余裕が出てきた流れ。

パンチは瀬戸口勝也が優る。しかし凌ぐのが上手いガン・エスジム

第3ラウンド、瀬戸口のパンチを蹴りと首相撲へ導いて凌ぐガンエスジム。瀬戸口はガンエスジムのテクニックに躱されるまま終了。

駆引き勝負はガンエスジムが優った勝利、無念の瀬戸口勝也

◆第11試合 60.0㎏契約3回戦

日本スーパーフェザー級チャンピオン.ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 59.8kg)
62戦16勝(1KO)28敗18分
       VS
ペットボーライ・チュワタナ(タイ/ 59.6kg)129戦86勝38敗5分
勝者:ペットボーライ / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名28-30. 宮沢28-30. 中山29-30

チャンピオンに成ればやって来るムエタイ路線。3月に王座に就いたジョニー・オリベイラも然り。今回の対戦相手はペットボーライ。タイではペッチンチャイというリングネームらしい。文字をカタカナ読みすれば“ペットチンチャイ”。パンチとローキックが強いテクニシャンという情報だった。

ペットボーライのローキック、頑丈なジョニー・オリベイラは崩れない

パワーで優るジョニー・オリベイラのパンチの攻勢

ペットボーライの体幹良いミドルキック。パンチで行きそうなジョニーは重心が前足に掛かるスタイル。テクニックでは敵わずもパンチのパワーで圧し優りたいジョニーと、ムエタイテクニック発揮のペットボーライ。危機感あったジョニーの劣勢感は無く、ペットボーライのテクニックを凌ぎ切った。

ジョニーは「ペットボーライは上手かったです。」と一言。

セコンド陣営の中川卓氏は「ペットボーライはテクニック有りましたけど、大差を付けられることは無いと思っていて、ジョニーはリーチあるのでもっとジャブも出せればいいけど、練習では出るのに試合では力んでしまって出さないから勿体無かったです。離れ際にハイキックも出せればよかったですね。」と語った。

体幹、テクニック優って勝利のペットボーライ、無念のジョニー・オリベイラ

◆第10試合 フェザー級3回戦

NJKFフェザー級2位.TAKAYUKI(金子貴幸/K crony/ 57.05kg)
29戦16勝(1KO)12敗1分
        VS
KAZUNORI(元・DEEP KICK 53㎏級3位/REAL/ 56.9kg)40戦14勝26敗
勝者:TAKAYUKI / TKO 3ラウンド46秒
主審:勝本剛司

序盤は互角も次第に的確に隙を見て空いたところを打ち込む金子貴幸のリズムが上回って行き、ローキックでバランス崩させたり、パンチ蹴りでも攻勢を強め、ノックダウンへ繋いだ。KAZUNORIはノックダウンを喫した後、そのままドクターチェックに移り、ヒジ打ちによるカットと見られたが、そのままドクターの勧告を受け入れたレフェリーストップとなった。

TAKAYUKIが組み合ってのヒザ蹴り、徐々にベテランの技で圧倒した

◆第9試合 56.0kg契約3回戦

NJKFスーパーバンタム級6位.庄司理玖斗(拳之会/ 55.9kg)12戦8勝(5KO)3敗1分
        VS
玉城慧(真樹ジム沖縄/ 56.35→56.3→55.95kg)9戦5勝4敗
勝者:庄司理玖斗 / TKO 3ラウンド44秒 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一

第1ラウンドはアグレッシブに蹴りがヒットしていた玉城慧だが、徐々に庄司が調子を上げ、ヒジとパンチで逆転していくと玉城慧は後退気味。第3ラウンドにはラッシュをかけた庄司がパンチからヒジ打ちを玉城の頭部へ落としてノックダウンを奪った。蹲った玉城はそのまま横たわり、テンカウント間近ではあったが、カウント中のレフェリーストップで庄司理玖斗がTKO勝利した。

庄司理玖斗が多彩な攻めで成長を見せた巻き返しの勝利

◆第8試合 70.0kg契約2回戦 義人欠場につき磯村真言に変更

ヴェジー・チョル(伊原/ 68.9kg)1戦1分
    VS
磯村真言(グラップリングSB名古屋/ 68.95kg)6戦5敗1分
引分け 0-1 (19-19. 19-20. 19-19)

ヴェジーは蹴りが速く、重くヒットするインパクトを与えた初回。磯村真言も対抗し、打ち合い蹴り合って巻き返しに掛かるとヴェジーのパワーがやや失速、磯村が巻き返した第2ラウンドによって、取って取られた採点の0-1ではあるが引分けとなった。

中国出身のヴェジー・チョルとシュートボクシングから出場の磯村真言の意地の攻防

◆第7試合 63.5kg契約2回戦

宇野澤京佑(伊原/ 63.3kg)2戦1勝1敗
    VS
今野龍太(笹羅/ 62.5kg)5戦1勝3敗1分
勝者:宇野澤京佑 / 判定3-0 (20-17. 20-18. 20-17)

パンチの交錯はやや打ち優った宇野澤京佑が判定勝利。

宇野澤京佑がパンチの攻防を優って判定勝利を導いた

◆第6試合 OVER FORTYFIGHT 60.0㎏契約2回戦(2分制)

長友亮二(KING/ 59.5kg)3戦2勝1敗
      VS
伊興田翔(Team lmmortaL/ 59.6kg)3戦3勝(1KO)
勝者:伊興田翔 / TKO 2ラウンド52秒 /

伊興田翔がパンチでラッシュ掛け、長友亮二はスタンディングダウンを奪われるが、更に打たれながらもカウンターの右ストレート数発繰り出し、伊興田翔をグラつかせるも一発のみで、伊興田翔の勢いが優り左ストレートでノックダウンを喫した長友亮二。立ち上がるもしっかりファイティングポーズをとれず、カウント9でレフェリーストップとなった。

◆第5試合 女子(ミネルヴァ)44.0kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ピン級11位.UveR∞miyU(T-KIX/ 43.85kg)8戦3勝4敗1分
       VS
友菜(Team lmmortaL/ 44.0kg)6戦1勝3敗2分
引分け 0-1 (29-29. 29-29. 29-30)

◆第4試合 女子(ミネルヴァ)55.0kg契約3回戦(2分制)

三宅美優(拳之会/ 54.2kg)vsMIO LaReyna(TEAM REY DE REYES/ 54.05kg)
松田沙和奈欠場、三宅美優に変更
勝者:三宅美優 / KO 1ラウンド1分8秒 / 2ノックダウン
主審:中山宏美

◆第3試合 アマチュア男女混合 37.0㎏契約2回戦(2分制)

西田永愛(伊原越谷/ 36.8kg)vs永井りい(VALLEY/ 36.3kg)
勝者:西田永愛 / 判定2-0 (19-19. 20-19. 20-19)

◆第2試合 アマチュア 43.0㎏契約2回戦(2分制)

西田蓮斗(伊原越谷/ 42.7kg)vs渡部翔太(KING/ 43.0kg)
勝者:西田蓮斗 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-18)

◆第1試合 アマチュア 34.0㎏契約2回戦(2分制)

武田竜之介(伊原越谷/ 33.45kg)vsヨムトュノーイ・ロークパークデーン(タイ/ 33.8kg)
勝者:武田竜之介 / TKO 1ラウンド40秒 / カウント中のレフェリーストップ

《取材戦記》

主力選手が少ない中、どうやって甦っていくかが注目され続ける新日本キックボクシング協会。閑散とした会場の静けさは、キックボクシングが最も低迷していた昭和57年頃の会場のようだった。各選手の応援団の歓声が幾らか騒めく役割を果たしたが、試合によっては歓声よりセコンド陣営の声が響く会場内。

2興行連続でメインイベンターとなった瀬戸口勝也。前回、木下竜輔との王座決定戦を制し、チャンピオンロードを歩むことになったジョニー・オリベイラの二人は今後もメインイベンタークラスとして起用されそうな流れである。

昨年10月、脳腫瘍の大病から復活宣言した江幡塁は、未だ完全復活の目途は立っていないが、仮に復活が叶うならば、新日本キックボクシング協会の「甦る老舗の底力」がより期待出来る存在である。コーチとして指導に当たる現在だが、新たな復活の展開も見えて来そうな江幡塁である(私の予想はすぐ外れるので御容赦ください)。

次回、新日本キックボクシング協会興行は7月7日(日)後楽園ホールに於いてMAGNUM.60が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号