筆者の元職場・広島県庁で若手・中堅職員の退職がここ数年、激増しています。

筆者は2011年1月末、35歳の時に広島県議選2011に立候補のため、広島県庁を退職しました。当時は定年前退職が大変珍しいことでした。しかし、今は珍しいことでもなくなっているそうです。

 

広島県庁東館と筆者

6月14日の中国新聞によると、

「広島県では県警や県教委の職員、医療職などを除く一般行政職員の定年前退職は20年度まで40~60人台で推移していた。21年度に89人に増え、22年度には115人と初めて100人を超えた。23年度は4人増えて119人となった。119人の年代別は50代が最多の56人。幹部職員を対象にした毎年の「退職勧奨」による退職者も含まれる。30代が24人、20代以下が22人、40代が17人と続いた。急増前の20年度と比べると、20代以下が5.5倍、30代は3.0倍と増加が際立つ。」

とのことです。

◆民間に比べて「暇で高給」のイメージ崩壊?

ひとつは、当時とは違って、民間の方が給料は高いということがあります。また、ここ十数年、公務員数は減る一方で、大水害やコロナなどの影響で仕事は激増しています。そうした中で、「暇で安定している」という、大昔のイメージは完全に崩れてしまいました。

◆知事独裁で「やりがい」低下?

もうひとつは、「県民のために働きたい」という志が強いタイプの方々にとっての公務員の仕事のやりがいの低下はあるのではないでしょうか? こうしたタイプの方々にとっては、自分が立案した政策なり執行する行政行為が、県民のためになってほしいという思いが強めです。

ところが、今の広島県庁は、外部から拝見していると、湯崎英彦知事とその取り巻きによる独裁です。県民の声も聴かないけれども、おそらく内部の心ある職員の声も活きない。そういう状況なのではないでしょうか?

◆最初は県民・職員の声に耳を傾けていたはずが……

湯崎英彦知事は、2009年の初当選当初は若手職員とのランチミーティングをしたり、「知事ではなく湯崎さんと呼んでください」と風通しの良さを強調したりされていました。筆者も不覚ながら湯崎さんに心酔していた時期があります。

また、筆者の生まれ故郷・福山市の鞆の浦の埋め立て架橋問題では、賛成・反対両派の住民による対話集会を開催。鞆の浦を通過する交通を捌くために、埋め立て架橋案ではなく、山側トンネル案を落としどころとして実現しました。このころ、すなわち一期目の湯崎さんは、職員や県民の声をよく聴いておられました。

しかし、いまはどうでしょうか? 湯崎さんは2020年、三原市と竹原市の水源地のど真ん中に本郷産廃処分場を許可しました。当時の三原市や竹原市民の圧倒的な反対を押し切ってです。2022年に稼働し始めた同処分場は住民側の懸念通り、2023年夏には汚染水の流出が発覚しました。広島県は警告をJAB協同組合に出しましたが、一回、検査で基準値を汚染が下回ったというだけで、事実上の安全宣言。現在も、汚染されているのが明らかな水が流出しているにもかかわらず「放置プレイ」状態です。

一方、住民が産廃処分場設置許可の取り消しを求めた裁判では、2023年7月、広島地裁が取り消しを湯崎知事に命じる判決を出しました。しかし、湯崎知事はこれを控訴。さらに控訴審では、JAB協同組合に訴訟参加させています。県民の安全を守るべき県が、汚染水を排出する事業者と一体となって県民に敵対しています。

三原本郷産廃処分場問題を取り上げる広島瀬戸内新聞

また、2023年度限りで退任した平川理恵・前教育長は、官製談合などで無駄遣いした1億円以上の県費を返還するよう求める住民裁判の被告となっています。しかし、湯崎英彦知事は平川前教育長について「法令違反は改革の副作用だった」と庇っておられます。一方で、盗撮をした現場の先生方はもちろん、懲戒免職になっています。もちろん、盗撮は絶対にダメです。盗撮をした先生が懲戒免職処分になるのは当然です。しかし、一億円以上を無駄遣いした教育長が罷免もされず、退職金も満額受給する権利がある。これでは不公平と思われても仕方がありません。

また、湯崎知事は、広島市南区宇品にある広島県立広島病院=県病院を廃止し、JR広島病院や中電病院と統合した巨大病院を独立行政法人で広島駅北口に建設しようとしています。行政部局ではありませんが、労働組合のアンケートでは7割以上の人が「巨大病院に移行するかどうかわからない」と答えているそうです。現に「このままでは子供を養えない」と他県の病院への転職を決めている医療従事者もおられます。

こうした湯崎知事の県民の声を聴かずに「臭いものにふた」をする古臭いやり方や強引な手法に辟易している人も心ある職員に多くおられるのではないでしょうか?

◆自浄作用働く兵庫県と働かぬ広島県

議会主流派も、そんな知事に一定の不満はあるのですが、対抗馬を立てることはしませんでした。知事の議案を結局は共産党と保守の一部以外は賛成して可決してしまっています。

平川前教育長の問題も、あるいは、産廃の汚染水を放置している問題でも、それこそ、兵庫県なら百条委員会ものでしょう。

兵庫県の斉藤元彦知事は酷いけれども、兵庫県議会と県民による自浄能力は働いています。今年は6月14日時点で広島カープが阪神タイガースを上回る成績を残しています。広島は「野球では兵庫に勝っている」のですが、政治では完全に負けている。情けない思いです。

◆辞めて行った職員の声も大事に! ご意見をお聞かせください!

本当は、定年前に辞めて行った職員に、「県庁生活で何が不満だったのか?」も含めて、匿名でアンケートでもいいからすべきではないのでしょうか?答えてくださった方には、粗品を進呈し、今後のご活躍を祈念するのです。まずは、そこからではないでしょうか?

そういえば、江戸時代は「県庁を辞める=脱藩」は犯罪でした。ディック・ミネ「旅姿三人男」の「何で大政、国を売る」なんて歌詞を思い出す。国を売る=脱藩するということだ。しかし、今はそんなことはありません。

辞めて行った職員のご意見こそ、知事や議員は耳を傾けるべきです。

ぜひ、広島県庁を若くしてご退職された後輩の皆様。ご意見、ご感想をさとうしゅういち・広島瀬戸内新聞までお寄せください。(匿名可)

hiroseto2004@yahoo.co.jp 090-3171-4437

原則毎週金曜日開催の「オンラインおしゃべり会・さとうしゅういちと広島の政治にガツンと物申す」までお寄せください。(匿名・顔出しNGでも大丈夫です。)
原則毎週金曜 21時15分~
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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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